テールストライク(尾部打撃)とは?原因・影響・修理・対策をわかりやすく解説
テールストライクの原因・影響・修理・対策を図解でやさしく解説。予防策や修理事例、航空安全への影響まで短時間で理解できます。
テールストライク(尾部打撃)とは、飛行機の尾部(尾翼や胴体後部)が地面や滑走路に接触・衝撃を受ける事象です。これは主に離陸時や着陸時に起こり、機首上げ(ローテーション)やフレア操作が過度になったり、不適切な操縦で発生します。たとえば離陸時にパイロットが機首を早く上げすぎて機体後部が滑走路に当たる場合や、着陸時にフレアで機首を過度に引き上げた場合などです。また、滑走路の傾斜や強い突風、重量配分の誤りなども原因になります(滑走路自体に接触する場合は滑走路に当たる、という表現になります)。
主な原因
- 過度な機首上げ(過回転):離陸や着陸の際に機首角を適正以上に引き上げる。
- 不安定な着陸やポロピング(ポーポイズ):バウンドして不適切に姿勢が変化する。
- 重量・重心の偏り:後方重心が強いと尾部が下がりやすい。
- 滑走路の傾斜や障害物:傾斜のある滑走路や隆起により尾部が接触する。
- 気象や風の影響:突風や横風で姿勢制御が乱れる。
- 機体整備や構造的問題:既往のダメージや取付不良が尾部の余裕を減らすことがある。
影響とリスク
テールストライクは直ちに乗員乗客の致命的被害を引き起こすことは稀ですが、次のような重大な影響があります。
- 構造損傷:外板(スキン)、縦通材(ロングロン)、フレームなどに亀裂や変形が生じる。
- 長期的な金属疲労リスク:表面傷や亀裂を適切に修理しないと疲労亀裂が進展し、将来的に重大事故につながる恐れがある。
- 運航停止と修理費用:機体は点検・修理のために運航停止となり、修理費用と営業損失が発生する。損傷の程度によっては数十万〜数千万円以上の費用、さらには大規模な構造修理が必要になる。
- 規制・報告義務:多くの国で重大な構造損傷は当局への報告や追加検査・補修が義務付けられる。
検査と修理の流れ
- 初期評価(現場点検):着陸後または離陸直後に外観点検を行い、目視で損傷の有無を確認。小さな擦り傷でも詳細検査の対象になる。
- 非破壊検査(NDT):超音波検査、渦電流検査、染色浸透検査などで隠れた亀裂や内部損傷を検出する。
- 修理計画:機種ごとにメーカーの構造修理マニュアル(SRM)や航法当局の指示に従い、修理方法を決定。必要なら認可された修理機関と設計承認を得る。
- 補強・交換作業:スキンのパッチ(ダブリング)やロングロン・フレームの交換、必要に応じて胴体後部の再整形を行う。小さな打痕は研磨とシール、塗装で処理する場合もある。
- 検査と復航認可:修理完了後に再度NDTなどで確認し、適切な書類を揃えて航空当局または運航者の許可を得て復航する。
予防と対策
- 適正な操縦技量の維持:パイロットは離陸・着陸の決められた回転率や機首上げ角を守る。シミュレータでの練習やSOP(標準操縦手順)の徹底が重要。
- 正確な重量・重心計算:搭載物や乗員配置を適切に管理し、後方重心にならないようにする。
- 安定したアプローチ基準:着陸は「安定化されたアプローチ」基準を満たさない場合はゴーアラウンドを選択する。
- 機体保護装置の活用:多くの機種は小さな接触を吸収するテールスキッド(スキッドパッド)やバンパーを装備している。これらの点検・交換を適時行う。
- 気象と滑走路情報の活用:突風や滑走路の状態を把握し、危険な条件では操作を見合わせる。
- 教育・運航管理:事例に基づく安全教育、ヒューマンファクター対策、運航管理によるリスク低減。
運航後の対応と報告
テールストライクが発生した場合、運航者は直ちに機体を係留し、所定の点検を行う必要があります。多くの国では機体構造への影響が疑われる場合、航空当局への報告が義務付けられており、原因究明と再発防止策が求められます。さらに、メーカーや整備組織は得られた知見を共有し、マニュアルや訓練へ反映させます。
まとめ(ポイント)
- テールストライクは離陸・着陸時の過度な機首上げや不安定な姿勢が主な原因。
- 直ちに致命的事故になることは稀だが、構造損傷や長期的な金属疲労リスク、運航停止と高額な修理費用を招く可能性がある。
- 発生後は現場点検→非破壊検査→メーカー指示に基づく修理→再検査の順で対応し、適切な承認を得て復航する必要がある。
- 防止には操縦技術、重量管理、安定化アプローチ、定期点検・保護装置の適正運用が有効。
テールストライクは比較的よくあるインシデントの一つですが、適切な予防策と確実な修理・検査を行うことで安全に管理できます。万が一発生した場合は、規定に従った慎重な評価と修復が欠かせません(航空会社や整備業者、当局の指示に従ってください)。

着陸時にテイルストライクが起こる仕組み
テールストライクの例
- エミレーツ航空407便
- パンナム845便
- アシアナ航空214便
テールストライク後の不正な修理による墜落事故
- チャイナ エアライン 611便
- 日本航空123便
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