絶対零度とは?定義・ゼロ点エネルギーと不確定性、到達技術を解説
絶対零度の定義からゼロ点エネルギー、不確定性原理、最先端の到達技術まで図解でわかりやすく解説
定義とゼロ点エネルギー
絶対零度とは、物質の粒子(分子や原子)のエネルギーが最も低くなる温度のことです。古典的には「温度が下がるほど粒子の運動が弱まり、絶対零度ではすべての運動が止まる」と考えられがちですが、これは量子力学的には正しくありません。量子物理学では、たとえ熱的な運動エネルギーを極限まで取り除いても粒子は残留するエネルギーを持ちます。これをゼロ点エネルギーと呼びます。ゼロ点エネルギーは、ハイゼンベルグの不確定性原理に由来します。すなわち、粒子の位置を完全に確定させようとすると運動量の不確定性が大きくなり、逆に運動量を完全に確定させようとすると位置が不確定になります。そのため、粒子を「完全に静止」させることは原理的にできません(そのため絶対零度も到達不能である、という考えに結びつきます)。
実験的な到達記録と冷却技術
実験室では絶対零度に非常に近い温度が作られており、記録的には絶対零度より100 pK(100ピコケルビン、10-10 Kに相当)という極低温が達成されています。極低温を得るにはいくつかの主要な手法があります:
- レーザー冷却:レーザーを原子に当て、ドップラー効果などを利用して運動量を取り除く方法。原子をゆっくりと捕捉・冷却できます。
- 蒸発冷却:トラップ中の高エネルギー粒子を取り除くことで残りの系の温度を下げる手法。ボース・アインシュタイン凝縮などで用いられます。
- 希釈冷凍機・断熱磁化冷却:電子や核スピンの自由エネルギーを利用してミリケルビン〜マイクロケルビン領域まで冷却する方法。
- 希釈冷凍機やパルスチューブ冷凍機などを組み合わせた多段冷却:広い温度レンジで段階的に冷却を行います。
極低温域では、外界と接触するどんな物体も熱を与えてしまうため、実験系は厳重な熱遮蔽・真空・レーザー光の制御などが必要です。測定器自身の影響(ブラックボディ放射、導線からの熱伝導など)を最小化する技術も重要です。
温度スケールと絶対零度の値
温度スケールは絶対零度を基準に定義されています。ケルビンとランキンでは、絶対零度が0 K(0 °R)です。一方、摂氏と華氏ではそれぞれ -273.15 °C および -459.67 °F に相当します。
物性の変化:圧力・振動・電気抵抗
古典的な理想気体のモデルで考えると、温度が0 Kに近づくと粒子の熱運動が減るため圧力は低下しますが、現実の固体や量子系ではゼロ点運動や相互作用が残ります。よって「この段階では粒子の圧力はゼロです」と単純には言えません。特に固体では、格子振動(フォノン)や電子系の量子揺らぎが存在します。
また、物質の電気抵抗に関しては、温度低下により抵抗が小さくなる傾向がありますが、抵抗がゼロになるのはすべての物質に共通する性質ではありません。抵抗ゼロを示す現象は超伝導であり、特定の材料が臨界温度以下で超伝導状態に転移した場合に発生します。超伝導とは電子間のクーパー対形成などによる量子相であり、「すべての物質が絶対零度で完璧に電気を通す」わけではないことに注意が必要です。
熱力学法則と絶対零度の到達性
熱力学の第三法則(ネールストの定式化など)は、完璧な結晶が絶対零度に近づくとそのエントロピーが定数(通常はゼロ)に近づくことを述べ、これに関連して「有限の操作で絶対零度に到達することはできない」と解釈されます。つまり、原理的に絶対零度は到達不能とされています。
また、熱力学の第二法則に基づくカルノー効率は、理想的な可逆サイクルが取りうる最大効率を示し、次の形で表されます:
η = 1 − Tcold/Thot
(元の文にあったように 100%×(1-Toutside/Tinside) と表現されることもありますが、一般には高温浴の温度を Thot、低温浴の温度を Tcold と書きます。)この式から分かるように、冷却側温度が絶対零度(Tcold → 0 K)に近づけば理論上は効率を1(100%)に近づけられますが、現実には絶対零度は得られないため完全効率は達成できません。また可逆過程を実現すること自体も不可能であるため、実際の機械で100%効率を得ることは不可能です。
補足:負の温度や量子効果
なお「負の温度」という概念が存在しますが、これは絶対零度より「さらに冷たい」という意味ではありません。負の温度は、エネルギー準位の人口分布が通常のボルツマン分布と逆転している状態(人口逆転)を示し、系の有効温度が負の値をとるという数学的な表現です。負の温度系は実際には「より高いエネルギーを持つ」状態であり、温度軸が単純に延長されて負の方へ行くものではないことに注意してください。
まとめ
- 絶対零度は粒子系の温度の下限であり、量子力学的にはゼロ点エネルギーのため完全な静止はあり得ません。
- 実験的には非常に近い温度(pK領域)まで冷却可能ですが、外界からの熱流入や測定の影響を完全に排除することは困難です。
- 一部の物質は低温で電気抵抗がゼロになる(超伝導)ことがありますが、これはすべての物質に当てはまるわけではありません。
- 熱力学の法則は、絶対零度到達の原理的な不可能性や熱機関の効率の上限(カルノー効率)を示します。

ゼロケルビン(-273.15℃)は絶対零度と定義されています。
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質問と回答
Q:絶対零度とは何ですか?
A:絶対零度とは、物質の粒子(分子や原子)が最も低いエネルギー点にある温度のことです。
Q:絶対零度とは、粒子がすべてのエネルギーを失い、動かなくなることですか?
A:いいえ、量子物理学ではゼロ点エネルギーというものがあり、粒子からすべてのエネルギーを取り除いても、ハイゼンベルクの不確定性原理により、粒子はまだ何らかのエネルギーを持っていることを意味します。
Q:絶対零度付近で達成された記録温度は何度ですか?
A:絶対零度より100pK(100ピコケルビン、10-10ケルビンに等しい)高い温度が記録されました。
Q:科学者はどのようにして物体を超低温に冷却するのですか?
A:科学者は、物体を超低温に冷却する際、レーザーを使って原子の速度を遅くします。
Q:絶対零度に対して、摂氏と華氏の尺度はどのように定義されていますか?
A:絶対零度が-273.15℃または-459.67°Fであるように、摂氏と華氏のスケールが定義されています。
Q:熱力学第三法則は、絶対零度についてどのように言っていますか?
A:熱力学第三法則では、絶対零度のものは存在し得ないとされています。
Q:エンジンの効率を100%に近づけるにはどうしたらよいですか?
A:熱力学第二法則により、内部を高温に、外部を低温にすることで、エンジンの効率を100%に近づけることができます。
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