脳死とは何か:定義・診断基準・治療不能性と臓器提供の基礎知識
脳死の定義・診断基準、治療不能性から臓器提供までをわかりやすく解説。家族や医療現場の判断に役立つ基礎知識を網羅。
脳死とは、脳の働きが停止した状態を意味します。脳死は永久的なものであり、治療や回復はできません。どのような治療でも対応できません。脳死状態では、脳のどの部分も活動していません。脳のすべての部分が死んでおり、脳に酸素が流れず、脳のどの部分にも電気的な活動がありません。
脳は、私たちが生きていくために必要なすべてのことをコントロールしています。例えば、呼吸、体温、心拍数、その他多くの重要なことをコントロールしています。脳死状態になると、脳はこれらのことを一切コントロールできなくなります。脳死状態の人は、自分で呼吸をすることができません。また、目を覚ますこともできず、周囲の状況を認識することもできません。
脳死状態の人は、特別な機械や薬を使って生かすことがあります。例えば、医師が喉にチューブを入れ、人工呼吸器と呼ばれる機械で肺に酸素を送り込みます。このような機械は、他の臓器をしばらくの間生かしておくことができますが、脳の状態を良くすることはできません。最終的には、他の臓器も機能しなくなります。
脳死のより詳しい説明(病態と特徴)
病態:脳全体への血流や酸素供給が長時間途絶えたり、重篤な外傷や出血、重度の代謝障害や低酸素などにより、ニューロン(神経細胞)が不可逆的に障害される状態です。結果として大脳皮質や脳幹を含む脳の全領域が機能を失います。
主要な特徴:
- 自発呼吸の消失(自力で呼吸できない)
- 意識の完全喪失(刺激に反応しない)
- 脳幹反射の消失(対光反射、角膜反射、咽頭反射などが消失)
- 脳波や脳血流の検査で脳活動・血流が認められない
診断基準と検査
脳死の診断は慎重に行われ、取り除く必要のある可逆的な原因をまず除外することが重要です。典型的な診断手順は以下を含みます。
- 病歴と身体所見の確認:重篤な脳障害を来した原因や既往、投薬(鎮静薬、筋弛緩薬など)の有無、低体温や重度の代謝異常の存在を確認します。
- 神経学的検査:瞳孔対光反射、角膜反射、眼球運動反射(頭位変換試験や耳に氷冷水を入れる検査)、咽頭反射・咳反射の消失など脳幹反射の消失を確認します。
- 自発呼吸の有無(アプネア試験):一定の条件下で人工呼吸器を短時間外し、二酸化炭素の上昇に対して自発呼吸が誘発されるかどうかを観察します。危険を伴うため専門の手順で行われます。
- 補助検査(状況によって実施):脳波(EEG)で電気活動が消失しているか、脳血流を評価する脳血流シンチグラフィー、CT血流、MRI、脳血管造影、経頭蓋ドップラーなどで脳への血流がないことを確認する検査が用いられることがあります。
注意点:深部低体温や鎮静薬による抑制、重篤な代謝障害は一時的に同様の所見を示すことがあるため、それらを除外してから診断します。診断の手順や必要な観察時間、検査項目は国や地域、医療機関ごとに定められた基準があるため、担当医がその基準に従って判断します。
脳死と「治療不能性」について
回復の可能性:脳死は不可逆的であり、脳そのものの回復は期待できません。医学的な意味での「生きている脳の復活」は起こりません。従って、脳死と診断された場合、その脳の機能を回復させる目的の治療は行われません。
生命維持装置の役割:人工呼吸器や点滴などで心拍や呼吸を外的に維持することは可能であり、これにより短期間は心臓や他の臓器を機能させておくことができます。これは臓器提供を考慮する際に重要になる場合がありますが、脳の機能回復にはつながりません。
脳死とその他の状態(昏睡・植物状態など)の違い
- 昏睡(coma):意識がない状態ですが、脳の一部の機能は残っていることがあり、回復する可能性もあります。
- 植物状態(persistent vegetative state):自発的な目の開閉や睡眠・覚醒サイクルは見られるが意識や認知機能が回復していない状態で、脳幹の一部機能が残るため脳死とは異なります。
- 脳死:脳全体(大脳皮質と脳幹を含む)の機能が永久に消失しており、医学的に回復不可能な状態です。
臓器提供(臓器移植)に関する基礎知識
脳死状態の患者からは、条件が整えば臓器提供(心臓、肺、肝臓、腎臓など)が行われることがあります。臓器提供には以下の重要な点があります。
- 同意:臓器提供は本人の意思または家族の同意が必要です。国や地域によって同意方式(オプトイン、オプトアウト)が異なります。日本では本人の意思表示や家族の同意を重視する運用が一般的です。
- 適合検査と迅速な管理:臓器が移植に適するかどうかを判定する検査が行われ、最適な状態で臓器を維持するための集中管理が行われます。
- 倫理・法的配慮:脳死診断と臓器移植は、透明性・適正な手続き・家族への説明が求められます。法律やガイドラインに従って実施されます。
家族への対応と倫理・法律面
脳死と診断された場合、家族は精神的にも大きな負担を受けます。医療者は丁寧な説明と支援を行い、宗教的・文化的背景や家族の価値観を尊重することが重要です。手続きや意思決定に関しては法的な規定や医療機関の方針が関わるため、ケースごとに専門家(医師、看護師、ソーシャルワーカー、臓器移植コーディネーターなど)が関わって説明を行います。
臨床での管理と合併症
人工呼吸器や循環補助により一時的に臓器が機能していても、感染症や多臓器不全、代謝異常などが起きることがあります。臓器提供を行う場合は、これらを管理して臓器の機能を維持する必要があります。
よくある質問(FAQ)
Q:脳死はすぐに「死亡」と言えるのですか?
A:医学的には脳死は「生命活動の中枢である脳が不可逆的に失われた状態」であり、多くの国や地域で法律的な死亡と認められています。ただし、法的取り扱いは国や地域ごとに異なります。
Q:家族が同意しなければ臓器提供はできませんか?
A:多くの地域で本人の意思表示が最優先ですが、本人の意思が不明な場合は家族の同意が求められることが一般的です。詳細は所属する国や地域の制度に従います。
Q:見た目は「生きている」のですか?
A:人工呼吸器などで胸の上下や心拍が続いているように見えることはありますが、脳の機能は完全に失われており、意識や感覚はありません。
最後に
脳死は医学的に重要かつセンシティブな概念です。診断やその後の対応には専門的な知識と慎重な手続きが必要です。疑問や不安がある場合は、担当の医師や医療チームに遠慮なく質問し、説明を受けることをおすすめします。
診断
脳死の診断は、医師が患者を診察することで行います。脳幹で制御される反射をチェックし、自力で呼吸できるかどうかを確認します。脳死状態であれば、医師は以下のことを確認します。
- 反射神経がない(例えば、医師が喉の奥を触っても吐き気がしない)。
- 明るい場所でも暗い場所でも、その人の瞳孔の大きさは変わらない
- 医師が何か痛いことをしても、本人が動かない、反応しない(皮膚をつまむなど)。
- 自分で呼吸をしようとしない人
脳死と診断する前に、医師は脳死と思われる他の問題がないかどうかを確認します(例えば、体温が非常に低い、鎮静剤の過剰摂取など)。そして、通常、6時間から24時間待ってから、患者さんの脳に活動の兆候がないことを確認します。その後、2人目の医師が呼ばれ、同じ検査を行います。両方の医師が同意すれば、その患者は正式に「脳死」と診断されます。
即時診断
場合によっては、医師は脳死をすぐに診断できる他の検査を行うこともあります。これらの検査には以下のものがあります。

脳は、光に反応して瞳孔の大きさを変えるようになっています。瞳孔が変化しない場合は、脳が正常に機能していないことを示しています。
コーズ
脳死は、脳全体の損傷が原因で起こります。最も一般的な原因は
脳に腫れや出血があると、脳への血流が途絶え、脳幹を押してしまいます。悪化すると、脳幹が押しつぶされてしまうこともあります。
質問と回答
Q:脳死とは何ですか?
A:脳死とは、脳が永久に機能しなくなり、治すことも元に戻すこともできない状態を指します。
Q: 脳死に対する治療法はあるのですか?
A:いいえ、脳死を改善する治療法はありません。
Q: 脳死状態になるとどうなるのですか?
A: 脳死状態になると、脳のどの部分にも活動がなくなります。脳のどの部分も死んでいて、脳に酸素が流れず、脳のどの部分でも電気的な活動がありません。
Q: 脳は私たちの体の何をコントロールしているのですか?
A:脳は、呼吸、体温、心拍数など、私たちが生きていくために必要なすべてのことをコントロールしています。
Q:脳死状態の人は自分で呼吸ができますか?
A:いいえ、脳死者は自分で呼吸することはできません。
Q:脳死状態の人は、目を覚ましたり、周囲の状況を把握したりすることができますか?
A:いいえ。脳死状態の人は、目を覚ましたり、周囲の状況を把握したりすることはできません。
Q: 特別な機械や薬を使って、脳死状態の人を生かすことはできるのですか?
A:はい、医師が特別な機械や薬を使って、脳死状態の人を生かすことができる場合があります。しかし、これらの機械は、しばらくはその人の他の臓器を生かしておくことができますが、脳を回復させることはできず、最終的にはその人の他の臓器も動かなくなります。
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