プラーク(plaque)とは|歯垢・動脈硬化・微生物プラークの定義と種類
Plaque(プラーク):平らな板状の物体を意味する言葉。
- 記念碑などの平らな人工物
プラークの種類とそれぞれの特徴
- 培地上のプラーク(実験室で観察されるプラーク)
寒天などの培地上で見られる平坦な増殖像や、ウイルスが細菌層に作る透明な「プラーク(パッチ)」などを指します。培養でのプラークは微生物の増殖・死滅や相互作用を示す指標になります。 - 歯に付着するプラーク(歯垢)
歯の表面に付着する白い粘着性の膜で、細菌(口腔常在菌)と唾液中のタンパク質、食べかすなどが混ざったバイオフィルムです。長期間放置するとミュータンス菌などによる酸産生でエナメル質が溶け虫歯(う蝕)を引き起こし、さらに歯周病(歯肉炎・歯周炎)の原因にもなります。 - 動脈硬化性プラーク(アテロームプラーク)
動脈内膜にコレステロールや脂質、炎症細胞(マクロファージ由来の泡沫細胞)、結合組織が蓄積してできる厚い病変です。プラークが破綻すると血栓が形成され、心筋梗塞や脳梗塞など重篤な循環器イベントを引き起こします。 - 人工物としてのプラーク(記念碑など)
記念プレートや銘板など、平らな形状の標識や装飾物も「プラーク」と呼ばれます。
歯垢(歯のプラーク)について詳しく
構成:多様な細菌群(グラム陽性球菌、グラム陰性桿菌など)、唾液由来の糖タンパク質、食物残渣、細胞片で構成されたバイオフィルムです。
形成過程:歯面に形成された獲得被膜(ペリクル)に細菌が付着、増殖して多層化しバイオフィルムとなります。食後の糖を利用して酸を産生し、これが虫歯の原因になります。
予防と除去:日常のブラッシング、フロス(糸ようじ)や歯間ブラシでの機械的除去、うがい薬(抗菌性マウスウォッシュ)、フッ化物配合歯磨剤の使用、定期的な歯科でのクリーニング(スケーリング)が有効です。プラークは軟らかいため早期に落とせば歯石化(石灰化)を防げます。歯石になると歯科での除去が必要です。
動脈硬化性プラークの成り立ちと臨床的意義
成因:高LDLコレステロール、糖尿病、高血圧、喫煙、慢性炎症などが動脈内皮を障害し、脂質が累積してマクロファージが取り込み泡沫細胞を形成。線維性の被膜(Fibrous cap)と脂質中心核(Lipid core)を伴うアテロームが形成されます。
リスク:プラークの不安定化・破綻により急性の血栓形成を招き、心筋梗塞や脳梗塞の原因になります。安定型プラークは症状が出にくい一方、薄い被膜で脂質核が大きい「脆弱プラーク」は破綻しやすいです。
診断:血液検査(脂質プロファイル)、非侵襲的画像(頸動脈エコー、CT血管造影、心臓CTなど)や侵襲的検査(冠動脈造影)で評価します。
治療・管理:生活習慣改善(食事・運動・禁煙)、スタチンなどの脂質低下薬、抗血小板薬による二次予防、重症例には血管形成術(ステント留置)や外科的血行再建(バイパス術・内膜摘除術)が行われます。
微生物プラーク(バイオフィルム)の特徴と対策
特徴:プラークはバイオフィルムであり、細菌が粘性のマトリックスを作って集合しているため、単剤の抗生物質やうがいだけでは完全に除去・死滅させにくい性質があります。構成細菌間のコミュニケーション(クオラムセンシング)や耐性化が問題となります。
臨床的対策:機械的除去(ブラッシング・デブリードマン)と抗菌療法の併用、表面処理(インプラントやカテーテルの抗菌被覆)などが有効です。慢性の感染や医療器材関連感染ではバイオフィルム対策が重要です。
まとめと実用的アドバイス
- 「プラーク」は文脈によって意味が大きく異なる(実験室の観察像、口腔内の歯垢、血管内のアテロームなど)。
- 歯垢は日常的な歯磨きと定期的な歯科受診で予防可能。放置すると虫歯や歯周病の原因になる。
- 動脈硬化性プラークは生活習慣と密接に関連し、放置すると重大な心血管イベントにつながる。リスク因子の管理が重要。
- 微生物プラーク(バイオフィルム)は耐性化しやすいため、薬物療法だけでなく機械的清掃・表面処理など多角的対策が求められる。
必要であれば、各プラークの診断方法や治療法についてさらに詳しい解説(例えば歯科的なブラッシングの具体的手順、動脈プラークの画像診断の読み方、バイオフィルム研究の最新知見など)を追記します。どの分野を深掘りしたいか教えてください。