ジェローム・パウエルとは|FRB(米連邦準備制度)議長の経歴・政策
ジェローム・パウエルの経歴とFRB議長としての政策論点をわかりやすく解説。最新の金融政策、利上げ判断や市場への影響まで要点を網羅。
ジェローム・ヘイデン・パウエル(Jerome Hayden Powell、1953年2月4日生まれ)は、アメリカ合衆国の法律・金融分野出身の公職者で、2018年2月より第16代現職の連邦準備制度理事会議長および連邦準備制度理事会のメンバーを務めている。連邦準備制度理事会の理事(Board of Governors)には、バラク・オバマ大統領の指名により2012年に就任した。
略歴・学歴
ワシントンD.C.出身。プリンストン大学ウッドロウ・ウィルソン・スクール(現スクール・オブ・パブリック・アンド・インターナショナル・アフェアーズ)で学士号(政治学)を取得(1975年)、その後ジョージタウン大学ロースクールで法務博士(J.D.、1979年)を得た。法律と金融の両分野で経験を積んだ点が特徴で、学術的なエコノミスト出身の議長とは異なる経歴を持つ。
民間・政府でのキャリア
弁護士としての出発後、投資銀行や民間資本(プライベート・エクイティ)など金融業界で長年にわたり勤務した。民間での経験に加え、政府ではジョージ・H・W・ブッシュ政権下で財務省(U.S. Department of the Treasury)の要職を務め、1992年から1993年には国内金融担当のアンダーセクレタリー(Under Secretary for Domestic Finance)を歴任した。
FRB理事就任と議長指名
2012年に連邦準備制度理事会の理事に指名・就任した後、2017年11月2日、ドナルド・トランプ大統領はパウエル氏を次期連邦準備制度理事会議長に指名した。2018年1月31日に米国上院で指名が承認され、2018年2月5日に議長に就任した。以降、複数の経済ショックに対してFRBを率いる立場となった。バイデン政権下でも再任が行われ、現在の任期は2020年代半ばまで続いている(再任についての議会手続きと承認を経ている)。
議長としての政策と主要な対応
- 利上げから正常化へ:議長就任後は、リーマン危機後の超低金利政策から段階的な正常化(利上げと資産縮小)を進めた期間があった。
- 2019年の調整:世界経済の減速や貿易摩擦の影響を受け、2019年には一部利下げや金融環境の調整を行った。
- パンデミック対応(2020年):新型コロナウイルス感染拡大時には、緊急利下げで政策金利を事実上ゼロ近傍に引き下げるとともに、大規模な資産買入れ(量的緩和)や企業・地方政府向けの流動性供給を目的とした緊急融資制度を導入し、市場の安定化と信用供与を図った。
- インフレ抑制(2021〜2023年以降):パンデミック後の物価上昇(インフレ率の急上昇)に対応して、FRBは一転して金融引き締め政策を大幅に進めた。パウエル議長はインフレ抑制を最優先課題と位置付け、短期間での大幅利上げやバランスシートの縮小(量的引き締め)を実施した。
- 金融規制と安定性:パウエル氏は、銀行規制の適用や資本規制について“小規模銀行向け規制緩和”を含む見直しを進めた一方、2023年に発生した一部銀行危機では迅速に対応し、金融安定確保の重要性を強調した。
リーダーシップと評価
パウエル議長は「データ重視」と「段階的・実務的」なアプローチで知られる。経済学の学術出身ではないため、実務経験を生かした政策運営を行う一方で、独立性を重視し政治からの圧力に対して毅然とした姿勢を示してきた。賛否両論があり、物価安定のための急速な利上げは賛同を得る一方で、景気への影響や雇用の停滞を懸念する声もある。
私生活
私生活では家族とともに生活しており、公的な場では金融政策や公務に注力している。銀行・金融市場関係者や学界との交流も多い。
ジェローム・パウエルは、法律と民間金融を出自とする異色のFRB議長として、近年の金融危機・パンデミック・高インフレという一連の難局を迎え、金融政策と金融安定の双方で重要な決定を下してきた。
幼少期
パウエルは、ワシントンD.C.で生まれた。プリンストン大学とジョージタウン大学で学ぶ。1975年から1976年にかけて、ペンシルベニア州のリチャード・シュワイカー上院議員の立法補佐官として1年間を過ごした。
初期の経歴
1984年から1990年まで、パウエルは、ディロン・リード・アンド・カンパニーに勤務していた。1990年から1993年まで、パウエルは米国財務省に勤務していたが、その頃、ディロン・リード&カンパニー元会長のニコラス・F・ブレイディが米国財務長官を務めていた。1992年、ジョージ・H・W・ブッシュに指名され、国内金融担当の財務次官となる。
1993年、パウエルはバンカーズ・トラストのマネージング・ディレクターとして働き始めたが、1995年に辞めた。パウエルは、産業分野における特殊金融とオポチュニスティック投資に特化した民間投資会社、セヴァーン・キャピタル・パートナーズを設立した。
連邦準備制度理事会
2011年12月、バラク・オバマ大統領によって連邦準備制度理事会の理事に指名されたパウエル。2012年5月25日に就任した。2014年1月、再度指名され、2014年6月、米国上院で67対24の投票で2028年1月31日までの14年間の任期で承認された。2018年1月23日、上院で85対12の投票により指名が承認された。
連邦準備制度理事会議長
2017年11月2日、ドナルド・トランプ大統領はパウエルを連邦準備制度理事会の議長に指名した。2018年1月31日、パウエルは米国上院で承認された。
私生活
1985年、パウエルはエリッサ・レオナルドと結婚した。2人の間には3人の子供がいる。
パウエルの純資産は1億1200万ドルにも上ると言われている。
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