ラクシュミーとは|ヒンドゥー教の富と幸運の女神 — 意味・象徴・ディワリ信仰
ラクシュミーはヒンズー教における金運、知恵、幸運を司る女神です。ほとんどのヒンドゥー教徒は、インドのお祭りであるディワリに彼女に祈りを捧げます。
ラクシュミーは4本の腕と白い肌を持っており、蓮の花の上に座り、通常は象に囲まれています。彼女は宝石で覆われています。
また、彼女にはいくつかのアバター(神が人間やその他の姿に化けて地上に現れることを意味する)がある。彼女の夫はヒンドゥー教の神ヴィシュヌだが、彼女の他のアバターは通常ヴィシュヌのアバターと結婚している。
象徴と意味
ラクシュミーは単なる「富の女神」以上の存在です。物質的な富だけでなく、精神的な繁栄、幸福、家庭の安定、そして正しい行い(ダルマ)をもたらす存在とされます。代表的な象徴と意味は次のとおりです。
- 四本の腕:人生の四つの目的(ダルマ〈義務〉、アルタ〈富〉、カーマ〈欲望〉、モークシャ〈解脱〉)を表すとされます。
- 蓮の花:純粋さと精神的な美、迷いの中にあっても清らかに咲く力を示します。
- 象:王権、豊穣、力を象徴し、しばしば水を注ぐ姿で描かれます(祝福と豊かさの降臨)。
- 流れる金貨:慈悲と繁栄が惜しみなく与えられることを示します。
- 赤い衣:活動力と繁栄の色。赤は生命力や成功を意味します。
主な神話と起源
有名な神話としては、海のかき混ぜ(サムドラ・マンタン)でラクシュミーが現れた話があります。諸神と阿修羅が不死の霊薬を得るために大海をかき混ぜた際、ラクシュミーは蓮とともに姿を現し、その美と富によって神々の側に加わったとされます。
アバターと家族関係
ラクシュミーはヴィシュヌの妃として知られ、ヴィシュヌの諸アバター(化身)に対応する形で様々な姿を取ります。代表的なアバターには次のものがあります。
- シーター:ラーマ(ヴィシュヌのアバター)の伴侶としてラーマーヤナに登場。
- ルクミニ(ルクミニー):クリシュナの主要な妃としてマハーバーラタ/プラーナ文献で言及されることがあります。
- ブーデーヴィー(大地の女神):大地の豊穣を象徴する側面。
- ニラデーヴィーなど:地域や伝統によって複数の側面が区別されます。
信仰と慣習
ラクシュミー信仰は家庭や商家で特に盛んです。主な行事・慣習は以下の通りです。
- ディワリでのラクシュミー・プージャ(礼拝):最も重要な時期。家を掃除し、灯(ランプ)を灯し、蓮や花、果物、菓子、米、コインなどを供えます。
- ヴァララクシュミー・ヴラタ:南インドで行われる女性中心の祈願行事で、家族の繁栄と健康を祈ります。
- 商売人の礼拝:新しい事業の開始や帳簿を開く日(例えば「アカウンティング・オープニング」)にラクシュミーに祈る習慣があります。
- 日常的な礼拝:毎週金曜日をラクシュミーに捧げる地域も多く、定期的にチャント(例:「Om Shreem Mahalakshmiyei Namaha」)が唱えられます。
礼拝の簡単な手順(家庭で行う場合)
- 家や祭壇を清め、整える。
- ランプを灯し、蓮や他の花を供える。
- 果物や菓子、コインなどを供え、心を込めて祈る。
- マントラや祈りの文を唱え、最後にアールティー(光の礼拝)を行う。
現代における影響
ラクシュミーのイメージはインドだけでなく世界中のアート、装飾、ビジネスの象徴として用いられています。祝祭シーズンになると商業施設や家庭の入口にラクシュミー像や絵が飾られ、経済的成功と家庭の繁栄を願う人々に広く親しまれています。
注意点
ラクシュミーに関する考え方や礼拝方法は地域、宗派、家族ごとに差があります。慣習を実践するときは、その地域・宗派の伝統や指導者の教えに従うことが大切です。
参考:ラクシュミーは豊穣と幸運の象徴であると同時に、倫理や精神性と結びついた「繁栄」の概念を体現しています。単に物質的な富だけでなく、心の豊かさや社会的調和を重んじる存在として理解されます。