Chandrayaan-2(チャンドラヤーン2)とは:2019年打上げ・着陸予定のインド月面探査ミッション
Chandrayaan-2の2019年打上げと月面着陸挑戦を詳解。インドの月面探査史と技術、スケジュールをわかりやすく紹介。
Chandrayaan-2(サンスクリット語:चन्द्रयान、chandra=月、yāna=乗り物(意「月への乗り物」))は、インド宇宙研究機関(ISRO)が計画・実施した月探査ミッションです。正式には軌道船(オービター)、着陸船(ランダー)「ヴィクラム(Vikram)」、探査ローバー「プラグヤン(Pragyan)」から構成され、月の南極域を中心に地形・鉱物組成・水や揮発性物質の分布、薄い大気(持つ場合)の観測などを目的としていました。一般には「チャンドラヤーン2」と表記され、日本語では「チャンドラヤーン・ツー」と発音されます。
目的と特徴
- 月の南極域(サウスポール付近)での科学観測:未探査領域の地質学的解明や水(氷や水酸基)に関する研究。
 - 着陸およびローバー走行による現地データ取得:地表での元素・鉱物組成分析。
 - 軌道上観測による高解像度の地形マッピングやリモートセンシング。
 - 将来の有人・無人月探査に向けた技術実証(軟着陸技術、誘導・制御など)。
 
打ち上げと経過
- 打ち上げ:2019年7月22日(UTC)にGSLV Mk IIIロケットで、サティシュ・ダワン宇宙センター(スリハリコータ)から打ち上げられました。
 - 軌道投入:軌道船は月周回軌道への投入に成功し、その後複数の観測機器でデータ取得を開始しました。
 - 着陸試行:着陸船ヴィクラムは当初の計画通り2019年9月6日に月面着陸を試みましたが、最終降下段階で通信が途絶し、軟着陸には至りませんでした。成功していればインドはアメリカ、ソ連、中国に次いで月面への軟着陸を達成した4番目の国となるはずでした。
 
搭載機器(概要)
ミッションには多数の観測機器が搭載されていました。代表的なものは以下の通りです。
- オービター:地形カメラ、合成開口レーダー(SAR)、分光器類、リモートセンシング用センサーなど。月周回から長期にわたりデータを取得し、地質・鉱物分布や水の痕跡の検出を行います。
 - ランダー(ヴィクラム):着陸地点での局所観測装置(例:大気組成測定器、着陸後の地表観測機器、レーザー反射器など)を搭載。
 - ローバー(プラグヤン):地表を短距離移動して元素分析を行う装置(Alpha Particle X-ray Spectrometer:APXSやLaser-Induced Breakdown Spectroscope:LIBSなど)を搭載する予定でした。
 
成果とその後の展開
ランダーの着陸は最終段階で失敗しましたが、オービターはだ後も正常に機能し、月周回から多くの観測データを送信しました。これらのデータは月の地形図、鉱物分布、水や揮発成分の手掛かりの解析に寄与しています。また、Chandrayaan-2で得られた技術・知見は、後続のミッション(例:Chandrayaan-3)や将来の月探査計画に生かされました。
意義
Chandrayaan-2は、インドの宇宙技術の成熟度を示す重要な節目であり、月の南極域という未開拓領域をターゲットにした点で国際的にも注目されました。着陸の試みによって得られた教訓は、後続ミッションでの成功につながる技術的改善に役立ちます。
参考:本記事はChandrayaan-2の目的・経過・成果を概説したものであり、詳細な技術仕様や各機器の観測結果は別途の報告書やISROの公開資料を参照してください。
歴史
2007年11月12日、ロシア連邦宇宙機関(Roscosmos)と宇宙開発事業団(ISRO)は、チャンドラヤーン2プロジェクトの共同作業に合意した。軌道装置とローバーはISROが担当し、着陸船はRoscosmosが製作することになりました。2009年8月には宇宙船の設計が完了し、両国の科学者による共同レビューが行われた。
ISROはチャンドラヤーン2のペイロードを予定通りに完成させたが、ロシアがランダーを間に合わせることができなかったため、ミッションは2016年に延期された。ロシアが2015年までに着陸船を建設できないと判断したため、インドは独自に月面ミッションを開発することにした。
探査機の打ち上げは2018年3月に予定されていたが、延期された。2019年2月のテスト中に着陸船の2本の脚が軽度の損傷を受けたため、打ち上げ日はさらに遅くなった。
目標
Chandrayaan-2の主な目的は以下の通りです。
- 月面にソフトランドを着陸させ、地表でロボットローバーを操作する
 - 月の地形、鉱物学、元素の豊富さ、月外圏、月のレゴリスの厚さを研究し、水酸基と水氷の証拠を探す。
 - 3Dで月面の地図を作る
 
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