筋細胞とは?心筋・骨格筋・平滑筋の種類・構造・機能を解説
筋組織に存在する細胞の一種である筋細胞(別名:筋肉細胞)。筋細胞は収縮によって力を生み出し、身体の運動や内臓の働きを支えます。
筋細胞の成り立ちと一般的な特徴
筋細胞は胚発生期における筋芽細胞(ミオブラスト)から分化してでき、複数の段階を経て筋形成(ミオジェネシス)を行います。細胞内には収縮を担うタンパク質であるアクチンとミオシンが豊富に存在し、これらが規則正しく配列した単位構造であるサルコメアを形成します。
- 形態:細長い管状または紡錘形の形をとることが多い。
- 主要成分:アクチン、ミオシン、トロポニン、トロポミオシンなどの収縮タンパク質。
- 収縮の仕組み:サルコメア内でのアクチン・ミオシン相互作用(滑走説)により短縮が起こる。
- 刺激伝達:神経からの信号や自律的な電気的活動がカルシウムの放出を引き起こし、収縮が開始される(興奮・収縮連関)。
筋細胞の種類と主な特徴
筋細胞には大きく分けて、心筋細胞、骨格筋細胞、平滑筋細胞の三種類があります。それぞれ構造や支配神経、働き、再生能力が異なります。
心筋細胞(心筋)
- 構造:一本の細胞に通常単一の中央核を持ち、横紋(筋原線維の配列による縞模様)を示します。細胞同士が介在板(インターカレイティングディスク)で結合して機械的・電気的に連絡し、心筋全体として同期して拍動します。
- 機能:心臓の収縮を担い、血液を全身に送り出します。自律神経やホルモンで調節されますが、一定のペースを持つ自発性のリズム(自動能)もあります。
- 再生:哺乳類では再生能は限定的で、心筋梗塞などの損傷後は瘢痕化しやすいです。
骨格筋細胞(骨格筋)
- 構造:筋繊維と呼ばれる長い多核細胞で、細胞の周辺(末梢)に多数の核を持ち、明瞭な横紋を示します。筋束を構成する多数の筋線維が結合して筋肉を形成します。
- 機能:随意運動(意識的な運動)を行い、姿勢の維持、呼吸の補助、体温産生などに関与します。運動は運動神経(随意性)によって制御されます。
- 再生:筋芽細胞由来の衛星細胞(サテライトセル)が存在し、軽度の損傷からの修復や増殖に寄与しますが、重篤な損傷や遺伝性疾患(筋ジストロフィーなど)では機能障害が残ります。
平滑筋細胞(平滑筋)
- 構造:紡錘形で横紋はなく、単一の中央核を持つことが多い。個々の細胞は比較的小さく、層状または網目状に配置されることが多いです。
- 機能:内臓や血管壁などの不随意運動を制御します。たとえば、食道や胃の蠕動運動、血管の収縮・拡張、気道の径の調節などを担います。自律神経や局所の化学的・機械的刺激で制御されます。
- 再生:比較的高い増殖能力を持ち、損傷後に増殖して修復することが可能です(ただし過剰な増殖は病的変化を招くこともあります)。
筋細胞の構造的特徴(共通点と相違点)
- 横紋の有無:心筋・骨格筋は横紋を示し、平滑筋は示さない。
- 核の数と配置:骨格筋は多核で核は末梢に、心筋と平滑筋は通常単核で核は中央に位置する。
- 連結様式:心筋は介在板で互いに電気的に連結し協調収縮を行う。骨格筋は神経支配を受ける単位(運動単位)で収縮する。
収縮の仕組みと細胞内構造
筋細胞内では電気的刺激がカルシウムイオンの細胞内流入やサルコプラズミックレチiculum(SR)からのカルシウム放出を引き起こし、トロポニンを介してアクチンとミオシンの相互作用が進行して収縮が起こります。骨格筋や心筋ではT管(横行小管)とSRが密接に働き、迅速な興奮-収縮連関を可能にしています。
臨床的意義
- 心筋:心筋梗塞や心筋症は生活に直結する重大な疾患で、心筋細胞の壊死や機能低下が問題となります。
- 骨格筋:筋ジストロフィー、炎症性筋疾患、運動器障害は運動機能や生活活動に影響します。
- 平滑筋:喘息(気道平滑筋の収縮)、高血圧(血管平滑筋の機能異常)、消化管の運動障害など、多様な臓器で臨床的問題を引き起こします。
まとめ(ポイント)
- 筋細胞は力を生む専門化した細胞で、主に心筋、骨格、平滑筋に分かれる。
- 収縮はアクチン・ミオシンによる滑走機構とカルシウムシグナルに依存する。
- 各タイプは構造・機能・再生能力が異なり、それぞれ特有の疾患リスクを持つ。


筋細胞と神経筋接合部の図 1. 軸索 2. 神経筋接合部 3. 筋繊維(筋細胞) 4. 筋原線維(Myofibril
質問と回答
Q: 筋細胞とは何ですか?
A: 筋細胞とは、筋肉組織に存在する細胞の一種です。
Q: 筋原性とはどのような過程ですか?
A: 筋原性とは、筋芽細胞が筋細胞へと成長し、筋肉を形成するプロセスのことです。
Q: 筋細胞はどのような形態に分類されますか?
A: 心筋細胞、骨格筋細胞、平滑筋細胞です。
Q: 心筋細胞や骨格筋細胞はどのような構造をしていますか?
A: 心筋と骨格筋の筋状の細胞は筋繊維と呼ばれています。
Q: 心筋細胞とは何ですか?
A:心筋細胞は、心臓の部屋を形成している筋繊維です。
Q: 心筋細胞の核と骨格筋線維の核はどう違うのですか?
A:心筋細胞は中央に1つの核を持ち、骨格筋線維は通常、末梢の核を持ちます。
Q: 平滑筋細胞はどのような働きをするのですか?
A: 平滑筋細胞は、食道や胃の蠕動運動のような不随意運動を制御しています。