物理学では、質量重量は異なる概念です。物体の質量は、その物体に含まれる物質の量を表すもので、場所によらず変わりません。一方、重量は重力によって物体にかかるの大きさ、つまり重力が物体を引っ張る力です。たとえばある物体を赤道から北極に移動すると、地球の重力場の差により重量は約0.5%程度増加しますが、質量は変わりません。

定義と式

質量 (m):物体がもつ物質の量。SI単位はキログラム(kg)。
重量 (W):重力によって物体に作用する力。物理的には次の式で表されます。

W = m · g

ここで g は重力加速度(地球上の標準値は g ≒ 9.80665 m/s²、便宜上 g ≒ 9.8 m/s² とすることが多い)です。力のSI単位はニュートン(N)で、1 N は 1 kg·m/s² に相当します。

単位と日常での扱い

質量の単位としては通常 キログラム が用いられますが、日常では ポンド(lb)で表すこともあります。ここで注意したいのは「ポンド」が質量として使われる場合(avoirdupois pound)と、力の単位としてのポンド重(pound-force, lbf)が文脈により区別される点です。

たとえば、リットル水の質量はほぼ 1 キログラムです(1 L 水 ≒ 1 kg)。一方、体重計(バネ式のスケール)は実際には物体に働く力(重量)を測り、内部で仮定した重力加速度に基づいて「kg」表示に換算しているため、同じ体重計でも設置場所や重力のわずかな違いで表示が変わることがあります。天秤のような比較で質量を測る装置は、重力場が同じなら質量を直接比較できます。

わかりやすい数値例

  • 質量 1 kg の物体の重さ(地球上、g ≒ 9.8 m/s²):
    W = 1 kg × 9.8 m/s² ≒ 9.8 N(約 10 N)
  • 体重 70 kg の人:
    W = 70 kg × 9.80665 m/s² ≒ 686.5 N
  • 月面(g ≒ 1.62 m/s²)での 70 kg の人の重さ:
    W ≒ 70 × 1.62 ≒ 113.4 N(地球の約1/6)
  • 火星(g ≒ 3.71 m/s²)での 70 kg の人の重さ:
    W ≒ 70 × 3.71 ≒ 259.7 N(地球の約0.38倍)

見かけの重さ(見かけの重量)と加速度の影響

閉じた系で加速度がある場合、物体に働く見かけの重さは変わります。たとえば上向きに加速するエレベーターでは人は重く感じ、下向きに加速する場合は軽く感じます。一般に見かけの重さは m(g ± a)(a はエレベーター等の加速度)で表されます。

まとめ(ポイント)

  • 質量は物質量で、場所によらず一定(単位:kg)。
  • 重量は重力による力で、重力の強さや加速度によって変わる(単位:N)。
  • 体重計は実際には力を測り「kg」に換算して表示しているため、厳密には「質量」そのものを直接測っているわけではありません。天秤は質量比較に有利です。
  • 日常と科学で単語が混同されやすいので、正確に伝えたい場合は「質量」と「重量(力)」を使い分けましょう。

補足:SIにおけるキログラムは長い間原器によって定義されていましたが、現在はプランク定数などの物理定数を基に再定義されています(この定義変更は質量の精密測定に関するものです)。