ヴィオールの帝王・マリン・マレ(1656–1728)— フランスのバロック作曲家と主要作品
フランス・バロックの巨匠マリン・マレ(1656–1728)とヴィオール名曲、代表作や生涯をわかりやすく紹介。
マリン・マレ(Marin Marais、1656年5月31日、パリ - 1728年8月15日、パリ)は、フランスの作曲家であり、ヴィオラ(ヴィオール、ヴィオラ・ダ・ガンバ)奏者として知られるバロック期の重要な音楽家です。特にヴィオール作品において後世に強い影響を残し、「ヴィオールの帝王」と称されました。
生涯(簡略)
マレは貧しい靴職人の家に生まれ、幼少期に聖歌隊の学校で音楽教育を受け、最初はバイオリンを学びました。のちに著名なヴィオール奏者であるサント=コロンブ(Sainte-Colombe)に師事し、短期間で大きく腕を上げたと伝えられます。1675年、19歳でパリ・オペラ座のオーケストラに入団し、そこでオペラ座の領導的存在であったジャン・バティスト・リュリと出会います。リュリから作曲の手ほどきを受け、オペラ上演でも活躍しました。
1676年にはヴェルサイユ宮殿の宮廷音楽家に採用され、以後宮廷やサロンで多くの機会を得て、1679年には王室のヴィオール奏者としての地位に任命され、1725年ごろまでその地位を保ちました。1706年にはパリ・オペラ座の指揮者(あるいはリーダー的地位)となりましたが、1709年のオペラ『セメレ』の失敗などを契機に徐々に公の舞台から身を引いていきました。
私生活では1676年9月21日にカトリーヌ・ダミクールと結婚し、二人の間には19人の子どもが生まれました。そのうちヴァンサン・マレとロラン・マレは音楽家として知られ、孫のニコラ・マレも音楽家として活動しました。
音楽と演奏法
マレは当時のフランスで卓越したヴィオール奏者として知られ、独自の奏法と表現を発展させました。彼のヴィオール作品は、歌うような旋律、繊細な装飾(オルナメント)、フランス的な優雅さと情感を併せ持つのが特徴です。通奏低音(バソ・コンティヌオ)や和声進行を巧みに用い、舞曲形式や場面描写的な楽曲(情景描写)も多く残しています。
また、技巧的なパッセージや変化に富むリズム、変奏曲(シャコンヌやパッサカリア風の終結)を取り入れた点が評価されます。鍵盤楽器的な効果を想定した作品や、物語性・描写性のある曲(たとえば迷路に迷い込んだ男を描く「迷宮」など)もあり、聴衆に情緒的な体験を与えることを意図していました。
主要作品
- ヴィオールのための作品:全5巻のPièces de viole(1686年〜1725年)。これらはフランス・バロックのヴィオールレパートリーの中核をなします。
- 器楽作品:1692年のトリオ曲集(pièces de trioなど)や、独奏および室内楽曲多数。
- 声楽・舞台作品:4つのオペラ(1693年~1709年)をはじめ、管弦楽や声楽を含む作品群。1706年のオペラアルシオーネ(Alcyone)は特に“嵐(tempête)の場面”で知られています。
- 劇的・描写的作品:ティトン・デュ・ティルレ(Titon du Tillet)は著書『Le Parnasse françois』の中で、マレの4冊目の本に収められた「迷宮」(Labyrinthe)や「La Gamme」(音階を上下する作品)について言及しています。迷宮は不協和音や速・遅の対比を用いて迷いの情景を描き、最後はやすらぎのあるシャコンヌ風の終結を迎えます。
演奏実践と楽器
当時のヴィオールは現在のチェロやヴィオラとは別の楽器で、6弦(あるいは7弦)のガンバ類が主流でした。マレの作品はヴィオールの豊かな表現力を最大限に引き出すように書かれており、左手のポジション移動や右手の弓使い、装飾音の扱いに高度な技巧が求められます。彼自身が演奏法の発展に寄与したことから、後世のヴィオール奏者にとって重要な資料となっています。
版と現代の受容
マレの作品は18世紀以降も評価され続け、20世紀以降の古楽復興とともに再評価が進みました。原典版・校訂版や復刻版も複数刊行されています。本文で触れられているように、マレの「ピエ・ドゥ・スミレ」全5巻の複製版がJ.M.フゾー社から出版されているほか、ジョン・シューが編集した全7巻の器楽作品の批評版がブルード・ブラザース社から出ています。これらの版は演奏家や研究者に広く利用されています。
影響と評価
生前からフランス宮廷や都市の上流階級に支持され、没後もティトン・デュ・ティルレらによって高く評価されました。ユベール・ル・ブラン(1740年)らは彼を「ヴィオールの帝王」と称し、マレのスタイルは19世紀・20世紀の古楽復興運動において重要な研究対象となりました。現代の古楽演奏やヴィオール教育において、マレの作品と奏法は不可欠なレパートリーです。
彼の作品は演奏会だけでなく録音でも多数取り上げられており、ヴィオール復興の流れとともに広く親しまれています。
質問と回答
Q:マリン・マレとは何者か?
A: マラン・マレは、バロック時代のフランスの偉大な音楽家の一人とされるフランスの作曲家、ヴァイオリン奏者です。
Q: 彼はどのようにしてヴィオールの演奏を学んだのですか?
A: 彼は聖歌隊の学校でヴィオールの教育を受け、その後、有名なバスヴィオール奏者であるムッシュ・ド・サント・コロンブから学びました。半年で先生より上手になったと言われています。
Q:彼はヴェルサイユ宮殿でどのような地位にあったのでしょうか?
A: 1676年にヴェルサイユ王宮で演奏する音楽家として雇われ、「ordinaire de la chambre du roy pour la viole」に任命され、1725年までその称号を保ちました。
Q:マレはどんな楽器を専門にしていたのですか?
A:ヴァイオリンのための作品を数多く作曲し、ヴァイオリンの最も重要な作曲家の一人としての地位を確立しました。
Q: マレは「ヴィオールの詩」の他にどんな作品を作曲したのですか?
A: マレは『ヴィオレの詩』以外に、『三重奏の詩』(1692年)と4つのオペラ(1693-1709年)を作曲しています。アルシオーネ』(1706年)は嵐の場面でよく知られている。
Q: マレの作品について誰が書いたのですか?
A: ティトン・デュ・ティレは『Le Parnasse françois』という本の中でマレの作品について書いており、『迷宮』や『秤』などの作品について述べています。
Q: 現在、彼の音楽の出版物はあるのでしょうか?
A: はい、マレの「Pièces de viole」全5巻のファクシミリがÉditions J.M. Fuzeauから出版されていますし、ジョン・シューが編集した全7巻の器楽曲の批評版がBroude Brothersから出版されています。
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