南北戦争の連邦(北軍)とは:北部諸州の定義・歴史・特徴
南北戦争の連邦(北軍)とは何かを解説:支持州の範囲・歴史的背景・工業化や社会的特徴まで分かりやすく紹介。
南北戦争中、連邦とはアメリカ合衆国の連邦政府を意味し、20の自由州と5つの国境州が支持していた。南部の11の奴隷州が反対していた。連邦の州には、カリフォルニア、オレゴン、ネバダ(1864年以降)の西部の州が含まれていた。また、当時「オールドノースウエスト」と呼ばれ、現在では通常中西部の一部と考えられている州も含まれていた。しかし、当時も現在も連邦はしばしば「北部」とも呼ばれている。連邦の各州は、より豊かで工業化されていた。
定義と呼称
連邦(Union)とは南北戦争期における合衆国連邦政府およびそれを支持した州・軍隊を指す用語で、同時に戦争側としては一般に「北軍(北部)」とも呼ばれます。戦争開始時の政治的目標は合衆国の存続(Unionの維持)でしたが、戦争の進行とともに奴隷制廃止へと目的が拡大していきました。指導者としてはエイブラハム・リンカーン大統領が中心的役割を果たしました。
構成州とその変動
文末の数字などは時期により変動しますが、南北戦争期の連邦には東部・中西部・西部の諸州が含まれていました。本文で触れられているように、カリフォルニアやオレゴン、および1864年に州昇格したネバダなどの西部州も連邦側にありました。
いわゆる国境(border)州は戦争初期に南部に近い特徴を持ちながらも連邦側に残った州を指し、代表的には以下の州が挙げられます(戦況により扱いは変化)。
- デラウェア
- メリーランド
- ケンタッキー
- ミズーリ
- 後に分離して連邦に加わったウェストバージニア(1863年)
また「オールドノースウエスト」と呼ばれた地域は現在の中西部(例:オハイオ、インディアナ、イリノイ、ミシガン、ウィスコンシン、ミネソタなど)に相当し、重商業・農業・工業の拠点として連邦の戦力を支えました。
経済・社会の特徴
連邦側は全般に工業化が進み、都市化が進展していました。主要な特徴は次のとおりです。
- 工業力と資本:製鉄・機械・砲弾・弾薬などの生産能力が高く、武器や物資の供給で優位に立ちました。
- 交通・通信網:鉄道網や電信(電報)が発達しており、軍の輸送・指揮連絡で大きな利点となりました。
- 人口:総人口では南部を大きく上回り、徴兵や労働力の面で有利でした。都市に集中した労働力と移民の存在も特徴です。
- 多様な経済:農業に加えて工業・金融・貿易が混在し、戦時経済へ比較的柔軟に対応できました。
軍事的特徴と戦略
連邦は物的・人的資源において優位にあり、これを活かした戦略を採りました。主な点は次のとおりです。
- 海上封鎖(Anaconda Plan):連邦海軍による南部沿岸の封鎖で南部経済を圧迫しました。
- 大規模な陸軍と補給網:鉄道や補給線を活用して大規模作戦を継続的に行う能力がありました。
- 指揮系統と将軍:戦争後期にはユリシーズ・S・グラントやウィリアム・T・シャーマンらが重要な役割を果たし、総力戦を展開しました。
- 情報と通信:電報や新聞が早い情報伝達を可能にし、政治・軍事に影響を与えました。
奴隷制と解放の政策
連邦は当初から全面的な奴隷制廃止を最優先の戦争目的としていたわけではありませんが、戦況と政治的必要性から方針が変化しました。1863年の解放宣言(Emancipation Proclamation)は反乱州の奴隷を解放する宣言として発せられ、以後連邦軍は黒人兵の編成( United States Colored Troops、USCT)を進めました。この変化は戦争の性格を「合衆国の保存」から「人身の自由(奴隷制廃止)」へと拡大させました。
政治的・国際的側面
連邦は国際的には南部の独立を承認しない立場を貫き、外交的に欧州列強の関与を排除しました。国内ではリンカーンの指導下で経済政策や徴兵制度、戦時財政が実施され、同時に合衆国憲法の解釈や大統領権限に関する議論が深まりました。
戦後の影響
- 連邦の勝利は合衆国の存続を確保し、続いての法的・社会的変化として第13修正(奴隷制の廃止)につながりました。
- 膨大な人的被害と経済負担が生じ、被害の大きかった南部では復興(Reconstruction)政策が必要となりました。
- 黒人の軍事参加や解放は、戦後の市民権運動や社会構造の変化の基礎を作りましたが、差別・抵抗も続きました。
まとめ(ポイント)
- 「連邦」は合衆国政府およびそれを支持した州と軍隊を指し、一般に「北部」「北軍」と同義で用いられる。
- 戦争期の連邦は工業力・人口・交通網などで優位に立ち、海上封鎖や総力戦で南部を圧迫した。
- 戦争を通じて目的は拡大し、結果として奴隷制廃止と合衆国の統一が達成されたが、復興と人種問題という課題が残された。

南北戦争時の州分けの地図。青は戦争中に加盟した州を含む北軍州、水色は奴隷制を認めた北軍州(国境州)。赤は南軍州を示す。陰影のない部分は、南北戦争の前も中も州ではない。
関連ページ
- 北軍
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