ローレンス対テキサス(2003)—米国最高裁が成人の同性愛を非犯罪化した判決
Lawrence v. Texas, 539 US 558 (2003)は、米国でソドミーが非犯罪化された主要な判例である。2003年に連邦最高裁で裁かれたローレンス対テキサス訴訟は、成人の合意による同性愛を犯罪とするテキサス州法に関するもので、修正第14条の適正手続条項に基づき違憲と判断された。
事実関係
本件は、テキサス州の刑法(いわゆるソドミー規定)に基づき、私的空間で合意の上で同性愛的行為をしたとして成人が摘発・起訴されたことから始まった。警察が通報を受けて自宅に入り、そこで成人同士の性的行為が行われていたとして逮捕・起訴された事案であり、検察側は州の道徳的利益や公序維持を理由に有罪を求めた。
判決の要旨
2003年6月26日、連邦最高裁は多数意見(アンソニー・ケネディ判事執筆)で、成人同士の私的で合意に基づく性的行為を罰する州法は、修正第14条の適正手続条項が保障する「自由(liberty)」を侵害するため違憲であると判断した。判決は、国家が単に道徳的嫌悪だけを根拠に私人間の性的行為を処罰することは許されないと結論づけ、これにより従来の判例である Bowers v. Hardwick (1986) を覆した。
法的理由と範囲
- 多数意見は、個人の私生活にかかわる親密な行為は憲法上の保護を受ける自由領域に属すると説明した。
- 国家の単なる「道徳的非難」だけでは、私人間の合意的な性的行為を刑罰化する正当な根拠にはならないとした。
- 判決は私的・合意的な成人の行為に関するものであり、未成年、強制行為、公然わいせつ行為、獣姦や売春など別の法的問題には適用されないことを明示している。
異論と批判
本件には反対意見もあり、反対側は主に司法が政治的・道徳的問題に介入することの是非を問題視した。反対意見は、州の立法権や民主的プロセスを尊重すべきで、裁判所が広範な性行為の保護を認めることは法理上および政策上の問題を生じさせると主張した。
影響とその後
- この判決により、アメリカ国内で同性間合意的性行為を罰する多くの州法は法的根拠を失い、事実上の非犯罪化が進んだ。
- ローレンスはその後のLGBTQ+の権利拡張訴訟でも重要な先例となり、2015年の同性婚を巡る合憲判決(Obergefell v. Hodges)などで援用された。
- 社会的・政治的にも大きな影響を与え、差別撤廃や平等保護を求める運動を後押しした一方、判決の適用範囲や限界についての議論は継続している。
意義のまとめ
Lawrence v. Texasは、個人の私生活に関する基本的自由を再確認した重要判例であり、単なる道徳的懲罰を根拠に私人の親密な関係を刑罰化することを否定した点で、米国の憲法解釈とLGBTQ+の権利史において画期的な位置を占める。判決は、法的保護の観点から成人の合意に基づく私的行為に対する国家の規制を大幅に制限し、その後の公民権的進展にも大きく寄与した。
本件の背景
ヒューストン警察は、John Lawrenceの自宅から武器の乱射事件が発生したと密告されました。そのアパートに入った警察は、ローレンスとタイロン・ガーナーが性行為に及んでいるのを発見した。当時、このような同性愛の性行為を禁止し、さらに同性愛を「逸脱行為」とみなす法律が施行されていた。ローレンスもガーナーもこの法律で逮捕され、有罪になった。
控訴審の結果、テキサス州裁判所は、Bowers v. Hardwick, 478 US 186 (1986) を支配的判例として、男性側の有罪判決を支持した。
ローレンスは最高裁に上告し、2003年に受理された。
判定
最高裁は6対3の判決で、Lawrenceの有罪判決を覆し、テキサス州の反ソドミー法を違憲とした。この判決は、デュー・プロセス条項に基づくLawrenceとGarnerの私的行為に従事する権利に懸かっていた。多数意見を書いたアンソニー・ケネディ判事は、「(ローレンスとガーナーの)デュー・プロセス条項に基づく自由権は、政府の介入なしに彼らの行為を行う完全な権利を与えている」と述べている。
参照
米国わいせつ物取締法
参考文献
カーペンター,デール.(2012).Flagrant Conduct:The Story of Lawrence V. Texas.New York, NY:W.W. Norton & Co.Inc.