白海は、バレンツ海の南に開く大きな入り江で、ロシア北西部の海域に位置します。西はカレリア、北はコラ半島、北東はカニン半島に囲まれ、海域はすべてロシアの支配下にあり、ロシアの内水域の一部とみなされています。行政的にはアルハンゲリスク州、ムルマンスク州、カレリア共和国にまたがっています。
地理と水文
白海の面積は約9万km²で、平均水深はおよそ60m、最大水深は約340mとされます。海岸線は入り組んでおり、湾や浅瀬、河口扇状地が多く存在します。主要な河川には北ドヴィナ川(セヴェルナヤ・ドヴィナ)、オネガ川、メゼン川、ヴィグ川などが注ぎ、豊富な淡水が流入するため塩分は低めです。大きな島嶼群としてはソロヴェーツキー諸島(ソロヴェツキー諸島)が知られ、歴史的・文化的にも重要です。
気候と海氷
気候は亜寒帯〜亜寒帯海洋性で、冬季は厳しく海面は11月頃から5月頃まで季節的に凍結します。夏季の開氷期は短く、航行可能期間は限られるため、氷を破る能力を持つ船(アイスブレーカー)や沿岸港の整備が重要です。
港湾・経済活動
- 主要港:アルハンゲリスク(Архангельск)は白海側の代表的な港湾都市で、かつてはロシアの西方貿易の中心でした。ほかにセヴェロドヴィンスク(造船・潜水艦修理)、カンダラクシャ、ベロモルスクなどの港があります。
- 漁業と資源:沿岸漁業が伝統的に発達し、タラやニシン、カニ類などが漁獲されます。河口域の湿地や泥地は水鳥や魚類の重要な生息地です。
- 内陸連絡:白海は内陸水路網とつながっており、特に「白海—バルト海運河(白海バルト海運河)」は白海とバルト海を結ぶ重要な運河です(後述)。
軍事と造船
ソ連の時代から現在にかけて、白海沿岸には海軍基地や造船所があり、潜水艦や軍艦の建造・整備拠点が存在します。セヴェロドヴィンスク周辺は潜水艦建造の中心地として知られています。
歴史概略
- 古くから沿岸の住民(ポモール)による漁撈や交易が行われ、17世紀以降はアルハンゲリスクを中心に西方との海上貿易が発展しました。
- 18世紀にペテルブルク(現サンクトペテルブルク)が開かれると、ロシアの西方貿易拠点は徐々にそちらへ移り、白海の商業的役割は相対的に縮小しました。
- 1930年代、白海とバルト海を結ぶ白海—バルト海運河(Беломорско‑Балтийский канал)が建設され、1933年に開通しました。建設は主に強制労働(グラーグ)によるもので、多くの労働者が犠牲になった歴史的事実があります。
生態系と観光
白海は北方の海洋生態系を代表する地域で、海鳥やアザラシ、シロイルカ(ベルーガ)などが生息します。多様な沿岸湿地や浅瀬は生息地として重要で、保全活動や研究も行われています。ソロヴェツキー諸島の修道院群は世界遺産に登録されており、歴史・宗教・自然を目的とした観光地として訪れる人もいます。
名称について
「白海(Белое море)」の名は、英語でも一般的な色を示す海の名の一つで、色名が付く海としては他に黒海、紅海、黄海があります。名称の由来には諸説あり、氷や波の白さ、あるいは方角に由来する説などが提起されています。



