ゴースト・イン・ザ・マシンとは?ライルの心身二元論批判とカテゴリー・ミス解説
「ゴースト・イン・ザ・マシン」概念をライルの批判と「カテゴリー・ミス」含め分かりやすく解説、心身二元論の誤謬を読み解く入門ガイド。
ゴースト・イン・ザ・マシンとは、哲学における比喩である。哲学者ギルバート・ライルは、心を「機械の中の幽霊」と呼び、脳とは別物であるとする考え方が「公式教義」として間違っているとした。この表現は、心を独立した非物質的実体(いわゆる「魂」や「精神」)として、身体や脳とは別の場所に存在すると捉える見方を皮肉ったものとして広く知られている。
ライルの批判のポイント
ライルはデカルト的な心身二元論を「公式教義」(the official doctrine)と呼び、その根底にある「心=物質とは別個の実体」という仮定を批判した。ライルによれば、こうした立場は心的事象を「内面にある隠れた実体」として扱い、観察可能な行動や能力の説明を避けてしまう。そのため心を説明する際に不必要な仕分け(実体の二重化)を生み出し、説明力を損なう、というのがライルの主張である。代わりにライルは、心的な述語(例:「信じる」「望む」「知っている」)は行動や行動の傾向(dispositions)を表すとし、いわゆる哲学的行動主義的立場に近い説明を提示した。
カテゴリー・ミス(category-mistake)とは
ライルが問題にした中心的概念がカテゴリー・ミス(カテゴリーの誤り)である。これは、ものごとを論理的・概念的な型(カテゴリー)に応じて区別すべき場所で、別の型の問いや述語を誤って適用してしまうことを指す。ライルの有名な例は次のようなものだ。
- 大学を訪れた旅行者が、各カレッジや講義室、図書館を見学した後で「あれらは見たが、大学はどこにあるのか?」と尋ねる──ここでの誤りは、大学をカレッジや建物と同じ「物理的な一つのもの」として探してしまう点にある。大学は個々の建物と並列の実体ではなく、組織や制度全体を指す概念であり、質問自体がカテゴリーを取り違えている。
- 「チームスピリットはどこにあるのか?」と聞くのも同様の誤りで、チームスピリットを物理的な位置にある独立した実体だと扱うのはカテゴリー・ミスである。
ライルは、心を身体や脳の「内部に存在する別個の物」として扱うことを同種のカテゴリー・ミスだと論じた。つまり「心が脳の中にあるどこかに存在するはずだ」と問い直すこと自体が、誤った問いの立て方だというわけである。
具体的な影響とその後の議論
ライルの議論は20世紀の心の哲学に大きな影響を与えた。彼の指摘は、心的用語を行動や行動傾向として再解釈する見方(分析的行動主義や機能主義への橋渡し)を促し、心をめぐる問いを新たな観点から考え直す契機となった。
一方でライルの立場には批判もある。主な批判点は以下の通りである:
- 主観的経験(クオリア)の問題:行動記述や傾向だけでは、赤を見るときの「主観的な感じ」や痛みの「内的な質」を十分に説明できないという反論がある。
- 神経科学の知見:脳の特定の活動と意識経験との対応が示されるにつれ、単純な行動への還元だけでは説明しきれない側面が露呈したとする立場もある。
- 用語の多義性:心的述語が示す機能や様態は多様であり、一律に「行動の傾向」として扱うことが適切でない場合もある。
現代の位置づけ
現代の心の哲学では、ライルの批判は依然重要だが、それだけで問題が解決したわけではない。心の本性をめぐる立場としては、ライル的な行動主義や分析的視点のほかに、心脳同一説、機能主義、還元主義、排除主義、そして意識研究に基づく実験的アプローチなど多様な見解が並ぶ。ライルは「心を幽霊のような独立実体と見るのは誤りだ」と指摘したが、同時に「心は何か/どのように説明されるべきか」という問いは現在も活発に議論され続けている。
まとめ:「ゴースト・イン・ザ・マシン」は、心を物理的身体や脳とは別の幽霊のような実体と見なす見方を批判する比喩であり、ギルバート・ライルが提唱したカテゴリー・ミスの概念は、心の説明における誤った問いの立て方を明らかにした。ライルの指摘は心の哲学に重要な示唆を与えたが、主観的経験や神経科学の成果といった問題を巡ってその有効性や限界が議論され続けている。
質問と回答
Q: ゴースト・イン・ザ・マシーンとは何ですか?
A:「機械の中の幽霊」は哲学における比喩である。
Q:哲学者ギルバート・ライルは「機械の中の幽霊」を何と呼んだか?
A: ギルバート・ライルは心を「機械の中の幽霊」と呼んだ。
Q: ライルが批判した間違った「公式教義」とは?
A: ライルが批判したのは、心が脳から分離しているという考えであり、それは誤った「公式教義」であった。
Q: ライルは誰の心身二元論に言及したのか?
A: ライルはルネ・デカルトの心身二元論に言及している。
Q: デカルトのような二元論ではどうなるのか?
A: デカルトのような二元論体系では、精神活動は身体活動と並行して行われるが、相互作用の手段は未知か推測にすぎない。
Q: ライルは心身二元論の考えを何と呼んでいましたか?
A: ライルは心身二元論の考えを「カテゴリーの誤り」と呼んだ。
Q: ライルによれば、カテゴリー・ミスの例とは何か?
A:ライルは「自動車は動力によって動く」というような言い方をカテゴリー・ミスの例として挙げた。
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