加圧重水炉(PHWR)は、重水(酸化重水素、D2O)を中性子減速材として、また多くの場合は一次冷却材としても用いる原子力発電炉の一種である。重水は通常の水よりも中性子を効率よく減速するため、良好な中性子経済を生み、低濃縮ウラン燃料や天然ウラン燃料の使用を可能にする。一般的な原子炉の背景は 原子炉の概要 を、またこの炉型を最初に発展させた国については カナダでの開発 を参照。
設計上の特徴と構成要素
多くのPHWRでは、圧力管または原子炉容器によって重水を加圧し、沸騰させずに高温まで上昇させられるようにしている。加圧された冷却材は蒸気発生器へ熱を渡すか、設計によっては直接タービン系へ熱を送る。重水は減速材として中性子を天然ウランで核分裂が起こりやすいエネルギーまで減速する役割を担い、ウラン燃料 と 重水 の詳細とも関係している。減速材と冷却材の役割は、炉型によって分離される場合もあれば、同じ媒体が兼ねる場合もある。運転では圧力の管理と沸騰の回避が中心であり、加圧、高い運転温度、および 沸騰 の防止が重要となる。
特徴と運転上の利点
- 中性子経済: 重水は軽水より中性子吸収が少ないため、より少ない濃縮燃料でも連鎖反応を維持しやすい。
- 燃料の柔軟性: PHWRは天然ウランまたは軽く濃縮したウランで運転でき、トリウム系燃料など別の燃料サイクルにも適応しやすい。
- オンライン燃料交換: 多くのPHWRは停止せずに燃料交換が可能で、設備利用率の向上につながる。
- コスト面のトレードオフ: 重水は製造と維持に費用がかかるが、経済性 の観点では、大規模な濃縮設備を必要としない利点が相殺要因となることが多い。
カナダのCANDU系列は最もよく知られたPHWRの系譜であり、その発展では単一の大型圧力容器よりも、モジュール式の圧力管構造が重視された。この構成は保守や安全面で特有の意味を持ち、複数の国で輸出・改変されてきた。
歴史、用途、主な違い
PHWR技術はカナダで生まれ、成熟し、その後ほかの地域でも各国の燃料戦略や資源に合わせて採用・改変された。濃縮インフラが限られる国々では、発電用として、また燃料サイクルの戦略的な柔軟性を求めてPHWRが選ばれてきた。この設計は、減速材の選択や、実装によってはオンライン燃料交換および圧力管配置において、加圧軽水炉(PWR)や沸騰水型原子炉(BWR)と対照的である。減速と中性子挙動については 減速材の概念 を参照。さらに、専門的な原子力エネルギー資料として 重水の性質、冷却材の挙動、熱設計 も利用できる。
PHWRは、燃料資源の最適化、運転の柔軟性、そしてトリウム利用のような特定の国家的燃料戦略が重視される場面で、今なお重要である。その独特の工学的なトレードオフの組み合わせは、世界各地の複数の原子力計画における炉型選択と燃料サイクル計画に影響を与え続けている。