レ・フォーブフランス語で野獣」の意)は、画家のアンリ・マティスやアンドレ・ドランを中心とした20世紀初頭の現代美術運動で、一般に「フォーヴィスム(フォーヴィスム=野獣派)」と呼ばれる。ポール・ゴーギャンやゴッホの鮮やかな色彩表現に強く影響を受けた画家たちが、多彩で野性的な色使いを前面に押し出したのが特徴である(文章中のゴーギャンがの表記も参照)。

成立と名称の由来

「フォーヴ(fauves)」という呼称は、1905年のサロン・ドートンヌ(秋のサロン)で美術評論家ルイ・ヴォーシェル(Louis Vauxcelles)が、古典的な彫刻作品のそばに並んだ派手な絵画群を見て「Donatello chez les fauves(ドナテロが野獣たちの中に)」と評したことに由来する。以降、批評家側の揶揄的な呼び名がそのまま運動名として定着した。

活動期間と展覧会

彼らが一つのグループとして密接に活動したのは主に1905年から1907年頃の数年間で、この間に数回の共同出品や展覧会が行われた。もっとも有名なのは1905年のサロン・ドートンヌでの衝撃的な出品で、以降も数回のサロンや個展を通して注目を集めた。フォーヴィスム自体は短命で、1910年前後には各人が別の方向へ展開していったが、その影響は以降のモダンアートに広く残った。

主要作家

  • アンリ・マティス — フォーヴィスムを代表する存在で、色彩と装飾性を追求した作品で知られる。
  • アンドレ・ドラン — 鮮烈な色面と力強い構成で知られ、風景画などで大きな成果を上げた。
  • モーリス・ド・フラマン(モーリス・ド・ヴラマンク)キース・ヴァン・ドンゲンラウル・デュフィらも重要な仲間である。
  • また、のちにフォーヴィスムの影響を受けた国外の画家も多く、たとえばロシアのアリスタルク・レンチュロフがもその好例である。

表現の特徴

  • 大胆で非自然的な色彩 — 実際の対象の色にとらわれず、感情や画面のリズムを重視して自由に色を置く。
  • 平面的な構成と強い輪郭 — 伝統的な遠近法や陰影を捨て、明確な輪郭線と平坦な色面で形を表すことが多い。
  • 粗い筆致と即時性 — 筆触を生かした描き方で、制作の生々しさや躍動感を共有する。
  • 装飾性と図案性 — モチーフを単純化して模様的に扱い、壁紙や織物的な美しさを画面に取り入れる傾向がある。

評価と影響

当初は「下品」「粗暴」といった批判を受けたが、後に色彩表現の可能性を拓いた重要な前衛運動として高く評価されるようになった。フォーヴィスムはドイツ表現主義や様式化された抽象絵画、20世紀の色彩理論や装飾芸術などに大きな影響を与え、マティスらの探究はその後の近代美術の発展に決定的な役割を果たした。

注意点・誤解されやすい点

フォーヴィスムは厳密な「学校」や長期間の組織的な運動ではなく、一時的に同じ志向を持った画家たちが集まって展覧会を行ったことに由来する。したがって「フォーヴィストとされる作品」がすべて同質というわけではなく、個々の作家はその後それぞれ異なる道を歩んでいる。

以上がフォーヴィスム(レ・フォーブ)についての概説である。基本的な特徴や主要人物、歴史的背景を踏まえると、20世紀美術史における色彩表現の転換点としての重要性がよくわかる。