チスイコウモリモドキ(Vampyrum spectrum)—新世界最大の肉食コウモリの特徴と生態
チスイコウモリモドキ(Vampyrum spectrum)—南米に棲む新世界最大の肉食コウモリの外見、狩猟法、繁殖、生態と保全課題を写真付きで詳解。
Vampyrum属は単型属で、現生種としてはVampyrum spectrum(英名:Spectral bat、和名では「チスイコウモリモドキ」や「スペクトル吸血コウモリ」などと呼ばれる)が知られています。紛らわしい点として、旧世界に分布する大型肉食コウモリの仲間であるMegadermatidae(メガダーマ科)の「偽吸血鬼」とは系統的に無関係です(旧世界の偽吸血鬼とは別系統)。本種は主に熱帯雨林の低地域に分布し、南アメリカ大陸およびカリブ海のトリニダード・トバゴなどで記録されています(分布の詳細は地域差があります)。
外見・大きさ
チスイコウモリモドキは新世界(美洲)における最大級の肉食性コウモリです。翼幅は一般に約80cm前後(大きな個体では1mを超えることもあります)。体長は約125–135mm(約12.5–13.5cm)、体重はおおむね145–190g程度と報告されています。上毛は茶色〜錆色がかったオレンジ色で比較的短く、耳は大きく丸みを帯びています。前肢・後肢は頑丈で、長く湾曲した鉤爪を備え、吻部(口輪)はやや細長く、咬合力のある歯を持ちます。鼻葉(ノーズリーフ)は独特の形状をしており、外見上の特徴の一つです。
生態と行動
本種は夜行性で、主に夜間に狩りを行います。狩りのスタイルは主に「待ち伏せ型(perch-hunting)」と「低空飛行による索餌」を組み合わせたもので、林縁や樹冠の下をゆっくりと飛び回り、枝の上から獲物に飛びかかる、あるいは地上近くへ急降下して捕らえることがあります。音響(エコーロケーション)や視覚、聴覚を組み合わせて獲物を探すと考えられています。
食性は広範で、主に小型〜中型の脊椎動物を捕食します。具体的には、両生類(カエルなど)、爬虫類(トカゲや小型のヘビ)、小鳥、および小型哺乳類(齧歯類や小型の有袋類、他のコウモリ類を含む)などを捕食します。昆虫も摂食し、大型のコオロギやセミなどが含まれます。さらに、機会があれば少量の果実を食べることも報告されており、完全な肉食ではなく雑食的な傾向も持っています。
繁殖と社会性
繁殖様式は一産一仔が一般的で、出生は年に1回程度とされます。雌は子育てに熱心で、雄も子のそばにいることが多く、家族単位(つがい+子)で行動することが観察されています。幼獣は一定期間母親に依存し、その間は巣穴や樹洞の中で保護されます。両親による育児が行われることや、つがいでの協力が見られる点は、本種の特徴の一つです。
生息地と営巣
主に低地の一次林や二次林、森林の縁部、川沿いの森林などを利用します。日中は大きな樹洞や倒木、時には洞窟や建造物の隙間などに営巣(ロースト)し、単独もしくはつがい・小家族で休みます。広い行動圏と森林の連続性を必要とするため、森林破壊や断片化の影響を受けやすい種です。
保全状況と脅威
局所的には個体数が少なく、森林伐採や生息地の断片化、餌資源の減少、人為的な干渉(迫害やローストの破壊)などが脅威となっています。広域的な保全状況は地域によって異なりますが、成熟した林相と大きな樹洞を保持する生息地の保護が本種の保全に重要です。森林保全や生息地モニタリング、地域での啓発活動が保全対策として有効です。
観察時の注意点
- 夜間に低空で飛ぶ大型コウモリとして観察されることがあるが、刺激を与えないこと。
- 営巣する樹洞を不用意に破壊しないこと。ローストが失われると個体群回復が難しい。
- 地域によっては人里近くでも見られることがあるため、人と野生生物の共存を図る対策が求められる。
まとめると、Vampyrum spectrumは新世界で最大級の肉食性コウモリで、独特の外見と待ち伏せ的な狩りの習性、家族単位での育児行動などが特徴です。生息地である広葉樹林の保全が本種の生存にとって重要です。
質問と回答
Q: スペクトルコウモリの学名は何ですか?
A: スペクトルコウモリの学名はVampyrum spectrumです。
Q: この種の別名にはどのようなものがありますか?
A: 「Linnaeus's False vampire bat」、「Spectral Vampire bat」という別称があります。
Q: このコウモリはどこで見られますか?
A: 南米、トリニダード・トバゴに生息しています。
Q: このコウモリの大きさはどのくらいですか?
A: この種のコウモリは、翼を広げると約80cm、体長は125-35mm、体重は145-190gです。翼を広げると1mを超える動物もいます。
Q: 毛皮はどのようなものですか?
A:コウモリの上部の毛は、通常、茶色か赤橙色で、かなり短いです。耳は非常に長く丸みを帯びていて、マズルは細長く、強い歯を持っています。ノシバは写真のような形をしています。
Q:何を狩るのですか?
A:両生類、爬虫類、小鳥、哺乳類、コウモリなどの脊椎動物、大きなコオロギやセミなどの昆虫、そして少量の果実などを狩ります。
Q:狩りはどのようにするのですか?
A: 狩りをするときは、枝の上から獲物に飛びかかったり、フクロウのように林縁を往復して飛び、突然草むらに落ちてきたりすることが多く、非常にステルス性が高い。
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