炭疽(たんそ)とは|人と動物の原因・症状・治療・予防

炭疽(たんそ)の原因・症状・診断・治療法と予防法を分かりやすく解説。動物からの感染リスクやワクチン情報、早期対策を紹介。

著者: Leandro Alegsa

炭疽たんそ)は、炭疽菌(Bacillus anthracis)による急性の感染症です。かつては「脾臓(ひぞう)熱の一種」と説明されることもありましたが、現在は主に家畜や野生動物、まれに人に発生する細菌感染症として扱われます。炭疽病は炭疽菌という 細菌によって引き起こされます。偶蹄類(ラクダやキリンのような蹄のある生き物)や牛、羊、ヤギなどの家畜で見られることが多く、感染源となる動物やその製品(毛皮、皮革、羊毛、肉など)を介して人に伝播します。芽胞は極めて耐久性が高く、土壌中や乾燥した物質中で長期間(年〜数十年、場合によっては何百年に相当することもあるとされる)生存します。

感染経路とリスク

  • 感染した動物や遺体、動物製品に直接触れることによる接触感染。
  • 感染した動物や製品に含まれる芽胞を吸入することで起こる吸入感染(危険性が高く重症化しやすい)。
  • 汚染された肉を生食・加熱不十分で摂取することによる消化管感染。
  • 注射薬の使用者が汚染された注射薬を注射した際に起こる注射関連の感染(近年報告あり)。

通常、人から人へ感染することはまれですが、医療現場での暴露や極めて稀な状況で可能性が指摘されることがあります。人間は通常、動物からこの病気をうつされます。

主な症状(感染形態別)

  • 皮膚炭疽(最も多く、軽症〜中等症): 初期はかゆみを伴う赤い小丘疹、やがて中央が黒色壊死する「黒色かさぶた(黒色壊死)」を形成。周囲に浮腫や痛みを伴うこともある。適切な治療で致死率は低い。
  • 吸入炭疽(重篤): 発熱、咳、胸痛、呼吸困難、急速な敗血症へ進行することがある。胸部X線で縦隔の拡大(縦隔腺や浮腫)が見られることがある。治療が遅れると致死率が非常に高い。
  • 消化管炭疽: 吐き気、嘔吐、激しい腹痛、下痢(血便を伴うことがある)、全身状態の悪化。未治療では重篤。
  • 注射関連炭疽: 皮膚症状に加え急速に全身感染をきたし、敗血症になることがある。

診断

  • 病歴(動物や動物製品との接触、作業歴、薬物注射歴など)と臨床所見の確認。
  • 血液、皮膚病変、喀痰、便などからの細菌培養および同定。
  • PCR検査や血清学的検査での確定診断。
  • 胸部X線やCTなど画像検査は特に吸入炭疽の評価に有用。

治療

炭疽は早期の治療が重要です。抗生物質で治療することができ、感染形態や重症度に応じて選択・併用されます。

  • 第一選択薬例:シプロフロキサシン(キノロン系)、ドキシサイクリン(テトラサイクリン系)、ペニシリン系など。感染の時期や耐性リスクに応じて使用。
  • 重症例や敗血症では、複数の抗菌薬の併用や長期の投与が必要になることがある。
  • 毒素(毒素抗体)を標的とする抗毒素療法(免疫グロブリンやモノクローナル抗体)が重症例で使用される場合がある。
  • 呼吸管理、循環補助などの支持療法が重要。

予防と対策

  • 感染リスクの高い職業(獣医、畜産従事者、屠畜・皮革加工業者など)では、適切な保護具(手袋、マスク、防護衣)の使用が重要。
  • 汚染の疑われる動物や製品は適切に処理・焼却し、土壌や設備の消毒を行う。芽胞は耐性が高いため、専門的な除染が必要。
  • 感染が疑われる場合や曝露が確認された場合は、曝露後予防(曝露者への予防的抗生物質投与)やワクチン接種の検討が行われることがある。炭疽に対するワクチンも存在し、特定の高リスク者に対して用いられる。
  • 食品は十分に加熱して消費する。死骸や感染が疑われる動物の肉は食用にしない。
  • 公衆衛生当局への届出や報告が必要な場合が多く、アウトブレイク時には速やかな調査と封じ込めが重要。

注意点と受診の目安

  • 動物との接触後に前述の症状(特に皮膚の黒色壊死や呼吸困難、激しい腹痛など)が出たら、速やかに医療機関を受診してください。
  • 医療機関には、動物暴露歴や職業歴を必ず伝え、感染症対策を講じたうえで診察を受けてください。
  • 疑わしい病変に触れないこと。病変や検体の取り扱いは適切な装備と施設で行う必要があります。

まとめると、炭疽は単純な皮膚感染から致死的な吸入感染まで幅広い病像をとる感染症であり、早期診断・早期治療と適切な予防対策が重要です。疑いがある場合は専門の医療機関や公衆衛生当局に相談してください。

炭疽菌の種類

炭疽菌には89種類の系統(種類)がある。そのうちの1つであるエイムズ株は、2001年に生物兵器として米国に対して使用された。

歴史

アウトブレイク

1979年4月2日、冷戦時代に炭疽菌を製造していたスベルドロフスク郊外の工場の1つで漏出事故があった。94人が感染し、そのうち64人が死亡した。ソ連はこの死因を、感染した肉を消化することによって感染した別の炭疽菌のせいとした。しかし、後に、この炭疽病の発生は、ソ連のために生物兵器を開発していた近くの工場からバクテリアが偶然に放出されたことが原因であることが明らかにされた。

2001年9月、米国のメディア企業や上院議員に炭疽菌を含む数通の手紙が郵送された。この攻撃は、開始の数日前に発生した9.11同時多発テロと関連していた。

デマ

封筒の中からニセモノの粉が出てくるケースも少なくない。

質問と回答

Q: 炭疽菌とは何ですか?


A: 炭疽病は炭疽菌によって引き起こされるヒトと動物の両方に感染する病気です。

Q:どのような動物が炭疽に感染しますか?


A:ラクダやキリンなどの偶蹄類が炭疽の一般的な宿主です。

Q: 炭疽菌はどのようにして人に感染するのですか?


A: 人間は通常動物から炭疽菌をもらいます。

Q: 炭疽菌は人から人へ直接感染するのですか?


A: 通常、炭疽菌はヒトからヒトへ感染することはありません。

Q: 炭疽の治療法はありますか?


A: はい、炭疽は抗生物質で治療できます。

Q: 炭疽のワクチンはありますか?


A: はい、炭疽菌に対するワクチンがあります。

Q: 炭疽を放置するとどうなりますか?


A: 放置すると炭疽はしばしば死に至ります。


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