アフマディヤ(احمدیہ Ahmadiyya)は、ミルザ・グーラム・アフマド(Mirza Ghulam Ahmad)によって19世紀末に始められたイスラム改革運動です。アフマドは自らを約束されたメシア(マシーハ)かつマフディであり、さらにイスラムのムジャディッド(時代の改革者)であると主張しました。運動は1889年に公式に組織化され、アフマディヤ・ムスリム・ジャマアト(共同体)と名づけられました。ミルザ・グーラム・アフマドは、イスラムの教えを原点に立ち返らせ、暴力的・政治的行為よりも道徳的・精神的な改革を強調することを目指しました。
起源と初期の展開
アフマディヤ運動は当時の英領インドで始まり、インド亜大陸が現在のインド、パキスタン、バングラデシュに分裂する以前から活動していました。アフマドは、自分の使命がイスラムの本来の教えを回復し、誤解や迷信を正すことにあると述べました。彼の死後、指導体制や教義の解釈を巡って内部対立が生じ、1914年に運動は大きく2つのグループに分かれます。
分派と組織
主な分裂は次の二つです。
- アフマディヤ・コミュニティ(Ahmadiyya Muslim Community):この派はカリフ(カリフ)制を維持し、ミルザ・グーラム・アフマドを約束されたメシアかつ非立法的な預言者として受け入れます。国際本部は現在イギリスのロンドンにあり、世界各国で組織的な布教・社会活動を行っています。歴代のカリフには、初代のHakim Noor-ud-Din(ハキム・ヌールッディーン)、第二代のMirza Basheer-ud-Din Mahmood Ahmad(ミルザ・バシールッディン・マフムード・アフマド)などがいます。現在の世俗的な活動拠点や宗教的指導はこの組織に属しています。
- ラホール・アフマディヤ運動(Ahmadiyya Anjuman Isha'at-i-Islam, AAIIL):この小さな派閥は、ミルザ・グーラム・アフマドを尊敬するが、彼を預言者とは見なさず、主流イスラムに近い立場をとります。彼らは後継者問題(誰が次の指導者になるべきか、どのように選ばれるか)について異なる見解を持ち、国際本部は創始地のパキスタンのラホールに位置します。
主要な教義と信条
アフマディヤ運動の教義にはいくつかの特徴があります。主な点を挙げると:
- 自分たちを正当なムスリムと考え、ムハンマドを最後の法を受け継ぐ預言者(「預言者の印章」)と認めつつ、ミルザ・グーラム・アフマドを「非立法的な」預言(預言的啓示を受けるが新たな宗教法をもたらさない)として解釈する立場を取る派と、彼を預言者とは見なさない派とがあります。アフマディヤの多くは、クルアーン33:40に関する解釈で独自の立場を示しています。
- イエス(イーサー)に関しては、主流イスラムからの伝統的な「肉体的な天からの再臨」説を否定する立場が特徴的です。多くのアフマディヤ信者は、イエスは十字架で死なずに生き延び、インド地方を訪れてそこで自然死したとする説を支持する者もいます(この説には地域的・歴史的議論があります)。そのため「イエスの死と帰還」を巡る見解が論争の対象になります。
- ジハードについては、暴力的・軍事的手段よりも
精神的・道徳的な努力
(大ジハード)を強調する傾向にあります。彼らは通常、宣教(ダーワ)と社会奉仕をジハードの主要な形と考えます。
組織運営と活動
アフマディヤ・コミュニティは中央集権的な指導体制(カリフの下に諮問機関や地域組織)を持ち、宣教、教育、人道支援に注力しています。世界中の主要言語でのクルアーン翻訳、24時間放送の衛星テレビ(MTA1、MTA2、MTA3、MTAアフリカ等)を通じた情報発信、学校や無料診療所、災害救援活動などを行っています。第4代カリフのハズラト・ミルザ・タヒール・アフマド(Mirza Tahir Ahmad)は、特に欧米での布教と教育、ヘルスケアの整備に貢献しました。
規模と国際展開
アフマディヤ・コミュニティは現在、世界およそ190カ国で活動を行っているとされます。一方、ラホール・アフマディヤ運動は比較的小規模で、約17カ国で組織的に活動していると報告されています。いずれの数字も集計方法によって異なりますが、世界中に広がる信者・支援者のコミュニティが存在します。
論争・迫害
アフマディヤ運動は多くのムスリム地域で論争と対立の対象となってきました。主な論点は、ミルザ・グーラム・アフマドの預言的主張と、イエスの帰還に関する見解、クルアーン解釈の相違などです。とりわけパキスタンでは、法的・社会的な差別と迫害が深刻です。1974年、パキスタンの国会はアフマディヤを非ムスリムとして扱う決議を採択し、さらに1984年の「Ordinance XX」などにより、アフマディヤが「イスラム」として宗教的表現を行うことを制限する法律が制定されました。これにより、多くのアフマディヤ信者が国外へ移住したり、迫害や暴力の対象となる事例が報告されています。
社会貢献と文化的影響
アフマディヤは宣教活動に加え、教育・医療・人道支援を重視してきました。各国で学校、診療所、孤児院、災害救援プロジェクトを運営し、現地社会との協力や相互理解の促進に努めています。また、翻訳・出版活動やメディア発信を通してイスラム教に関する自らの見解を紹介しています。
まとめ
アフマディヤは19世紀末に始まったイスラム内の改革運動であり、ミルザ・グーラム・アフマドの教えを中心に発展しました。運動内部にはカリフ制を維持するアフマディヤ・コミュニティと、より主流派イスラム寄りのラホール・アフマディヤ運動という主要な分派が存在します。教義や歴史的解釈を巡って論争が続く一方で、宣教・教育・医療などの形で国際的な社会貢献も行っており、世界各地で活動を展開しています。


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