ニールム地区(アザド・カシミール州・パキスタン)|概要・地理・2005年地震

ニーラム郡ウルドゥー語: ضلع نیلم)は、パキスタンのアザドカシミール州の8つの郡のうちの1つである。最近までムザファラバード郡に属していた。北はギルギット(北部地域)、南と南東はジャンムー・カシミール州のクプワラ郡とバラムラ郡、南西はムザファラバード郡、西はマンセーラ郡に囲まれている。2005年のカシミール地震では大きな被害を受けた。

概要

ニーラム郡は、険しい山岳地帯と深い渓谷が織りなす自然景観で知られる地域です。郡都(行政中心地)はアトムカム(Athmuqam)であり、地域の行政・医療・教育の拠点となっています。人口は郡内の集落に分散しており、住民の多くは農業や家畜飼育、小規模商業で生計を立てています。

地理と気候

郡内を流れる主要河川はニーラム川(インド側ではキシャンガンガとも呼ばれる)で、谷沿いに道路や集落が点在します。地形は標高差が大きく、標高の低い渓谷部から高い山岳地帯まで変化に富んでいます。気候は標高によって大きく異なり、冬は厳しい寒さと積雪、夏は比較的涼しく湿度が低い日が多いのが特徴です。豪雨期や雪解け時には河川の増水や土砂崩れが発生しやすく、交通や生活に影響を及ぼします。

自然環境と生物多様性

ニーラム地区は高山植生や温帯・亜寒帯の森林が広がり、様々な高山植物や鳥類、哺乳類が生息しています。観光客は渓谷の景観、釣り(トラウト)やトレッキングを楽しむことができます。一方で乱開発や違法伐採、頻発する土砂災害は自然環境への脅威となっており、保全が課題です。

経済・生活

地域経済は主に農業(テンサイ、じゃがいも、野菜などの栽培)、家畜(牛・羊・ヤクに近い家畜)、林産物および季節的な観光に依存しています。生活インフラは中心部に整備が進む一方で、山間部や高所の村では未だに電力・医療・教育サービスへのアクセスが限定的な場所もあります。道路は谷沿いに敷かれていますが、土砂崩れや雪で通行止めになることが多く、住民生活や物資輸送に影響を及ぼします。

交通と行政

主要交通路はムザファラバード方面と繋がる谷沿いの道路で、観光客や物流の動脈となっています。ただし、道路状況は季節や地形変動の影響を受けやすく、メンテナンスや災害対策が重要です。行政面では、郡は複数の郡区(ティハシールや村)に分かれており、地域の行政サービスは郡都を中心に提供されています。

観光

ニーラム渓谷は自然美が豊かで、夏季には国内外からの旅行者が訪れます。人気のアクティビティは渓谷観光、トレッキング、釣り、文化体験などです。高地の村や展望地からは雄大な山容と渓谷の景色が楽しめます。ただし、観光地化が進む一方で環境保全や安全対策の重要性が増しています。

2005年カシミール地震(影響と復興)

2005年10月に発生したカシミール地震(大規模な地震)は、ニーラム地区でも甚大な被害をもたらしました。山間部の多くの集落で家屋、学校、医療施設、道路などのインフラが損壊し、通信や交通が長期間遮断された場所もありました。特に地形が急峻な地域では土砂崩れや崖崩れが多発し、救援活動の妨げとなりました。

地震後は、パキスタン政府や国際援助団体、軍やNGOが協力して緊急支援や復興事業を実施しました。被災インフラの再建、学校や診療所の再建設、災害対応能力の向上(避難計画や早期警報の整備)などが進められ、徐々に生活基盤が回復しています。しかしながら、完全な復興には長期的な取り組みが必要であり、災害に強いインフラ整備や住民の防災教育が引き続き重要です。

課題と展望

  • 災害対策:地震・豪雨・土砂崩れへの備え、道路の耐災害化や早期警報システムの整備が不可欠です。
  • インフラ整備:医療・教育・電力・通信の更なる充実が求められています。
  • 持続可能な観光と環境保全:観光振興を図りつつ、自然環境や伝統文化を守る取り組みが必要です。
  • 地域経済の多様化:農業の改良や地域産業の振興、観光収入の安定化を通じた生活向上が期待されます。

ニーラム地区は美しい自然と独特の山岳文化を持つ地域であり、適切な支援と持続的な開発が進めば、住民の生活向上と観光資源の保全を両立できる可能性を秘めています。

下位区分

行政的には、2つのテシルに分かれています。

  • Athmuuqaam Tehsil(アスムーカーム・テシル
  • Sharda Tehsil

パキスタンの言語

この地区では多くの言語が話されている。しかし、ヒンドコ語が主流で、西部、南西部、中央部で多く話されている。シナ語とカシミール語は、北東部のBaramullaとAstore地区との境界付近と、北部のDiamir地区との停戦ライン付近で話されています。また、バラムラとの紛争線上のいくつかの村では、パシュトー語が話されています。


AlegsaOnline.com - 2020 / 2025 - License CC3