プリンス・ロジャース・ネルソン(Prince Rogers Nelson、通称プリンス)(1958年6月7日 - 2016年4月21日)は、アメリカのミュージシャン。ミネソタ州ミネアポリス生まれ。作曲家、シンガー、マルチインストゥルメンタリスト、プロデューサーとして幅広く活動し、ジャンルを超えた独自の音楽性で国際的な評価を得た。
プリンスはセクシュアルで挑発的な歌詞、ファンク・ロック、R&B、ソウル、ポップ、電子音楽を自在に融合させ、斬新なサウンドと革新的なプロダクションで知られる。通算で多数のアルバムとシングルを発表し、その世界的なレコード売上は推定で1億枚以上にのぼるとされる(集計には差異がある)。1993年から2000年にかけては、自身の芸名を発音不可能なシンボル(いわゆる「ラブ・シンボル」)に変更し、人々からは"The Artist Formerly Known as Prince"(かつてプリンスと呼ばれていたアーティスト)と呼ばれることがあった。
自身のアーティスト活動のほか、シーラ・E、カルメン・エレクトラ、ザ・タイム、ヴァニティ6など多数のアーティストの発掘・プロデュースやコラボレーションにも携わり、後進の育成やミュージック・ビジネスにも影響を与えた。
プリンスはキャリアを通じて高い評価と多くの受賞を獲得した。グラミー賞を複数回受賞し、映画『Purple Rain』によりアカデミー賞(作曲部門)を受賞、またゴールデン・グローブ賞も受賞している。ローリング・ストーン誌は、彼を「100 Greatest Artists of All Time」の27位にランク付け、2004年にはロックの殿堂入りを果たした。
2016年4月21日、プリンスはミネソタ州チャンハッセンにあるペイズリーパーク(Paisley Park)のレコーディングスタジオ兼自宅で、フェンタニルの過剰摂取により57歳で死亡した。捜査の結果、死因は偶発的なフェンタニル中毒と報告された。
生い立ちと初期の活動
1958年、ジャズ・ピアニストの父ジョン・L・ネルソンとヴォーカリストの母マティーのもとに生まれる。幼少期から音楽に親しみ、7歳でピアノを学び始め、10代で地元のバンドで活動。1970年代後半にソロ契約を結び、1978年にデビュー・アルバム『For You』を発表。若くして作詞作曲や演奏、プロデュースを自らこなす才能を示した。
音楽性と影響
- 多彩なジャンル融合:ファンク、ロック、R&B、ポップ、ソウル、電子音楽などを自在に組み合わせた。
- マルチインストゥルメンタリスト:ギター、ピアノ、ベース、ドラムほか多くの楽器を演奏し、自身のアルバムの大部分で演奏とプロデュースを担当。
- 革新的なプロダクション:シンセサイザーやドラムマシンを取り入れ、斬新な音像を作り出した。
- ステージ・パフォーマンス:セクシュアルでエネルギッシュなライブ・パフォーマンスにより強いカリスマ性を発揮。
代表作(主なアルバム・楽曲)
- 1978年『For You』 — デビュー作
- 1979年『Prince』
- 1980年『Dirty Mind』 — 批評的評価が高い重要作
- 1982年『1999』 — 大ヒット作、同名のシングル「1999」も有名
- 1984年『Purple Rain』 — 映画サウンドトラック、代表作。「When Doves Cry」「Purple Rain」などを収録
- 1987年『Sign o' the Times』 — 多面的で評価の高い2枚組
- 1991年『Diamonds and Pearls』 — 商業的成功を収めた作品
- 2004年『Musicology』 — キャリア後期の代表作の一つ
代表曲としては「Purple Rain」「When Doves Cry」「Kiss」「Little Red Corvette」「1999」などがある。
映画・舞台・その他の活動
- 1984年映画『Purple Rain』で主演し、作品とサウンドトラックが大きな成功を収めた。
- 『Under the Cherry Moon』(1986)、『Graffiti Bridge』(1990)など映画制作や主演も行った。
- 若手アーティストのプロデュースやレーベル運営、ライヴ演出など多岐にわたる活動を展開した。
名義変更と著作権・契約問題
1990年代にはレコード会社(特にワーナー・ブラザーズ)との契約上の対立から、1993年に自身の名前を発音不可能なシンボルに変更した。この時期には契約やアーティストの権利に関する議論を喚起し、音楽業界やアーティストの自己決定権に影響を与えた。2000年頃に再び「プリンス」の名義を使用した。
受賞歴と評価
- グラミー賞:複数回受賞(受賞歴は複数部門にわたる)。
- アカデミー賞:映画『Purple Rain』のサウンドトラックによりアカデミー賞を受賞。
- ゴールデン・グローブ賞:映画音楽関連での受賞歴あり。
- ロックの殿堂:2004年に殿堂入り。
- 国際的評価:ローリング・ストーン誌などで歴史的な評価を受け、20世紀後半から21世紀初頭の主要アーティストとして広く認められている。
私生活
プライベートでは数回の結婚・パートナーシップがあり、子どもをもうけるなどの家族関係があった。死後も彼の遺した音源や未発表作品、ペイズリーパークの保存などを巡り関心が続いている。
死と遺産
2016年4月、ペイズリーパークで急逝。死因は偶発的なフェンタニルの過剰摂取と報告された。彼の死は世界中に大きな衝撃を与え、多くのアーティストやファンから追悼が寄せられた。音楽的遺産は現在も影響力を保ち、リマスターや未発表音源の発表、回顧展などを通じて次世代へ受け継がれている。
プリンスは音楽史において独自のスタイルとアーティストとしての独立性を示した稀有な存在であり、その革新性、プロダクション能力、ライブ・パフォーマンス、楽曲群は現在も高く評価され続けている。

