第三紀(Tertiary)とは:定義と古第三紀・新第三紀、名称の変遷
第三紀の定義と古第三紀・新第三紀の違い、名称変遷やIUGSによる命名の歴史を分かりやすく解説する入門ガイド。
第三紀はかつて正式な地質時代の名称として使われていましたが、現在の国際的な地質時代区分では正式名称としては使われていません。一般には新生代の最初の部分を指し、現在は 新生代の初期にあたる領域を含む概念として理解されます。現代の層序では、第三紀に相当する区分は主に 古第三紀(Paleogene)と 新第三紀に分けられて扱われます。
定義と時代区分(概略)
「第三紀(Tertiary)」は歴史的には新生代(Cenozoic)をさらに細分したうちの一部で、古第三紀(Paleogene)と新第三紀(Neogene)をまとめた用語として用いられてきました。現行の国際時代区分(ICS/ IUGS による標準)での代表的な年代は次の通りです:
- 古第三紀(Paleogene):約66.0 Ma 〜 23.03 Ma(Paleocene, Eocene, Oligocene)
- 新第三紀(Neogene):約23.03 Ma 〜 2.58 Ma(Miocene, Pliocene)
- 第四紀(Quaternary):約2.58 Ma 〜 現在。歴史的に第三紀の後を受けて「第四紀」と呼ばれます。
名称の変遷と国際的な決定
18〜19世紀に地質学が体系化される過程で、地質学者は地層を「一次(Primary)」「二次(Secondary)」「第三紀(Tertiary)」「第四紀(Quaternary)」などと分けて呼びました。のちに地質学の知見が進むにつれて、より細かな区分と国際的な標準化の必要が高まり、IC S(国際層序委員会)を含む国際的機関によって正式な区分が整理されました。その結果、Tertiaryという広い語は段階的に正式な位相から外され、Paleogene(古第三紀)とNeogene(新第三紀)という名称が標準として用いられるようになりました。
なぜ「第三紀」が廃れたのか
- 学問の進展で、層序学的・生物層序学的・地球化学的な細分化が可能になり、細緻な区分(Paleogene/Neogene など)を用いる方が正確であると判断されたため。
- 国際的な統一(IUGS/ICS)を進める過程で、曖昧さや時代ごとに異なる用法を避けるために「第三紀」を正式用語として残さない決定がなされたため。
第三紀に起きた主要な出来事(要点)
- 白亜紀末の大量絶滅(K–Pg境界)後の生物群集の回復と哺乳類の多様化。
- 気候変動と寒冷化の進行(例えば古第三紀後期から中新生代にかけての温暖期→冷却傾向)。
- 極域での氷床形成の始まり(特に南極大陸の氷床化)。
- 地殻変動やプレート運動に伴う陸地・海洋の再配分(例:イストミアスの形成に近い過程などが後期に影響)。
現在の使い方と注意点
現代の地質学では、学術論文や公式の地質図においては 古第三紀(Paleogene) と 新第三紀(Neogene) を用いるのが標準です。ただし、歴史的文献、博物館の解説、地域の古い地質図、あるいは地質学以外の一般向け解説では「第三紀(Tertiary)」という語がいまだに使われていることがあります。古い資料を読む際は、著者が第三紀にどの期間を含めているか(第四紀を除くか含めるか)を確認する必要があります。
まとめると、第三紀(Tertiary)は地質学史上重要な用語であり、意味する範囲は古第三紀と新第三紀に相当しますが、現行の国際標準では正式な階級名としては使われず、現代の正式表記では Paleogene と Neogene を用いるのが適切です。国際的な命名・境界の決定は、国際地質科学連合(IUGS)とその下部組織である国際層序委員会(ICS)が行っています。
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