ウィリアム・マーティン"ビリー"ジョエル(1949年5月9日生まれ)は、アメリカのシンガーソングライターで、ピアノを軸にしたポップ/ロック作品を数多く世に出してきた。1973年の『ピアノ・マン』で広く注目を浴び、1993年の『リバー・オブ・ドリームス』を最後に、商業的なポップ・アルバムの発表を事実上休止したと報じられることもある(当時一部では引退を表明したと伝えられた)が、その後もライブ活動や作曲は続けている。ポップ/ロックのほかに、後年にはピアノによるクラシック風の作品も発表しており、クラシック音楽を志向した作品群や編曲にも取り組んでいる。なお、エルトン・ジョンとは長年にわたり共演を重ね、Face to Faceツアーなどで共にステージに立つことでも知られている(詳細はエルトン・ジョンとの共演歴に表れる)。
ジョエルはニューヨークのブロンクス生まれで、幼少期はニューヨーク州のロングアイランド、ヒックスヴィルで育った。14歳の時に最初のバンド、ザ・エコーズ(後のロスト・ソウルズ)に参加し、1960年代後半にはザ・ハスリーズ(The Hassles)のメンバーとして活動した。The Hasslesは2枚のアルバムをリリースした後、1970年に解散。ジョエルはハスリーズのドラマー、ジョン・スモールと2人組のデュオ、アッティラを結成した。1971年に発表したソロ・デビュー作『コールド・スプリング・ハーバー』をはタイトルがロングアイランドの地名に由来するが、当初のマスタリングミスでヴォーカルの音程が速くなってしまったため、後に修正版が出されるなど波乱のスタートとなった。その後、1970年代後半から1980年代にかけては『The Stranger』(1977)、『52nd Street』(1978)、『Glass Houses』(1980)や『An Innocent Man』(1983)などのヒット作を連ね、代表曲「ピアノ・マン」「Just the Way You Are」「Uptown Girl」「We Didn't Start the Fire」など多数の名曲を生み出した。商業的成功と批評的評価の双方を得て、ソングライターとしての地位を確立した。
政治的には民主党支持者として知られ、選挙キャンペーンやチャリティー・イベントで民主党系の候補者を支援したことがある。1988年にはディズニーのアニメ映画『オリバー&カンパニー』で、ニューヨークを舞台にした犬の人気キャラクター「ドジャー(Dodger)」の英語版の声と歌を担当し、映画のサウンドトラックでも顔を見せた。音楽的な評価としてはソングライター・ホール・オブ・フェイム、ロックの殿堂(Rock and Roll Hall of Fame)への殿堂入り、複数のグラミー賞受賞などがあり、ライブでは2000年代以降マディソン・スクエア・ガーデンでの定期公演を続けるなど長年にわたり高い人気を保っている。クラシック寄りの作品としては2001年に発表したピアノ曲集『Fantasies & Delusions』のような取り組みもある。
私生活ではジョエルはこれまでに4回結婚しており、最初の3回は離婚に終わっている。最初の妻エリザベス・ウェバーとは1973年から1982年まで結婚。2度目の結婚は1985年から1994年までで、スーパーモデルのクリスティ・ブリンクリーとの結婚だった。娘のアレクサ・レイ・ジョエル(1985年生まれ)はその婚姻からの子で、ミドルネームの「レイ」は彼が影響を受けた音楽家の一人であるレイ・チャールズに由来する。3度目の結婚はレストラン起業家で作家のケイティ・リー(2004年に結婚、2009年に離婚)とのもので、4度目は2015年にアレクシス・ロデリックと結婚し、二人の間には2015年8月12日生まれの娘デラ・ローズ・ジョエルがいる。子どもは公にほとんどの時間を一般家庭で育てられており、ジョエルは父親としての生活も公私にわたって大切にしている。
概して、ビリー・ジョエルは歌詞とメロディを兼ね備えたソングライティング、ピアノを中心とした演奏、幅広いジャンルの取り込みで知られ、長年にわたって世界中で愛され続けているアーティストである。