スイスのカントン(州)とは:歴史・自治・連邦制度の概要
スイスの26カントンの歴史と自治、連邦制度の仕組みをわかりやすく解説。起源から現代の権限配分や独自制度まで一目で理解。
カントン(英語では「canton」、日本語では州や県に近い訳語が用いられる場合もあります)は、スイスを構成する26の政治的単位です。これらは制度的にはアメリカの州に似ており、アメリカの各州と同様に広い自治権を持っています。
歴史の概要
中世以来、現在のスイス領域には諸侯や都市が連合を組む形で独自の共同体(同盟)が存在し、現在の多くのカントンはその流れを汲んでいます。特にウリ州、シュヴィーツ州、ウンターヴァルデン州(ニドヴァルデンとオブヴァルデンを合わせてウンターヴァルデンと呼ぶ)は、初期の連合をなした地域であり、これらをまとめてウルカントン(Urkantone)と呼ぶことがあります。ウルカントンは1291年の伝統的な建国年以来、スイスの核となってきました。
近代国家としてのスイスは、19世紀中頃に至るまで各カントンがほぼ独立した存在で、各自が独自の軍隊や資金を持って運営されていました。カトリック系諸州と自由主義諸州の対立は1847年の短期的な内戦(ソンデルブント戦争)にまで発展しましたが、その後1848年に連邦憲法が成立して連邦国家としての基礎が築かれました。以降もカントンは大きな自治権を保持しつつ、連邦の枠組みに従う形で現代のスイスが成り立っています。
ジュラ州は、比較的新しいカントンで、1970年代にベルン州からの分離をめぐる住民投票と運動が続き、1978年の住民投票の結果を受けて、1979年1月1日に正式に新しいカントンとして発足しました。分離をめぐる対立や緊張は当時社会問題になりました。
特別扱いのカントン(いわゆる「ハーフカントン」)
バーゼル・シュターット州、バーゼル・ランズシャフト州、アッペンツェル・インナーローデン州、アッペンツェル・アウセルローデン州、オブヴァルデン州、ニドヴァルデン州は歴史的経緯から、連邦レベルで「半州(ハーフカントン)」と呼ばれて扱われてきました。具体的には、連邦議会上院(上院に相当する「カウンシル・オブ・ステーツ」)への代表数や、憲法改正などでカントンの賛成数を数える際に扱いが異なります。1999年の連邦憲法改正で「ハーフカントン」という用語は整理されたものの、上記の代表数や投票の取り扱いなど歴史的な違いは現代でも残っています。
自治と連邦制度(連邦主義)
スイスの政治制度は連邦主義(地方分権)を基礎にしており、各カントンは高い自治権を有します。地方の基礎単位である自治体とカントンはいずれも幅広い自主決定権を持ち、連邦は全土に共通する基本的枠組みや基準を定めますが、その運用や具体的な制度設計はカントンや自治体に任されています。
全てのカントンは独自の憲法を持っています憲法は州の最高法規です。カントン憲法に基づき、教育、警察、福祉、地方税制、都市計画など、多くの分野で独自の法律や規則を定めています。これにより、スイス国内には26の異なる学校制度や、カントンごとに異なる税率・医療制度の運用などが存在します。時にはこの多様性が生活上の混乱や複雑さを招くこともありますが、同時に各地域の実情に合った柔軟な政策運営を可能にしています。
また、スイスの政治文化には直接民主制が深く根付いており、国・カントン・自治体レベルで住民発議や国民投票が頻繁に行われます。これにより、カントンの政策は住民の意思が強く反映されやすくなっています。
具体例:薬物規制の違い
例として薬物に関する法律を挙げると、乱用薬物に関しては連邦法で規制されています。処罰の範囲や量刑の目安は連邦法で定められているものの、現場での対応や軽微な事案に対する処置は州(カントン)によってかなり異なります。一般に重い違反は1年から3年程度の懲役や罰金が科され得ますが、消費そのもの(売買や配布を伴わない個人的な使用)の扱いは必ずしも一様ではなく、軽微な事案では警察が警告や行政罰にとどめる場合もあります。そのため、あるカントンではマリファナを吸っても比較的軽い扱いで済むことがある一方、別のカントンでは厳しく処罰されることもあり得ます。
日常生活への影響と補足
- 税制競争:カントンごとに税率が異なり、同一企業や個人でも居住地によって税負担が変わるため、法人や個人の居住地選択に影響します。
- 言語と文化:カントンによって公用語(ドイツ語、フランス語、イタリア語、ロマンシュ語)が異なり、教育や行政サービスもその言語圏に合わせて提供されます。
- 協調の仕組み:多様性を維持しつつ国内の一体性を保つため、カントン間協力や連邦レベルでの調整メカニズム(合同委員会や各分野の連絡会議など)が機能しています。
まとめると、スイスのカントンは歴史的背景に基づく強い自治権を持つ地域政治単位であり、連邦とカントンが役割を分担することで多様性と統一性を両立させる仕組みになっています。制度の詳細や運用はカントンごとに異なるため、具体的な事項については該当カントンの公式情報を参照するのが確実です。

スイスの州
質問と回答
Q: スイスのカントン(州)とは何ですか?
A: カントンとは、アメリカの州に相当するもので、スイスには26のカントンがあります。
Q: 1848年、スイスの構造はどのように変化したのでしょうか?
A: 1848年、内戦の後、スイスは、各州が独自の軍やお金を持たないように構造を変更した。
Q: ウルカントンとは何ですか?
A: ウルカントンとは、1291年のスイス建国当初から存在した邦の一つである。ウーリ、シュヴィーツ、ウンターヴァルデン(ニドヴァルデンとオブヴァルデンを合わせたもの)などが含まれる。
Q: ジュラはいつから新しい邦になったのですか?
A: ジュラは、1978年にベルン州から暴動によって分離し、新州となった。
Q: スイスの特定の州は、投票に関して他の州とどう違うのですか?
A: バーゼル・シュタット、バーゼル・ランズシャフト、アッペンツェル・インナーローデン、アッペンツェル・アウサーローデン、オブヴァルデン、ニドヴァルデンは、歴史的理由により国政選挙の際に他の州と異なる投票数をカウントされる。
Q: スイスの自治体やカントンの自由度は、どの程度ですか?
A: 通常、スイスの法律では、連邦レベルの一般的な規則のみが定められており、細かい規則は、個々のカントンが自由に決めることができるため、自治体やカントンの自由度はかなり高いです。
Q: スイスの州によって薬物乱用の罰はどのように違うのですか?
A: 薬物乱用は連邦法違反とされていますが、州によって罰金刑を科すところもあれば、軽いケースでも実刑を科すところもあり、その厳しさには大きな差があります。
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