気管は、鼻と口から肺につながる骨の管で、脊椎動物の呼吸器系の重要な部分である。哺乳類では、気管は喉頭の下部から始まり、肺まで続き、そこで左右の気管支に分岐しています。気管に炎症が生じると、気管の内膜に炎症が生じる気管炎など、他の病態につながることもあります。
構造
- 長さと位置:成人では気管の長さはおおよそ10〜13cmで、頸部から胸部へ向かって伸びます。胸腔内で胸骨角(気管分岐点)付近で左右の気管支に分かれます。
- 軟骨の環:気管壁は多数のC字形の軟骨環で支持されており、気道の開存性(つぶれないこと)を保っています。軟骨の後部は平滑筋(気管筋、trachealis muscle)と結合組織で閉じられます。
- 粘膜と線毛:内側は線毛上皮(偽重層線毛円柱上皮)で覆われ、杯細胞が粘液を分泌します。線毛と粘液の協調動作により、微粒子や粘性分泌物が咳や嚥下で排出されます(ムコシリアリ・エスカレーター)。
機能
- 空気の通路として、酸素を肺に、二酸化炭素を外気へ移動させる。
- 吸気空気の加温・加湿・ろ過(塵や病原体の除去)を助ける。
- 粘液と線毛運動で異物を排除し、下気道感染の防御に寄与する。
血管・神経・リンパ
- 血液供給:主に甲状腺下動脈や気管支動脈などから血液が供給されます。
- 神経支配:迷走神経(副交感)と交感神経により支配され、気道の平滑筋や分泌の調節に関与します。反回神経は気管周囲の感覚と声帯運動にも重要です。
- リンパ:気管周囲のリンパ節(例:傍気管リンパ節)を介して免疫応答や炎症反応に関与します。
発生
胚発生では前腸の一部から気道管が分岐して気管・気管支が形成されます。発生過程での異常は先天性気管気管支異常(例:気管欠損、気管軟化症など)を引き起こすことがあります。
主な疾患と症状
- 急性気管炎:ウイルスや細菌感染、刺激物(煙、化学物質)で生じ、咳、痰、喉の痛み、発熱を伴うことがあります。
- 慢性気管炎:長期の喫煙や慢性的刺激による粘膜の変化で、慢性的な咳や喀痰が続きます。
- 気管軟化(tracheomalacia):気管の支持構造が弱くなり吸気や呼気で気道が潰れやすく、喘鳴や呼吸困難を来すことがあります。
- 気管狭窄:外傷、長期の気管挿管、感染後の瘢痕化により気道が狭くなり、呼吸障害や労作時の息切れを招きます。
- 誤嚥や異物吸引:子どもや高齢者で起こりやすく、急性の咳嗽、窒息、不完全閉塞では喘鳴や呼吸不全に至ります。
- 細菌性気管炎(例:細菌性気管気管支炎):重症の場合、気道閉塞や気管切開が必要になることがあります(特に小児)。
診断
- 身体所見(咳、喘鳴、呼吸困難、聴診での異常)
- 胸部X線やCTスキャン:気管の狭窄、圧迫、周囲構造の異常を評価。
- 気管支鏡検査(気管鏡):粘膜所見の直接観察、採材(培養・生検)が可能。
- 呼吸機能検査:閉塞性病変の評価に有用。
治療と管理
- 保存的治療:原因に応じた安静、加湿、鎮咳薬、去痰薬、抗生物質(細菌感染時)や吸入ステロイドなど。
- 気道確保:重度の狭窄や閉塞では内視鏡的処置(バルーン拡張、ステント留置)、または外科的治療(気管形成術、切開術、気管切開)が行われることがあります。
- 原因治療:喫煙者では禁煙、基礎疾患(逆流性食道炎など)がある場合はその治療を行います。
予防
- 禁煙と受動喫煙の回避、作業場での有害物質対策。
- インフルエンザや肺炎球菌ワクチンなど、呼吸器感染予防のワクチン接種。
- 適切な手洗い、衛生管理、早期の感染症治療。
気管は呼吸の生命線であり、その異常は迅速な評価と適切な管理を要します。咳や息苦しさ、嗄声(声のかすれ)などの症状が続く場合は、専門の医療機関での診察を受けることが重要です。



