ICD(国際疾病分類)とは?定義・目的・ICD-10とICD-11の違い
国際疾病・関連健康問題統計分類(ICD)とは、疾病や健康に関する問題を体系的に分類するためのコード体系です。各病名や症状、外因や社会的状況などに対して特殊かつ一意のコードが付与され、統計・疫学・医療管理・保険請求などで広く使われます。
定義と範囲
- あらゆる病状(メンタルヘルス不調を含む)
- 原因が明確でない場合の特定の症状(例:咳のみを呈し原因不明な場合には「咳」のコードを使う)
- 検査所見や身体の変化が正常範囲外である場合(その変化を引き起こす基礎疾患が明確でない場合など)
- 外傷や外因による怪我・病気(例:骨折、火傷、中毒など)
- 健康に影響を及ぼす可能性のある社会的要因(例:職業上のリスクや、貧困のために健康が脅かされている場合)
目的
ICDは世界保健機関(WHO)が管理・公表しており、主な目的は以下の通りです。
- 国際的に標準化されたコードを提供し、疾患・死因の統計を比較可能にすること
- 公衆衛生政策や医療資源配分、疫学研究の基礎情報を提供すること
- 臨床現場での診断記録や電子カルテ、医療費請求(国や制度による)での共通言語をつくること
- 疾病の監視(監視体系)や国際的な保健対策の評価に資すること
構成とコーディング方式の概略
ICDは章立てで疾患群を分類し、各項目に対してコードを付与します。ICD-10では、アルファベットと数字を組み合わせたコード(例:A00〜Z99)を用い、3桁のカテゴリに小数点以下で細分類を行います。ICDは国や用途に応じて拡張(臨床的修飾子など)して使われることがあります。
ICD-10とICD-11の主な違い
過去数十年はICD-10が広く用いられてきましたが、ICD-11は設計思想や構造を刷新しており、主な違いは次の通りです。
- デジタル対応と検索性の向上:ICD-11は最初から電子運用を想定して設計され、オンラインでの検索・連携、APIを用いた導入が容易になっています。かつて計画された「Web2.0を利用した改訂」の考えは、この動向の一部です(改訂と共同作業のためのオンラインツールを導入)。Web2.0を活用した改訂プロセスも経ています。
- コード体系の拡張性:ICD-11は「ステムコード」と「拡張コード(エクステンション)」を併用でき、疾患の重症度、部位、原因などをより詳細に表現できます。これにより臨床的な表現力が高まり、さまざまな用途に柔軟に対応します。
- 章構成と分類の見直し:精神・神経・行動に関する分類の整理、伝統医療に関する付録的な章の追加(オプション)、抗菌薬耐性や公衆衛生上重要な新カテゴリの導入など、内容がアップデートされています。
- 国際比較性と臨床的整合性の強化:ICD-11は臨床医、疫学者、保健行政などの意見を取り入れ、診断表現と統計目的の両立を目指しています。
導入時期と現状(更新情報)
ICD-11はWHO総会で2019年に採択され、公式にはICD-11が発行されました。WHOは加盟国に対し段階的な移行を推奨し、2022年1月1日以降にICD-11の利用が可能となっています。実際の移行時期や運用開始は各国の保健制度や法制度、運用体制により異なります。多くの国や組織はICD-10からICD-11への移行計画、教育、マッピング(ブリッジマップ)ツールの準備を進めています。
利用方法と注意点
- ICDコードは統計・研究用途と臨床記録での利用目的が混在するため、運用ルール(どのコードを主診断とするか、併記の方法など)を組織内で明確にする必要があります。
- 医療報酬や保険請求に用いる場合は、各国の保険制度が採用するコード体系(ICDのバージョンや独自拡張)に従う必要があります。
- ICD-10からICD-11へ移行する際は、ブリッジマップやトレーニングが重要です。単純な置換では表現の粒度や意味が変わる場合があります。
- 最新の公式情報や使用ガイドラインはWHOの公式サイトや各国保健当局の公開資料を参照してください。
まとめると、ICDは国際的な疾病分類の基盤であり、最近はICD-11への移行を通じてデジタル化・詳細化が進んでいます。臨床・公衆衛生・保険といった様々な場面で正しく適用するために、最新版の仕様や各国の実装方針を確認し、必要な教育と準備を行うことが重要です。
関連ページ
- 精神障害の診断・統計マニュアルは、米国精神医学会が発行しているもので、精神衛生上の問題に関するICDのセクションとは異なります。
質問と回答
Q:国際疾病分類(ICD)とは何ですか?
A:疾病及び関連保健問題の国際統計分類(ICD)は、疾病や医学的問題を分類するコードのリストです。すべての病状、特定の症状、正常でない身体の変化や検査結果、身体以外のものが原因で起こる怪我や病気、健康問題を引き起こす可能性のある社会問題などに、固有のコードが割り当てられています。
Q: ICDは誰が発行しているのですか?
A: 世界保健機関(WHO)がICDを出版しています。
Q:ICDの目的の一つは何ですか?
A: ICDの1つの目的は、異なる医師、異なる国が同じ診断を使用していることを確認することで、病気が異なる国にどのように影響するかを比較することが容易になります。
Q: ICD はどれくらいの頻度で更新されるのですか?
A: ICDは何度も変更され、更新されています。最新版は、2022年1月1日から使用するためにWHOによって採択されたICD-11です。
Q:ICD-11はどのように改訂されたのですか?
A: ICd-11はWeb2.0の技術を利用して改訂されました。
Q:ICDはどのような種類の状態にコードを割り当てるのですか?
A: ICDは、精神的な健康問題、どのような状態が原因であるかが明確でない場合の特定の症状、どのような状態が原因であるかが明確でない場合の正常ではない身体や検査結果の変化、骨折、火傷、中毒などの身体以外のものが原因の怪我や病気、仕事に関連するリスクや貧困に関するリスクなどの健康問題を引き起こすかもしれない社会的問題など、あらゆる病状に対して固有のコードを割り当てているのです。