チベットカモシカ(チルー)とは:生態・分布・絶滅危機と保護対策

チベットカモシカ(チルー)の生態・分布・絶滅危機と具体的保護対策を詳説。希少なチル毛の脅威と保全の現状を分かりやすく解説。

著者: Leandro Alegsa

チベットカモシカは中型のカモシカで、ヤギやヒツジに最も近いカプリナ亜科の動物であり、チベットカモシカとも呼ばれる。学名は Pantholops hodgsonii とされ、通称「チルー(chiru)」とも呼ばれる。インド北西部やチベットに生息し、主に高標高の草原や丘陵(おおむね3,000〜5,500m程度)で暮らす。樹木のない草原に適応しており、季節的に高地を移動して採餌や繁殖地へ向かうこともある。絶滅の危機に瀕した時期があり、現在も密猟や生息地変化で脅かされている。

外見と生態

チベットカモシカは体長約1.2〜1.4m、肩高約70〜90cmの中型偶蹄類で、細く長い脚と風になびくような毛並みが特徴的。冬季には体を保温するための非常に細かい下毛があるため、高級品として知られる。主に草類や地衣類、藻類、低木の葉などを食べる草食動物で、群れを作ることが多いが、繁殖期や乾季には小さな群れや単独行動になることもある。

繁殖と生活史

繁殖は春から夏にかけて行われ、雌は1回に通常1頭の子を産む。妊娠期間は概ね6か月前後とされ、生まれた子は比較的早く歩けるようになり、弱い高地環境で生き抜く能力を備えている。成長と成熟には数年を要し、個体群の回復は緩やかであるため、過剰な捕獲は長期的な影響を及ぼす。

分布と生息地

チベット高原を中心に分布し、標高の高い草原や塩性地帯、乾燥した高地の平原などを生息地とする。かつては広範囲に見られたが、人間活動や道路・鉄道等のインフラ整備、家畜との競合により生息地の断片化が進んでいる。

脅威:密猟と“チル”の取引

ハンターの標的になっている大きな理由は、前述の極めて細く柔らかい下毛、いわゆる「チル(shahtoosh)」の存在である。チルは高級なショールや織物に使われ、非常に高価で取引されるため、絶滅の危機要因となった。一般に1枚のショールを作るのに複数頭分の下毛が必要で、採取のために個体を殺さなければならないことが多い。こうした密猟は個体数を急速に減少させる主因の一つであり、違法取引が国際的な問題となっている。

保護対策と国際的取り組み

チベットカモシカは多くの国で法的保護の対象となっており、国際的にはCITES(ワシントン条約)で厳しく規制されている(付属書Iに掲載される種は商業取引が禁止される)。また、中国やインドの保護区、国立公園でのパトロール強化や密猟対策、死体の回収と調査、地域コミュニティとの協働による監視活動などが行われている。こうした取り組みによって一部地域では個体数回復の兆しも見られるが、違法取引の根絶や生息地保全、気候変動への対応など解決すべき課題は残る。

私たちにできること

  • 違法な「チル」製品(shahtoosh)を購入しない、流通を助長しない。
  • 保護団体や研究機関の活動を支援する(寄付やボランティアなど)。
  • 観光や開発が生息地に与える影響に配慮した行動を心がける。
  • 関連する法規制や保護状況に関する情報を広めることで、社会的な関心を高める。

チベットカモシカは高地に適応した独特の動物であり、その存在は生態系の多様性や文化的価値とも深く結びついている。違法な毛皮取引や生息地の破壊を防ぎ、持続的に共存していくためには国際的な協力と地域社会の参加が不可欠である。

チベットカモシカまたはチルZoom
チベットカモシカまたはチル



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