GABA(γ-アミノ酪酸)とは:抑制性神経伝達物質の定義と作用
GABA(γ-アミノ酪酸)の定義と作用を解説:中枢での抑制作用が神経興奮・筋緊張・睡眠や不安に与える影響を詳述。
GABAは、γ-アミノ酪酸(英: γ-aminobutyric acid)のことで、哺乳類の中枢神経系に存在する代表的な神経伝達物質の一つです。主に抑制性の神経伝達物質として働き、神経活動の過剰な興奮を抑える役割を担います。通常、興奮性のシナプス入力が神経細胞へ伝わると細胞は発火(興奮)しやすくなりますが、抑制性の神経伝達物質が放出されると、膜電位が過分極したり発火しにくくなったりして、全体としてネットワークの信号が抑えられます。
基本的な性質
化学的にはGABAはアミノ酸の一種ですが、いわゆる「α-アミノ酸」とは構造が異なり、また体内でタンパク質合成の材料としては用いられません。元の文にもあるように、GABAはアミノ酸でありながら、実務的には通常のアミノ酸とは区別して扱われます。GABAがタンパク質に組み込まれることはありませんし、タンパク質合成のためのコドンも存在しません。
受容体と作用機序
- GABAA受容体:イオンチャネル型(イオントロピック)受容体で、塩化物イオン(Cl−)のチャネルを開くことにより膜の過分極を引き起こします。ベンゾジアゼピン系、バルビツレート系、アルコール、一部の全身麻酔薬などがこの受容体に作用して、その抑制効果を増強します。
- GABAB受容体:代謝型(メタボトロピック)Gタンパク質共役受容体で、細胞内シグナルを介してカリウムチャネルを開いたりカルシウムチャネルを抑制したりして神経伝達を抑えます。筋緊張の抑制薬であるバクロフェンはGABAB受容体作動薬です。
- GABAC(またはGABAA-ρ)受容体:主に網膜などに多く見られるイオンチャネル型で、GABAAとはやや異なる薬理学的性質を示します。
合成と代謝
GABAは主に興奮性アミノ酸であるグルタミン酸から、酵素グルタミン酸脱炭酸酵素(GAD)により合成されます。この反応にはピリドキサールリン酸(ビタミンB6)が補酵素として必要です。代謝は主にGABAトランスアミナーゼ(GABA-T)で行われ、最終的にはクレブス回路(TCA回路)に入る代謝経路につながります。GABAの分解を阻害する薬(例:ビガバトリン)はGABA濃度を上昇させます。
生理的役割
- 中枢神経系での興奮抑制により、過剰な発火や同期化(てんかん発作など)を防ぐ。
- 筋緊張の調節(ヒトにおいて直接関与)。
- 発達過程での役割:発達初期には細胞内クロライド濃度の高低によりGABAが興奮性に働くことがあり、成熟とともに抑制性へと“スイッチ”する(輸送体NKCC1やKCC2の発現変化が関与)。
- 末梢臓器や免疫系、腸管などでもGABA作動性の機構が観察され、代謝や免疫応答に影響を与えることが示唆されています。
- 昆虫類では、GABAが興奮性の神経受容体にのみ作用するなど、種によって作用様式に違いがあります。
臨床的意義と薬理
GABA系は多くの神経精神疾患や神経症状に関与します。主な関連は以下の通りです。
- てんかん:GABA作用を増強する薬は抗てんかん効果を持ちます(例:バルビツレート、ベンゾジアゼピン、ビガバトリン)。
- 不安障害・不眠:ベンゾジアゼピン系薬剤はGABAA受容体を増強して抗不安・鎮静効果を示します。
- 筋緊張亢進(痙縮):バクロフェン(GABAB受容体作動薬)が用いられます。
- 再薬理学的介入:チアガビン(GABA再取り込み阻害薬)、ビガバトリン(GABA分解酵素阻害)、ガバペンチン/プレガバリン(直接GABA作動薬ではないがGABA系に関連した症状を改善)など。
測定・補足情報
GABAの濃度は血漿や脳脊髄液で測定できますが、脳内局所のGABA活性を直接反映するとは限りません。臨床や研究ではHPLCや質量分析、または磁気共鳴分光法(MRS)を用いて測定されます。経口GABAサプリメントの脳内移行性は限定的であり、効果については議論があります。
まとめと注意点
- GABAは中枢神経系で主要な抑制性神経伝達物質として機能する。
- 受容体サブタイプ(GABAA, GABAB, GABAC)により作用機序や薬理学的制御が異なる。
- グルタミン酸から合成され、GABA-Tなどで代謝される。ビタミンB6は合成に必須。
- 生理的・臨床的に重要であり、てんかん、不安、不眠、痙縮など多くの状態で治療標的となる。
- 化学的にはアミノ酸に分類されるが、タンパク質に取り込まれることはない(元の本文の指摘を補足)。
質問と回答
Q: GABAとは何ですか?
A: GABAとはγ-アミノ酪酸のことで、哺乳類の中枢神経系に存在する神経伝達物質です。
Q: GABAの働きは何ですか?
A: GABAは抑制性の神経伝達物質で、人間や他の哺乳類の中枢神経系にあるニューロンがどれだけ刺激されるかを調節しています。神経系全体の神経細胞の興奮性を調節する役割を果たし、ヒトの筋肉の緊張を調節することに直接関与しています。
Q: GABAは中枢神経系でどのように働いているのですか?
A: GABAは、神経細胞が受け取るインパルスを抑制し、全体として信号を弱める働きがあります。
Q:GABAが昆虫類に及ぼす影響とは?
A: GABAは昆虫類の興奮性神経受容体にのみ作用します。
Q:GABAはアミノ酸なのですか?
A:はい、化学的にはGABAはアミノ酸の一種です。
Q: なぜGABAはアミノ酸と呼ばれることが少ないのですか?
A: GABAがアミノ酸と呼ばれることが少ないのは、GABAがαアミノ酸ではなく、タンパク質に取り込まれないからです。
Q: GABAは科学や医学の世界ではどのような意義があるのでしょうか?
A: GABAは、ヒトを含む哺乳類の神経興奮を制御する重要な神経伝達物質であり、筋緊張の調節に直接関与していることから、科学や医学の分野で重要視されています。
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