ニール・マギル・ゴーシュ(1967年8月29日生まれ)は、米国の裁判官であり、2017年4月10日に就任して以来、米国最高裁の准裁判官を務めています。それ以前は、2006年8月8日から2017年4月9日まで、米国第10巡回区控訴裁判所の判事を務めていました。
2017年1月31日、ドナルド・トランプ大統領は、アントニン・スカリア判事の死後に空席となった席を埋めるために、ゴーシュを米国最高裁の准判事に指名しました。4月3日、上院司法委員会は、11対9の投票で同氏の指名を承認しました。2017年4月7日、上院はゴーシュ氏の最高裁判事への指名を、民主党上院議員3名が共和党上院議員全員に加わった超党派の54対45の賛成票で承認しました。2017年4月10日に宣誓しました。
学歴と初期経歴
ゴーシュは法学において優秀な成績を収め、米国と英国で教育を受けました。学部ではコロンビア大学で学び、その後ハーバード・ロースクールで法律の学位を取得しました。また、奨学金制度(Marshall Scholarship)を得て英国のオックスフォード大学で研究を行い、高度な学位を修めています。卒業後は司法書記官(法曹界でのクラーク)や民間法律事務所、政府の法務部門などで経験を積み、連邦裁判所での職務に就く前に幅広い実務経験を有していました。
裁判官としての特徴・法理学
- テクスト主義・原則主義(originalism): ゴーシュは判例解釈において法文本来の意味や制定当時の意図を重視する立場をとることで知られ、アントニン・スカリア元判事と共通する法解釈のアプローチを持っています。
- 行政法への批判的姿勢: 行政機関に対する裁量(いわゆる「ディファレンス」)を制限すべきだとする立場を示しており、ChevronやAuerといった裁定慣行に懐疑的な意見を述べることが多いです。
- 独立性と予測不可能性: 保守的な立場をとることが多い一方で、特定の争点ではリベラル側の意見と一致することもあり、判決傾向が必ずしも単純に左右に分かれない点が特徴です。
最高裁および控訴裁での主な関与・重要判決
ゴーシュは最高裁在任中、いくつか注目される案件で主要な意見を書いたり、重要な異議を述べたりしています。代表的な例を挙げます。
- Bostock v. Clayton County(2020): 雇用差別に関する判決で、ゴーシュ判事はTitle VII(雇用における性別に基づく差別の禁止)を巡る多数意見を執筆し、性的指向や性自認に基づく差別も禁止されると判断しました。この判断は多くの法学者や市民から注目を浴びました。
- 行政機関に対する不寛容な態度: AuerやChevronといった裁判所の慣行を事実上見直すべきだと主張する意見や異議を繰り返しており、行政権の拡大に対して厳しい姿勢を示しています(例: Kisorに関連する争点などでの立場表明)。
- 労働組合・公共部門の案件: Janus v. AFSCMEなど、公共部門における労働組合費や表現の自由に関する重要案件では保守派の立場に加わることが多く、労働組合の強制的徴収に制限を与える判例形成に影響を与えました。
評価と論争
ゴーシュは保守派の司法哲学を体現する判事として高く評価される一方で、扶養義務や行政権限の縮小を巡る判断については批判もあります。上院での承認時には党派的な論争があり、指名過程は現代の最高裁指名における典型的な党派対立を反映しました。就任後はその法理学的立場に基づき、行政国家への歯止めや個人の権利保護を巡る問題で中心的な役割を果たしています。
私生活
私生活面では、家族とともに生活しており、裁判官としての公的役割とは別に私的な背景や宗教観などが公表されています。最高裁判事は終身在職であるため、ゴーシュの在任期間中に示す見解は今後の米国法・政策に長期的な影響を与えると見られています。
全体として、ニール・ゴーシュはテクスト主義・原則主義を基礎とし、行政の権限縮小や法の安定性を重視する判事として位置づけられ、公判での多数意見や重要な反対意見を通じて現代の米国司法に大きな影響を与え続けています。

