アシアナ航空214便は、韓国・仁川国際空港から米国・サンフランシスコ国際空港へ向かう旅客便です。2013年7月6日、同機はサンフランシスコ国際空港の滑走路28L手前の海側堤防に尾部を接触させて大破し、空港内で停止後に機体の一部が火災となった。同機には307名(乗客291名、乗員16名)が搭乗していた。乗客2名がその場で死亡し、少なくとも182名が負傷した。その後、3人目の乗客も死亡しており、墜落時に生存していたものの消火活動中の消防車にひかれた可能性があるとされた(後に検視当局は、生存していた可能性が高いと判断)。飛行機が着陸態勢に入ったとき、エンジンはアイドリング状態で、本来あるべき速度よりも著しく低速で飛行していた。墜落の約1.5秒前、パイロットはゴー・アラウンドを試みたが、遅すぎた。
墜落した機体はボーイング777-200ER型機(機体記号HL7742)で、2006年3月からアシアナ航空が運航していた。この事故は、ボーイング777型機で乗客の死亡が発生した初めてのケースとなった。
進入の経緯と状況
当日は視程良好の昼間で、滑走路28Lへの目視進入が許可されていた。滑走路のグライドスロープ(計器着陸装置の垂直誘導)は工事のため不作動で、進入角の目安は滑走路脇のPAPI(進入角指示灯)に依存していた。最終進入では以下のような事象が重なった。
- 高度処理の遅れと機体の位置エネルギー管理不良により、進入後半で推力が絞られたままになり、対気速度が基準値を下回って低下。
- オートスロットルはアーム状態だったが、モードがHOLDのまま推力維持が働かず、乗員は自動で速度が保たれると誤認。
- 500ft付近以降も速度低下への適切な監視・是正が不十分で、終盤には失速警報(スティックシェイカー)が作動。
- 衝突約1.5秒前にゴー・アラウンドが選択されたが、推力発生は間に合わず、尾部が堤防に接触して分解、主脚・尾部が脱落した。
気象・空港設備
当時は弱い向かい風/横風の下で視程良好のVMC(有視界気象)だった。ILSローカライザーは使用可能だったが、グライドスロープは不作動で、PAPIは稼働していた。湾上から進入する28系列滑走路は目視要素が多く、速度・降下率の安定化とモード管理が重要だった。
被害と救助
機体は滑走路手前で損傷しながら進入路上を滑走、最終的に滑走路脇で停止後に火災が発生した。搭乗者307名のうち3名が死亡、少なくとも182名が負傷した。座席から機外に放出された乗客もおり、うち1名は消火用泡に覆われ視認が困難な状況で救助車両にひかれた可能性が指摘された。客室乗務員は一部の非常用スライドの不具合や機外火災に直面しつつ、指示系統を維持し多数の乗客を迅速に退避させた。空港消防は発生直後から消火・救助に当たり、周辺滑走路は長時間閉鎖され、サンフランシスコ発着の航空便に大規模なダイヤ乱れが生じた。
調査と原因(NTSB)
米国家運輸安全委員会(NTSB)は2014年に最終報告を公表し、事故の推定原因と寄与要因を以下のように示した。
- 推定原因:乗員による進入の管理不良と、対気速度の不十分な監視。適切なタイミングでのゴー・アラウンド実施に失敗したこと。
- 寄与要因:自動化(オートスロットル等)のモード認識不足と運用上の混乱、訓練・標準操作手順(SOP)およびCRM(乗員協力)の不備、視程良好かつILS垂直誘導不作動という運航環境。機体側の重大な機械的故障は認められなかった。
その後の対応と教訓
- 運航・訓練の見直し:アシアナ航空は視認進入時の速度監視、オートスロットルのモード理解、安定進入基準とゴー・アラウンド判断の徹底など、訓練課程とSOPを強化した。
- 規制当局の提言:NTSBは自動化依存の低減、モードアウェアネス教育、着陸復行の積極的運用を各社に推奨。FAA等も視認進入時の監視強化と訓練改善を促した。
- 空港・救難体制:空港消防は泡消火時の要救助者確認手順や連携を見直し、標識・ゾーニング、滑走路閉鎖時の運用手順の改善が図られた。
- 対外対応:家族支援・情報提供の不備が指摘され、米運輸省は同社に対し家族支援計画の履行強化と罰金措置を行った。
影響と評価
本事故は、長年高い安全記録を保持してきたボーイング777にとって初の乗客死亡事故となり、熟練乗員であっても自動化のモード誤認や監視不足が致命的な結果を招くことを示した。以後、世界の航空業界では、安定進入の厳格運用、速度監視の徹底、モード認識の訓練強化、迷いがあれば早期にゴー・アラウンドを選択する文化の重要性が再確認されている。
.jpg)


