テラス農法(棚田)とは|歴史・仕組み・水土保全と世界の事例
テラス農法とは、世界各地で開発されたさまざまな「段」や「テラス」で構成される農法のこと。世界遺産に登録されている「フィリピン・コルディレラ(丘陵・山岳地帯)の棚田」。その歴史は2,000年前に遡ります。傾斜地を平坦化して耕作面を作ることで、斜面の有効利用と水管理、土壌保全を同時に実現する伝統的な農法です。
この農法は、山や丘の側面に作られた「段差」を利用します。それぞれの段には様々な作物が植えられています。雨が降っても、土の中の栄養分がすべて洗い流されるのではなく、栄養分が次の段に運ばれていきます。また、雪崩が起きて植物が流され、丘の上の作物がすべて失われるのを防ぐことができます。また、このシステムにより、各階層に水を運ぶ水道橋を作ることができました。テラスは石造りや土盛り、植生の根で補強されたものがあり、段と段の間に排水路や溢れ口(スピルウェイ)を設けて過剰な流水を安全に下流へ逃がす構造になっています。
このアイデアは、インカの人々によっても独自に開発されました。インカの人々は、水道橋のシステムを非常にうまく構築し、それは現在でも使われています。インカの高地棚田は土留め石組と精密な灌漑路で知られ、地形と微気候を利用して多様な作物を安定的に生産しました。
仕組み(基本要素)
- 段(ベンチ):斜面を水平に切り取って作る耕作面。耕土厚を確保し、機械化や手作業での管理がしやすくなる。
- 土留め(擁壁):石積み、土盛り、植生で補強。崩壊を防ぎ、段の形状を保つ。
- 水管理施設:灌漑溝、導水路、伏流水を利用した貯水・分配システム。水の滞留と循環で安定した給水を実現。
- 排水・越流路:集中豪雨時の流出を制御し、下流への被害を軽減する。
水土保全の効果
- 表層土壌の流出(侵食)を大幅に抑制し、土壌肥沃度を保持する。
- 雨水の浸透を促進し、地下水補給や乾期の水源確保に寄与する。
- runoff(流出)の速度を落とすことで洪水リスクを低減する。
- 段ごとに異なる微気候が生まれ、多様な作物栽培や病害虫の分散に有利となる。
- 景観・文化的価値が高く、伝統的な技術継承や観光資源にもなる。
世界の代表的な事例
- フィリピン・コルディレラの棚田(世界遺産) — 棚田景観と高度な水利システムが保存されている。
- 中国雲南省の元陽(Yuanyang)や龍勝(Longji、通称「龍の背」) — 棚田の階段状景観が有名。
- インドネシア(バリ島)のテガラランやジャティルウィ — subakと呼ばれる共同の灌漑・管理システムを伴うライステラス。
- アンデス地方のインカ棚田(ペルー) — 石造りの擁壁と灌漑路で高地農業を支えた。
- 地中海沿岸(イタリア・アマルフィ海岸、スペインなど)の段々畑 — ブドウやオリーブの栽培に利用。
- 日本の「棚田」 — 里山と一体になった農業・生態系の循環を支える重要な景観資源。
維持管理と現代の課題
- 維持の手間:擁壁の補修、灌漑路の清掃、畦の補強など定期的な管理が必要。高齢化や担い手不足で放棄される棚田が増加している。
- 気候変動:降雨パターンの変化や集中豪雨は既存の排水施設に負荷をかける。
- 土地利用変化:都市化や集約的農業への転換で伝統技術が失われる危険性。
- 保全対策:世界遺産登録や地域ブランド化、観光による収益化、環境保全対価の支払い(PES)などで維持を図る事例がある。
まとめ
テラス農法(棚田)は、古くから世界各地で発展してきた斜面農法であり、土壌流出防止・水資源管理・生物多様性維持・文化景観の保全といった多面的な価値を持ちます。伝統的な技術と地域コミュニティの継続的な管理があってこそ成り立つため、現代では保全・修復・持続的活用(農業、観光、教育など)を組み合わせた取り組みが重要になっています。
質問と回答
Q: 段々畑農業とは何ですか?
A: 段々畑とは、山や丘の斜面に段々畑を作り、それぞれの段に異なる作物を植える農法です。
Q:フィリピンの棚田は何年前のものですか?
A:フィリピン・コーディレラの棚田は2000年前に遡ります。
Q:棚田農法で階段や段々畑を作る目的は何ですか?
A: 段々畑に段差をつけるのは、水が土や養分を流さないようにするためと、それぞれの段に異なる作物を植えられるようにするためです。
Q: 段々畑で雨が降ると、土の養分はどうなるのですか?
A:テラス農法では雨が降ると、土の中の養分がすべて流されるのではなく、養分が次の段に運ばれます。
Q:段々畑農法はどうして水道橋の建設を可能にしたのですか?
A:段々畑は、水が流れるための安定した構造を作り、各層に水を運ぶことで、水道橋の建設を可能にしました。
Q: 段々畑農法を独自に発展させたのは誰ですか?
A:インカ人が独自に開発したものです。
Q:インカの人々が作った水道橋の特徴は何ですか?
A: インカの人々が作った水道は、現在でも使われているほどよくできています。