この単語の他の意味については、アイデンティティを参照してください。

数学では、恒等式という用語はいくつかの重要な用法がある。

  • 恒等式とは、その恒等式で使われる変数をすべて変更しても真であることを示すものである。

数学的な意味での等式は、より特殊な条件下でのみ成立する。これに対して、≡という記号が使われることがある。(ただし、同じ記号を合同関係にも使えるので、誤解を招くことがある)。

恒等式の定義(わかりやすく)

恒等式(identity)とは、式の両辺が変数の取りうるすべての値(ただし定義域内)について常に等しくなる等式を指します。言い換えると、ある等式が恒等式であるとは、その両辺が同じ関数を表しているということです。恒等式は「すべての値で成り立つ等式」です。

等式との違い

  • 恒等式:すべての変数の値(定義域内)に対して真。例: (a+b)^2 = a^2 + 2ab + b^2(任意の実数 a, b)。
  • 等式(方程式):ある特定の値(解)に対してのみ成り立つ。例: x^2 = 1 は x = 1 または x = −1 のとき真だが、すべての x に対して真ではない。

記号については、恒等性を強調するために ≡ を使うことがある(たとえば恒等的な関係や合同の意味)。ただし ≡ は合同(mod)にも使われるため文脈に注意が必要です。日常的には恒等式でも "=" を使うことが多いです。

恒等式の代表的な例

  • 多項式の恒等式: (a + b)^2 = a^2 + 2ab + b^2
  • 三角関数の恒等式: sin^2 x + cos^2 x = 1(すべての実数 x)
  • 双曲線・指数・対数の恒等式: e^{\ln x} = x(x>0 のとき)など(ただし定義域に注意)
  • 複素数の恒等式: e^{i\pi} + 1 = 0(複素解析の文脈で定数同士の恒等)

恒等式の性質と判定法

  • 係数比較:多項式に関しては、左辺と右辺を同じ次数で整理して係数がすべて一致すれば恒等式。たとえば f(x) − g(x) が零多項式(すべての係数が 0)なら f(x) ≡ g(x)。
  • 代数的変形:両辺を展開・因数分解・整理して同じ形にできれば恒等式。展開や因数分解が標準的な証明法。
  • 特定値代入は不十分:いくつかの値で等しいことを確認しても恒等式の証明にはならない(ただし反例が見つかれば恒等式ではないことは示せる)。
  • 関数としての一致:2つの式が同じ関数を表す(定義域の各点で同じ値を取る)なら恒等式。
  • 注意:定義域:除算や対数・ルートなどが含まれる場合、両辺を同じに見えても定義域の違いで恒等とは言えないことがある。

証明の例(具体的な手順)

例: (a + b)^2 = a^2 + 2ab + b^2 が恒等式であることの証明

  • 左辺を展開する: (a + b)^2 = (a + b)(a + b) = a^2 + ab + ba + b^2。
  • 乗法の可換性により ab = ba なので、a^2 + ab + ba + b^2 = a^2 + 2ab + b^2。
  • したがって任意の実数 a, b に対して等号が成り立つので恒等式である。

係数比較の例:多項式 P(x) = ax^2 + bx + c と Q(x) = 0 が恒等的に等しければ P のすべての係数 a, b, c が 0 である必要がある(零多項式)。

定義域に関する注意事項(落とし穴)

  • 式に除算が含まれる場合、分母が 0 となる点は定義域から除く必要がある。たとえば (x^2−1)/(x−1) = x+1 は x ≠ 1 の範囲では恒等だが、x=1 では左辺が未定義なので「すべての実数 x に対して成り立つ」恒等式とは言えない(狭義には「x ≠ 1 の範囲での恒等式」と表現する)。
  • 平方根や対数を扱うときは、その定義域(非負、正など)に注意する。両辺を二乗するなどの変形は外挿解(偽解)を生むことがある。

日常的な検査方法(実務的)

  • まず式を簡単にしてみる(展開・整理・因数分解)。
  • 多項式なら係数比較を行う。
  • 複雑な関数同士なら定義域内でいくつか代表的な値を代入してみて反例がないか調べる(反例があれば恒等式ではない)。
  • 必要なら解析的手法(導関数を調べるなど)や関数の同値性を使って証明する。

まとめ(ポイント)

  • 恒等式は「定義域内のすべての値で成り立つ等式」。
  • 等式(方程式)は特定の解で成り立つ場合が多く、恒等式とは異なる。区別が重要。
  • 証明には展開・因数分解・係数比較・関数比較などの方法がある。定義域に注意して扱う。