MSエクスプローラー号は、クルーズ船で、先頭に付く「MS」はモーターシップ(Motor Ship)の略である。就航当初はMSリンドブラッド・エクスプローラー号、その後はMSソサエティ・エクスプローラー号として知られていたことがある。船籍はリベリアに登録されていた。もともとスウェーデンの探検家ラース・エリック・リンドブラッドが発注して建造され、南極などの寒冷地での航海を想定した設計がなされていた。その後何度か売却され、最後の所有者はトロントを拠点とする旅行会社G.A.P. Adventuresで、同社は2004年にエクスプローラーを購入している。
エクスプローラー号は、極域の海を航行するために特化して造られた初期のクルーズ船の一つであったが、2007年11月23日に重大な事故を起こし、南極海で沈没した最初のクルーズ船となった。事故は正体不明の水中障害物(当時は氷塊の可能性が高いとされた)と衝突した結果、船底に約10×4インチ(25×10cm)の亀裂が生じたことに始まる。事故発生は同日早朝で、通常は荒天になりやすい南洋の南のシェットランド諸島付近での出来事だったが、その時は比較的穏やかな海象であった。
衝突直後、乗員と乗客は船内の緊急手順に従って避難し、同航していたほかの船舶や通報を受けた救援部隊の協力を得て救助された。幸いにも死傷者は出ず、全員が無事に退船したと報告されている。チリ海軍が確認したところ、エクスプローラー号は最終的に南緯62度24分、西経57度16分、すなわち南シェットランド諸島とグラハムズ・ランドの間に位置するブランズフィールド海峡の水深およそ2,000フィート(約600メートル)の地点で沈没したとされる。
事故後、現地当局や関係機関による調査が行われ、氷海での航行リスク、航路選定、船体の構造的耐久性、緊急対応手順などが検証された。深海に沈没したこと、船体損傷の性質から大規模な引き揚げは実施されず、燃料や環境汚染のリスクに関しては監視・対応が行われた。今回の沈没は南極地域でのツーリズムと極域航行の安全管理に関する議論を呼び、以後、極地クルーズにおける安全基準や氷海での運航上の注意義務、乗客の避難訓練の重要性などが改めて重視される契機となった。
