Mercalli intensity scale(正確には Modified Mercalli intensity scale、日本語では一般に「メルカリ(メルカッリ)震度階級」と呼ばれる)は、地震の強さを評価する「被害や人の感じ方」を基準とした尺度です。リヒタースケール(マグニチュード)が地震のエネルギーや放出された総エネルギー量に基づく一方で、メルカリ(修正版)は建物や地形への被害、家具の倒れ方、人々の感じ方といった「現地で観察される影響」をもとに段階を定めます。そのため、被害の大小や「何人が感じたか」「どの程度感じたか」を表現する際に使いやすい尺度です。

歴史と名称

この尺度はイタリアの地震学者ジュゼッペ・メルカリ(Giuseppe Mercalli, 1850–1914)が考案したもので、当初は10段階でした。1902年にAdolfo Cancaniが12段階に拡張し、さらにAugust Heinrich Siebergらにより改訂されたため、Mercalli–Cancani–Sieberg(MCS)スケールとも呼ばれます。英語圏ではHarry O. WoodとFrank Neumannが英語でまとめ直し、Mercalli–Wood–Neumann(MWN)または一般的にModified Mercalli Intensity(MMI)として普及しました。チャールズ・フランシス・リヒター(後にリヒタースケールを提案した人物)も編集に関与しています。

目盛り(I 〜 XII)の概要

尺度の段階は通常 I(Instrumental)から XII(Catastrophic)までの12段階で表されます。各段階は被害や感じ方の目安で、以下は一般的な説明例です。

  • I - Instrumental:人間は感じないが、地震計で検出される程度。
  • II - Weak:ごくわずかに感じられる。静かな室内でかろうじて認識される。
  • III - Slight:屋内の人が感じることがある。吊り下げ物がわずかに揺れる。
  • IV - Moderate:多くの人が感じ、戸や窓が音を立てることがある。軽微な物の転倒。
  • V - Rather Strong:ほとんどの人が感じる。家具の移動や一部の壁掛けが落ちることがある。
  • VI - Strong:屋内の家具が倒れることがあり、小さな被害が発生。
  • VII - Very Strong:家屋の軽微から中程度の損壊。耐震性の低い建物で大きな被害が出る。
  • VIII - Severe:中〜重度の損壊。石造り建物の破壊が始まる。
  • IX - Violent:多くの建物で重大な損壊。地盤の変形や地割れがみられることもある。
  • X - Extreme:多くの建物が大破、橋梁や鉄道に深刻な損傷。
  • XI - Very Catastrophic:ほとんどの構造物が破壊され、広範囲で地形変化が生じる。
  • XII - Catastrophic:完全な崩壊や地形の顕著な変化。最高レベルの壊滅的被害。

用途と利点

  • 被害状況や住民の報告をもとに現地の影響度を把握しやすく、緊急対応や被災認定、保険査定に活用されます。
  • 歴史的な地震の影響を記録して比較する「マクロ地震学」的なデータとして重要です。過去の地震記録(新聞、日記、役所記録など)から震度を再評価して地震カタログを作成します。
  • 等震度線(isoseismal map)を作成することで震源域の特定や被害分布の解析に役立ちます。

限界と注意点

  • メルカリ階級は被害と人の感じ方に依存するため、同じ地震でも場所(距離、深さ、地盤条件、建物の耐震性)によって大きく変わります。
  • マグニチュード(リヒタースケール等)とは性質が異なり、数値の間で直接・一意的な対応関係はありません。一般に同じマグニチュードでも、浅い震源や軟らかい地盤では強いメルカリ震度が観測されます。
  • 主観的要素(人々の感じ方や報告の偏り)が入りやすいため、現代では地震計による計測(加速度や速度波形)と併用して用いられることが多いです。

測定方法と現代での利用

メルカリ震度は現地調査(被害状況の観察)、住民アンケート、報道記録などを総合して評価されます。現代では強震計データと組み合わせ、被害推定モデルや震度分布図(等震度図)を数値的に作成することで、より客観的な震度マップが得られます。応急対応や土木・建築の被害想定、危険度評価に広く用いられています。

まとめ

Modified Mercalli(メルカリ)震度階級は、被害や人々の感じ方を基準に地震の「現地での強さ」を表す有用な尺度です。歴史的記録の解析や災害対応に適している反面、地盤や建物条件に左右され、マグニチュードと単純に対応付けできない点に注意が必要です。実務では、計測器データや被害調査と組み合わせて用いることが推奨されます。