植物のトランスロケーション(樹液輸送)—定義・仕組み・圧力流説

植物のトランスロケーション(樹液輸送)の定義と仕組みを図解で解説。圧力流説の歴史・メカニズム、糖や水の移動と生理的役割まで詳しく紹介。

著者: Leandro Alegsa

定義と概観

維管束植物におけるトランスロケーションとは、主に有機分子(特に光合成産物である糖類)と一部の無機イオンが植物体内を移動する過程を指します。土壌から葉へ供給される水の移動は、蒸散の結果として木部(木部の導管)内で起こります。葉からの水分の蒸発である蒸散は、水分子間に働く水素結合による凝集力(粘性)を通じて水柱を引っ張り、結果的に水が上方へ移動します。対照的に、主に葉で合成された有機物は、トランスロケーションと呼ばれる過程で、葉の生細胞から成るフローム(篩部、phloem)に取り込まれ、植物体内の各部へ搬送されます。

樹液(フロエム液)とその構成

樹液は、木部(xylem)のように死んだ細胞からなる導管ではなく、篩板孔をもつ生きた細胞群(篩管要素と随伴細胞)から構成されます。樹液は水性の溶液で、光合成によって作られた糖分が豊富に含まれ、主にショ糖(蔗糖)が主要な輸送形態として運ばれます。種によってはソルビトールやラフィノース類、その他の糖アルコールやオリゴ糖も重要な輸送物質になります。これらの糖は、根や茎の貯蔵器官、塊茎や球根のような貯蔵構造、成長中の若葉や花器官など糖を必要とする非光合成組織へ運ばれます。

圧力流説(ミュンヒの仮説)とその仕組み

圧力流」仮説は、1930年にエルンスト・ミュンヒによって提唱された、篩部内での物質移動を説明する標準的なモデルです。モデルの要点は次の通りです。

  • 葉(供給源、source)で生成された糖は、篩管(ふるい管)要素に取り込まれる。
  • 糖(ショ糖など)が篩管に取り込まれると、局所的に溶質濃度が高まり、これにより周囲の水が浸透圧差によって篩管内に流入する。
  • 篩管内の水分が増えることで膨圧(浸透圧による内圧、turgor pressure)が高まり、局所的な圧力勾配が生じる。
  • この圧力勾配により、糖を含む樹液が高圧部(供給源側)から低圧部(吸収源、sink)へと押し流される。
  • 吸収源側では糖が能動的・受動的に篩管から取り出され、糖が除去されることで局所圧力が低下し、流れが維持される。

この過程には、篩管要素と密接に連携する随伴細胞による糖の取り込み(フロームへの「積み込み」)と、吸い出し(アンロード)が重要です。積み込み・解積み込みの方式は植物種や組織によって異なり、共役輸送(能動的なトランスポーターを介したアポプラス的積み込み)や、隣接細胞と直接つながるプラズモデスマを介するシンパラス的積み込みがあります。能動的積み込みにはH+-ATPaseによるプロトンポンプとプロトン/ショ糖共輸送体(SUT/SUCなど)が関わります。

供給源(source)と吸収源(sink)

植物の年間サイクルや成長段階により、どの部位が糖の供給源や吸収源になるかは変化します。一般に、成長期(多くは春〜夏)には若い葉や貯蔵器官(例:の先端や塊茎)が異なる役割を果たします。例えば春先には地下の貯蔵器官が糖の供給源になり、成長する芽や新しい葉が吸収源(糖の受け取り側)となることがあります。フローム(篩部)での移動は単方向(木部での上行流とは異なり)ではなく、多方向(複数方向)に行われ得ます。

また、アミノ酸ホルモン(オーキシン、サイトカイニン、アブシジン酸など)、さらにはメッセンジャーRNAのような情報分子もフロームを介して輸送され、植物の発生や応答を調節します。

実験的証拠と観察方法

  • アフィド(アブラムシなどの昆虫)の刺針を用いてフローム液を採取し、直接流量や成分を測る方法は古くから用いられてきました(刺針により篩管の圧力が測定可能)。
  • 放射性同位体(例:14Cで標識した二酸化炭素から合成させたショ糖)を用いるトレーサー実験により、糖の移動経路と移動速度を追跡できます。
  • 枝の環状剥皮(girdling)実験により、篩部が遮断されると根や下部への糖供給が遮られるため、生理学的な役割が明確になります。
  • 顕微鏡的観察や電気生理学的手法で、篩管要素・随伴細胞の構造と機能(プラズモデスマの有無、随伴細胞の代謝活性など)が明らかにされています。

速度・制限因子・変動要因

フローム輸送速度は植物種や環境条件(温度、水分状況、光合成速度)により大きく変化します。一般的には数cm〜数m/時間のオーダーで移動すると報告されています。輸送を制限する要因には、篩板の抵抗、糖の積み込み効率、水分供給、温度依存性の酵素活性などがあります。

圧力流説への批判と補完的モデル

ミュンヒの圧力流説は多くの実験的証拠によって支持されていますが、すべての現象を説明するわけではありません。局所的な輸送制御、長距離での逆流、極めて高速な信号伝達(電気的・化学的シグナル)など、他の過程や補助的なメカニズムが関与する可能性が研究されています。それでもなお、圧力差に基づく流れがフロームの基本原理であるという点は広く受け入れられています。

まとめ(ポイント)

  • トランスロケーションは篩部(フローム)を介した有機物(主に糖)と一部無機物の移動である。
  • 樹液は、生きた篩管要素と随伴細胞からなり、光合成で作られた糖を溶媒として輸送する。
  • 圧力流」仮説は、供給源で糖を積み込み、浸透圧差で水を取り込ませて膨圧を作り、圧力差により流れを生じさせるというモデルである。
  • 積み込み・解積み込みの方式(アポプラス的/シンパラス的)や随伴細胞の作用が輸送効率を決める。
  • アミノ酸やホルモン、mRNAなどもフロームで輸送され、植物の成長・分化・応答に寄与する。

必要であれば、図解(木部と篩部の比較、ミュンヒモデルの模式図)や具体的な実験データ(移動速度の例、トレーサー実験の結果)を付け加えて、さらに理解を深める補足を作成できます。

質問と回答

Q:維管束植物におけるトランスロケーションとは何ですか?


A:維管束植物における転流とは、有機分子や一部のミネラルイオンの移動のことです。

Q: 水はどのようにして土から葉に移動するのですか?


A: 土壌から葉への水の移動は、木部管の中で蒸散することによって行われます。葉から水が蒸発する「蒸散」は、水素結合によって形成された水分子間の凝集力によって水柱に引っ張りが生じ、水柱が上方に移動するのです。

Q:有機材料は主にどのような場所で生産されるのですか?


A: 有機物は主に葉で生成されます。

Q: 植物体内ではどのように移動しているのですか?


A: 葉茎の生きた細胞の中で、転流と呼ばれる過程を経て、植物体内を移動します。

Q: 樹液は何からできているのですか?


A: 樹液は、光合成によって作られた糖分を多く含む水溶液で構成されています。

Q: 葉茎転流のメカニズムを説明するために「圧力流」仮説を提唱したのは誰ですか?


A: 1930年にエルンスト・ミュンヒが、葉茎移動のメカニズムを説明するために「圧力流」仮説を提唱しました。

Q: 葉茎の細胞内では、どのような方向に移動するのですか?


A: 葉茎細胞内の移動は多方向、木部細胞内の移動は一方向(上方向)です。


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