概要
電気式多連車(EMU)は、複数の車両が恒久的または半恒久的に連結された旅客列車で、外部の電力供給から電力を受け取り、複数の車両に牽引機器を分散して搭載している。機関車けん引列車とは異なり、EMUでは分散動力方式のため、多くの車両、あるいは全車両が牽引力の一部を担う。EMUは、多連車の一形態であり、動力源が電気である点が特徴である。
受電と給電方式
EMUへの電力は外部から供給され、もっとも一般的なのは架空電車線方式のパンタグラフや、地上側の第三軌条である。近年の一部システムでは、短い無電区間に対応するため、地上給電レールや車上蓄電装置を用いる場合もある。典型的なEMUは、パンタグラフや集電靴で電流を取り込み、それを牽引電動機や車内設備で使えるよう変換する。一般名称としてのelectric multiple unitは、専用の機関車ではなく電力が動力源であることを強調している。
設計と主な構成要素
EMUの編成は、短い2両編成から、長編成の通勤列車や高速列車まで幅広い。主な構成要素には、運転台を備える先頭車、牽引電動機とインバータを搭載した電動車、動力を持たない付随車、台車、そして旅客設備がある。現代のEMUでは、電力を供給側へ戻す回生ブレーキや、各軸への出力を調整するコンピュータ制御の牽引制御が導入されることが多い。機器配置や車内設備は運行目的によって異なり、通勤用EMUは立席スペースと素早い乗降を重視し、地域輸送用や高速EMUでは、より高い快適性や荷物スペースが確保される。
歴史と発展
EMU技術は、19世紀末から20世紀初頭にかけて進んだ鉄道電化と並行して発展し、都市交通や郊外ネットワークの拡大とともに急速に広がった。電化によって、蒸気機関や初期のディーゼル動力よりも高頻度運転と加速性能の向上が可能になり、地下鉄、通勤路線、さらには一部の都市間路線でもEMUの採用が進んだ。時代とともに、電力電子、軽量材料、安全装置の進歩により、EMUの運行範囲は、密度の高い都市地下鉄から長距離の高速サービスまで広がっている。
用途・例・バリエーション
EMUは、地下鉄や快速輸送、郊外通勤路線、空港連絡線、そして多くの地域輸送や高速サービスで広く用いられている。世界各地に例があり、シンガポールMRTをはじめとする都市鉄道網では、EMU編成が一般的に運用されている。派生形には、ライトレール車両や電気式多連車の高速列車があるが、車両設計や車内装備は走行距離に応じて異なる。
利点・制約・他形式との違い
- 利点: 加速・減速が速いこと、分散動力により粘着性能が高いこと、回生ブレーキによる省エネルギー、そして専用機関車を必要としない運用上の柔軟性が挙げられる。
- 制約: 電気インフラへの依存、牽引機器が複数の車両に分散することによる保守の複雑さ、また短距離運用向けの編成では、トイレや食事提供設備が限られる場合がある。
- 違い: EMUは、動力源が異なるという点でディーゼル多連車(DMU)と区別され、牽引力の配置と単一の専用機関車が存在しない点で、機関車けん引列車とも異なる。
総じて、EMUは電化が可能な鉄道における主要な旅客輸送形態であり、停車駅の多い高頻度運転や高輸送力サービスで、その効率性と性能が高く評価されている。