異翅目は、半翅目(はんしもく)に含まれる昆虫群で、世界に約4万が知られています。多様な生活様式をもち、農作物に被害を与える害虫から、他の昆虫を捕食して有益な役割を果たす種まで含まれる、代表的な昆虫群のひとつです。

名称はギリシャ語で「異なる翅(hetero = 異、ptera = 翅)」を意味し、その由来は多くの種が持つ独特の前翅構造にあります。前翅(ヘメリートラ、hemelytron)は基部が硬化し、先端が膜質になっている(半硬化)ため、和名である「半翅目」と関連します。種によっては前翅が完全に膜質であったり、翅が退化して飛べないものもあります。いずれも吻(刺吸型の口器)をもち、植物の汁を吸う種は農業害虫になりやすく、肉食性の種は他の害虫を捕食して天敵となります。

リンネ命名法では、異翅目は半翅目(Hemiptera)の亜目として扱われてきました。一方、現代の系統分類では「異翅目」という語を順位を伴わない未冠群や系統群として用いる場合もあります。分類の扱いは文献や研究者によって異なるため、文脈に応じて用語の意味を確認することが重要です(分類学では議論が続いています)。

形態的には、前述の半硬化した前翅、折りたたんで体の下に収める刺吸口、そして腹部側方にある臭腺(カメムシ類のにおい)などが特徴です。発育は不完全変態(卵→若齢(ニンフ)→成虫)で、ニンフは成虫に似た体型を持ち翅が未発達な段階で生活します。生態的には陸上・水面(アメンボ類)・樹上など多様な環境に適応しています。

主なグループと代表種

  • アサシンのバグ(サシガメ類:捕食性が強く、他の昆虫を捕らえて食べる種が多い)
  • 広葉樹に見られるカメムシ類(樹上性の種が多数)
  • 南京虫(トコジラミ類:衛生害虫として人家に影響を与える)・花に集まる昆虫
  • 作物の汁を吸って被害を与える植物食性の種(農業害虫)
  • ヨコヅナサシガメ、カボチャムシ、サツマイモムシなど(作物害虫や園芸害虫の例)
  • カメムシ(一般に目にする甲虫様の外見をした種群)
  • カメムシまたはカメムシ類とその近縁種(分類や呼称が重複する場合もある)

経済的・生態的意義と防除

異翅目には農作物の主要な害虫(例えば吸汁による果実の変形、ウイルス媒介など)と、天敵として利用できる捕食者の双方が含まれます。そのため、害虫対策では防除と同時に生態系サービス(天敵の保全)を考慮することが重要です。具体的な防除法としては発生源の除去、物理的捕殺、天敵の利用、必要に応じた農薬散布などが挙げられますが、作物や環境に応じた統合的防除(IPM)が推奨されます。

同定の際は、前翅の構造、口吻の位置と形、体の形状や臭腺の有無、生活場所(樹上・地上・水面)などを手がかりにするとよいでしょう。より詳しい分類や種の同定には専門書や標本観察、分子解析が有効です。