イスチグアラスト州立公園は、アルゼンチン北西部のサン・フアン州にある保護区です。その異世界のような姿から、Valle de la Luna(月の谷)とも呼ばれ、風化と侵食によって生まれた奇岩や色の層が連なる独特の景観が広がります。園内は厳重に保護されており、周辺にはタランパヤ国立公園(ラ・リオハ州)と合わせて訪れる研究者や観光客が多くいます。
イスチグアラスト層を含んでいます。この地層は、ラ・リオハ州のタランパヤ国立公園にもまたがる堆積層群の一部で、堆積・火山作用とその後の浸食により良好に露出しています。イスチグアラスト層は、三畳紀の化石を含んでいます。これらは、知られている中で最も古い恐竜の化石群のひとつであり、恐竜進化の初期段階を解明するうえで極めて重要です。出土した代表的な化石には、初期の小型恐竜であるEoraptorや、初期の肉食恐竜に当たるHerrerasaurus、そして初期の草食的な系統とされることのあるPisanosaurusなどがあり、これらは約2億3000万年前の後期三畳紀に属するとされます。火山灰に由来する層の放射年代測定により、時代の特定が比較的正確に行われています。また、恐竜以外にもシノドン類やリンサクス類などの脊椎動物や多様な無脊椎化石が記録されており、当時の陸上生態系を復元する手がかりを多く提供しています。
2000年、ユネスコはイスチグアラストを世界遺産に登録した(登録名は「Ischigualasto / Talampaya Natural Parks」)。登録の理由は主に地質学的・古生物学的な価値で、三畳紀の地層とそこから得られる化石資料が、地球史と生命史の理解に貢献している点が評価されました。
訪問者向けには、園内を巡る車道と展望ポイントが整備されており、許可されたガイド付きツアーで安全かつ保護された形で見学するのが一般的です。乾燥した気候で夏は非常に暑く、冬は寒暖差が大きいため、訪問の際は十分な水や帽子、日焼け対策を用意してください。また、化石の採集や無断での立ち入り・標本持ち出しは禁止されており、保護と研究のための規制が厳格に運用されています。
学術的にも観光的にも価値の高い場所であり、三畳紀の地球環境と生命の初期を知るうえで欠かせないフィールドです。最新の研究成果は現在も継続的に報告されており、訪れることで古生物学や地質学の第一線に触れることができます。