マルタ語とは|起源・特徴・話者数・EUでの地位と表記
マルタ語の起源・特徴、約39万3千人の話者数、EUでの地位やラテン文字による表記法までをわかりやすく解説。
マルタ語は、マルタの言語であり、欧州連合の言語でもあります。マルタ語は、古代地中海沿岸の地域で話されていたフェニキア語に似ています。英語と同じようにラテン語のアルファベットで書かれています。この言語は、シチリア語、イタリア語、英語から多くの単語を借りています。約393,000人がマルタ語を話しています。そのほとんどがマルタに住んでいます。
起源と歴史
マルタ語は、アラビア語系の方言であるシチリア=マルタ方言(Siculo-Arabic)から発展したと考えられています。中世にシチリアやマルタで話されたアラビア語が基盤となり、その後、シチリア語やイタリア語、後には英語の影響が重なって現在の形になりました。したがって語彙にはセム語起源の基本語が多く残っている一方、日常語や専門語ではロマンス語や英語からの借用語が目立ちます。
音声・表記の特徴
マルタ語はラテン文字を用いた表記を採用しており、特有の字母や発音を表すためにいくつかの補助記号・特殊文字を用います。代表的なものに ħ(無声音の咽頭摩擦音)、għ(歴史的には喉音で、現代では母音に影響を与える特殊な字列)、ċ(/tʃ/)、ġ(/dʒ/)、ż(/z/)などがあります。これらはラテン文字ベースのアルファベットに組み込まれ、20世紀に入ってから正書法が整備され標準化が進みました。
文法と語彙の特徴
文法的には、基本的な語彙と語根の多くがセム語的な体系に基づきます(語根と派生による単語形成など)。一方で語順や構文、助詞や接続表現にはイタリア語・英語の影響が見られ、現代マルタ語ではSVO(主語‑動詞‑目的語)をとる表現が多く使われます。語彙面では、宗教、法、行政、技術語などでイタリア語や英語からの借用が顕著で、言語接触の結果として非常に混合的な特徴を持っています。
話者数と使用地域
約393,000人がマルタ語を話しているとされ、その大部分はマルタ共和国(主にマルタ島とゴゾ島)に居住しています。移民や海外コミュニティを含めると、マルタ語を話す人は他国にも存在します。方言差は島内でみられ、ゴゾ島の方言など地域変種が記録されています。
公的地位・EUでの位置づけ
マルタ語はマルタの公用語の一つであり、英語とともに行政、教育、司法、メディアで使われます。2004年のマルタの欧州連合(EU)加盟に伴い、マルタ語はEUの公用語の一つになり、欧州機関内での文書翻訳や通訳の対象となっています。これにより公的文書や法令のマルタ語表記・翻訳の重要性が高まりました。
文化と言語政策
マルタ語は国民的アイデンティティの重要な柱であり、文学、詩、演劇、放送などの分野で活用されています。教育制度では初等教育からマルタ語が教科や授業言語として取り入れられ、言語保護や普及のための政策も行われています。国際的には言語コードはISO 639-1で「mt」と表記されます。
まとめ
- 起源:シチリア=マルタ方言(シチリアでのアラビア語変種)に由来。
- 表記:ラテン文字を基礎とし、ħやgħ、ċ、ġ、żなど特有の文字を使用。
- 語彙:セム語系を基礎に、シチリア語・イタリア語・英語から多くの借用語。
- 話者数:約393,000人(主にマルタ在住)。
- 地位:マルタの公用語かつ欧州連合の公用語の一つ。
歴史
西暦870年にイスラム教徒がマルタを征服した後、シチリアから多くの人々がマルタに定住しました。彼らは、マグレブから来たシチリア-アラビア語を話しました。後の数世紀で、彼らの言語はマルタ語に変わりました。マルタ語で知られる最も古い文書は、ピエトロ・カクサロによって書かれた15世紀の詩、「Il Cantilena」です。何世紀もの間、マルタ語は主に話し言葉でした。
マルタ語は、1934年に英語と並んでマルタの公用語となりました。それ以前は、マルタの公用語はイタリア語のみでした。しかし、イタリア語は今でもメディアで多く使われています。
今日
イタリア語や英語の言葉がどんどん取り込まれていく。そのため、マルタ語にもイタリア語にも英語にもない、3つの単語が混ざったような言葉が生まれることもあります。学校では、英語は第二言語として教えられています。マルタ語は、標準的な仕事や、人々がお互いに話すときに使われるのが普通です。マルタのテレビ、ラジオ、文学もほとんどがマルタ語です。
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