拡散とは|定義と仕組み、例・拡散率・表面積と生物での役割
拡散の定義と仕組みを分かりやすく解説|拡散率・表面積との関係や日常・生物での具体例、図解と実験で理解できる入門ガイド。
拡散とは、物質の分子が高濃度の領域(分子が多い領域)から低濃度の領域(分子が少ない領域)へと移動し、最終的に濃度が均一になる(平衡に達する)自然な過程を指します。これは、個々の粒子がランダムに運動(ブラウン運動)することによって生じ、外部からエネルギーを与えなくても進行する「受動的な」現象です。ただし、生体内ではチャネルや担体を介して拡散を促進する「促進拡散」や、エネルギーを使って物質を濃度勾配に逆らって移動させる「能動輸送」との対比で説明されることが多いです。
拡散が起こる場所と仕組みの違い
拡散は気体や液体で顕著に見られますが、固体中でも原子やイオンの拡散が起こります。したがって「拡散は気体や液体でしか機能しません」という表現は不正確です。違いは次のとおりです。
- 気体・液体:分子が比較的自由に動き、拡散係数(D)が大きく、拡散が速い。
- 固体:原子やイオンは格子欠陥や空孔を介してわずかに移動するため、拡散は極めて遅い(拡散係数が非常に小さい)。しかし、長時間や高温下では重要な現象になる(例:金属の拡散、半導体中のドーピング拡散)。
例
日常や実験で観察できる拡散の例は次のとおりです。
- 角砂糖を水のビーカーに入れてしばらく放置すると、甘さや糖の成分が水全体に広がる。
- アンモニアの臭いが教室の前から奥へと広がっていく。
- トップを外すと香水の香りがボトルから立ち上る(空気中での拡散)。
- ビーカーに落とした食品着色料が徐々に広がって均一になる。
- 家中に食べ物の匂いが漂う(換気が不十分だと濃度勾配が緩やかになりやすい)。
生体内の具体例としては、肺と血液間の気体交換(肺には血液中より酸素分子が多いため血液へ拡散、逆に二酸化炭素は血液から肺へ拡散)や、細胞膜を通る小さな分子の拡散があります。細胞生物学では、小さな無極性分子は単純拡散で膜を通過できますが、大きな分子やイオンはチャネルやキャリアを必要とすることが多く、場合によってはエネルギーを消費する輸送が必要です。
拡散率(拡散係数)と影響要因
拡散の速さは拡散係数(D)で特徴付けられます。拡散係数は物質や媒質、温度によって変わり、次の要因が拡散率に影響します。
- 濃度勾配:勾配が大きいほど拡散フラックスは大きくなる。
- 温度:温度が高いと分子の熱運動が活発になり、Dは一般に増加する。
- 媒質の粘性や密度:粘性が高いほど拡散は遅くなる(液体中は気体中より遅いことが多い)。
- 表面積:拡散が起こる界面の面積が大きいほど総輸送量は増える。
- 拡散距離:拡散で移動すべき距離が短いほど短時間で平衡に近づく。
経験的な典型値の例:
- 気体中の拡散係数:おおよそ 10−5 m2/s(物質と条件による)
- 液体中の拡散係数:おおよそ 10−9~10−10 m2/s
- 固体中の拡散係数:非常に小さく、温度に強く依存して 10−15 m2/s など
拡散を表す基本式(フィックの法則)
拡散のマクロな記述としてはフィックの法則がよく使われます。
- フィックの第一法則(定常状態の輸送)
拡散フラックス J(単位面積あたりの物質流束)は、濃度勾配に比例します。
J = −D (dC/dx)
ここで D は拡散係数、C は濃度、x は位置です。マイナス符号は高濃度から低濃度へ流れることを示します。 - フィックの第二法則(非定常拡散)
濃度の時間変化は拡散により次の偏微分方程式で表されます。
∂C/∂t = D ∂²C/∂x²
目安として、拡散で移動する代表的な時間スケール t は距離 L に対して t ≈ L² / (2D)(一次元の近似)で概算できます。このため、L が大きくなると必要時間は急増し、長距離輸送には循環系などの別の仕組みが必要になります。
表面積と体積(生物学的観点)
小さな単細胞生物は、体積に対する表面積の比率(表面積/体積比)が大きいため、単純な拡散で十分に物質交換が行えます。体積に対する表面積の比率が高いほど、単位体積あたりの物質取り込みや排出が効率的になります。
一方、多細胞生物では、細胞よりも大きな距離で物質を運ぶ必要があるため、単純拡散だけでは不十分です。そこで、循環系や気体交換器官(例えば人間の肺)や植物の維管束・葉の構造など、拡散を補助する内部構造や輸送システムが進化してきました。これにより、末端組織まで酸素や栄養を迅速に供給できます。植物では葉の表面積を大きくしてガス交換を効率化する構造が例として挙げられます(葉っぱ)。
生物での役割と実用的意義
- 呼吸:肺胞での酸素と二酸化炭素の交換は拡散が基本。
- 細胞内代謝:代謝産物や基質は細胞質や小器官間で拡散して反応に供される。
- 薬物動態:投与された薬物は組織間で拡散し、到達時間や濃度に影響する。
- 工学的応用:触媒層での拡散支配、半導体製造における拡散プロセス、汚染物質の環境中拡散予測など。
まとめと注意点
- 拡散は主に濃度勾配に起因する受動的移動で、気体・液体・固体(ただし速度は遅い)で起こる。
- 拡散係数(D)や温度、粘性、表面積、拡散距離などが拡散の速さに影響する。
- 生体では拡散だけでなく、促進拡散や能動輸送が組み合わさって物質移動が制御される。
内容
1例
2拡散率
3表面積と体積
4関連ページ
5参考文献
関連ページ
- 拡散に関連する他のトピックや生物学・物理学の基礎(上記のリンク先参照)
参考文献・補助資料
- フィックの法則に関する教科書的説明(物理化学・輸送現象の入門書)
- 生物学における拡散と輸送(細胞生物学の標準テキスト)

拡散が起こっている様子の図。最初の図は、液体中の粒子を示しています。2番目の図は、粒子が拡散した数秒後の同じ液体を示しています。
関連ページ
質問と回答
Q:拡散とは何ですか?
A:拡散とは、物質の分子が高濃度の領域から低濃度の領域へ、平衡に達するまで移動するプロセスのことです。
Q:拡散は通常どのような種類の物質で起こるのですか?
A: 拡散は通常、気体、液体、時にはコロイドの混合物で起こります。
Q:どのように拡散を観察することができますか?
A:透明な容器の中で2つの液体を混ぜると、拡散を見ることができます。
Q:拡散は何を表しているのか?
A: 拡散は、すべての液体、気体、コロイド中の粒子の絶え間ない動きを記述しています。これらの粒子はあらゆる方向に移動し、互いにぶつかり合います。
Q: 拡散中に粒子が動く方向は決まっているのですか?
A:いいえ、粒子はランダムに移動し、拡散中に特定の方向を持つことはありません。
Q:粒子の移動は、平衡に達すると止まるのですか?
A: はい、平衡に達すると、粒子は材料全体に均一に広がるため、粒子の移動は止まります。
Q: このプロセスには例外がありますか?
A:はい。物質によっては、その構造や組成から、分子が拡散するためにさらなるエネルギーや圧力が必要になる場合があります。
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