周波数変調(FM)とは?仕組み・用途・AMとの違いを解説
周波数変調(FM)の基本原理から用途、AMとの違いまで図解でわかりやすく解説。音質や伝播特性、放送・無線での実用例も丁寧に紹介。
通信や信号処理において、周波数を変化させて搬送波上に情報を伝達するのが周波数変調(FM)です。これは、変調の際に搬送波の周波数を変える方式であり、同じく情報を伝える手法の1つである振幅変調(AM)が搬送波の振幅を変化させるのとは対照的です。この種の変調は、放送やその他の無線伝送に広く用いられています。
放送分野では、Frequency ModulationをFMと略して呼ぶことが一般的です。音声をアナログで伝送する場合、FMは雑音に強く、特にノイズによる音質劣化が小さいため、一般にAM信号よりも高音質に聞こえます。ただし、FM放送は比較的高い周波数帯(多くの国で約88–108 MHz、日本では主に76–95 MHz)を使うため、低い周波数のAMのように夜間のスカイウェーブ(イオノスフィア反射)で遠距離へ届く性質は持ちません。高周波のため主に見通し線(ラインオブサイト)伝播になります。
多くのラジオ局はAMとFMの両方で放送を行うことがあり、実務的にはAMがトーク番組や広域カバレッジ向け、FMが音楽放送向けに使われることが多いです。FM放送では通常、ステレオ再生のために複数の成分を含む多重信号(MPX)が送られ、家庭用の左右2つのスピーカーで異なる音を再生できるようになっています。
仕組み(基本原理)
FMでは搬送波の位相の時間変化を通して周波数が変化します。搬送波を fc(中心周波数)、変調する音声などの信号を m(t) とすると、瞬時周波数 f(t) はおおむね次のように表せます:f(t) = fc + Δf·m'(t)/(規格化された形)という表現が使われます(実際の数学表現は定義による)。ここで重要なパラメータは:
- 周波数偏移(Δf):搬送波が変動する周波数幅(ピーク偏移)
- 変調指数(β):β = Δf / fm(fmは変調信号の最高周波数)で、狭帯域FM(NBFM)か広帯域FM(WBFM)かの指標になります
スペクトル的にはFM信号は多数の側波帯(サイドバンド)を持ち、キャリア近傍に無数の成分が現れます。実用上の帯域幅はCarsonの規則で近似され、概算で帯域幅 ≒ 2(Δf + fm)とされます。
FM放送での具体的な仕組み(ステレオ、多重化)
FM放送の標準的なオーディオ多重(MPX)構造は以下のようになっています:
- 0–15 kHz:モノラル成分(L+R、左右共通の音声)
- 19 kHz:パイロット信号(ステレオ復調の同期用)
- 23–53 kHz:DSB-SC(抑圧搬送波二重帯)で符号化された差分成分(L−R)
- 57 kHz:!-- RDSへの参照リンクが元テキストにないため空白 -->データサービス(RDS)は一般に57 kHzのサブキャリアで伝送されます
放送では高周波のノイズに対する対策として、高域のSNR(信号対雑音比)を改善するためにプリエンファシス/ディエンファシス(例えば欧州は50 μs、米国は75 μs)が使われます。送信側で高域を強調(プリエンファシス)し、受信側で逆補正(ディエンファシス)を行うことで雑音の影響を低減します。
FMとAMの違い(利点・欠点)
- 雑音耐性:FMは振幅雑音(スパイクや電界変動)の影響を受けにくく、同じ受信条件でAMより良好な音質が得られることが多いです。これは周波数の揺らぎに情報を載せているためです。
- キャプチャ効果:FM受信機では複数の同一周波数の信号が存在する場合、より強い信号だけを受け取る傾向(キャプチャ効果)があり、干渉に対して有利な面があります。
- 帯域幅:FMは高音質を得るために帯域幅が広くなるため、周波数資源の効率はAMに比べ劣ることがあります。
- 伝播特性:AM(特に中波・短波)はイオノスフィア反射により遠距離伝播が可能ですが、FMは直進性が高く主に見通し伝播となるためカバー範囲が限定されます。
復調方法と用途
FM信号を元の音声に戻す(復調する)方式には、スロープ検波、Foster-Seeleyやラチオ検波器、位相同期回路(PLL)を用いた復調などがあります。現代の多くの受信機ではPLLベースやデジタルDSPを用いた復調が一般的です。
用途は放送以外にも、航空無線や船舶無線、業務用無線(無線機・トランシーバ)、無線音声通信、ワイヤレスマイク、遠隔計測(テレメトリ)、さらに音源合成(FMシンセシス)、デジタル系では近縁の方式として周波数偏移変調(FSK)がデータ伝送に用いられます。
まとめと注意点
周波数変調(FM)は雑音耐性と音質に優れるため音声放送で広く採用されていますが、帯域幅が大きく直進性が強いためカバレッジや周波数利用の面での制約があります。地域ごとの周波数帯や技術規格(プリエンファシス時間定数、偏移幅など)は異なるため、放送や無線機器の設計・運用の際には各国の規格・免許条件に従う必要があります。

音波、AM波、FM波の比較
質問と回答
Q: 周波数変調とは何ですか?
A: 周波数変調とは、通信や信号処理で使用される技術で、周波数を変化させることにより、搬送波上で情報を伝達することです。
Q: 周波数変調は振幅変調とどう違うのですか?
A:周波数変調は搬送波の周波数を変化させますが、振幅変調は振幅を変化させ、周波数は一定に保ちます。
Q: 周波数変調はどこでよく使われるのですか?
A:周波数変調は、放送などの無線業務でよく使われています。
Q: アナログ音声の伝送にFM信号を使用する利点は何ですか?
A:FM信号は、振幅変調(AM)信号よりも音質が良く、アナログ音声を伝送することができます。
Q: なぜFM信号はAM信号ほど遠くまで飛ばないのですか?
A: FM信号は、ケネリー・ヘビサイド層で跳ね返らない高い周波数を使用しているため、AM信号と比較して伝送距離が制限されています。
Q: ラジオ局はどのようにAMとFMの両方の信号を使用しているのですか?
A: ラジオ局は、AMをトークショーに、FMを音楽に使用することがあります。
Q:FM放送の差動信号とは何ですか?
A:FM放送では、2つのスピーカーから異なる音を出してステレオサウンドを作るために、差分信号が含まれています。
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