命題とは何か?哲学・論理学での定義、真理値と具体例
命題とは何かを哲学・論理学の視点で分かりやすく解説。真理値・表現の違い、アリストテレスや論理実証主義の具体例で理解を深める入門ガイド。
命題とは、哲学や論理学の用語である。一般には、真か偽かを判定(あるいは真理値を割り当て)できる内容を表す文や表現を指します。すなわち真理値(真/偽)を持つ文が命題です。命題と呼べるためには、その表現が客観的に真であるか偽であるかを理論的に決定できる(あるいは少なくとも真偽が意味を持つ)ことが要求されます。日常的には多くの教師や論理学の学習者が文と命題をほぼ同義に用いていますが、厳密には「文」は言語的表現(文字列)を指し、「命題」はその表現が伝える意味内容や真理条件(真理値を担う抽象的対象)を指す、と区別されることがあります。
命題と表現(同義性)
同じ命題は異なる言語や異なる言い回しで表現されることがあります。命題は表現形式そのものではなく、その表現が示す意味や真理条件に関心があるからです。したがって、見た目の違う文が同じ真理条件を持つとき、それらは同じ命題を表しているといいます。二つの異なる文が同一の意味を持つ場合、それらは互いに同義(同じ命題を表す)であると言われます。
例:
- "Snow is white"(英語)と"Schnee ist weiß"(ドイツ語):異なる言語の文であるが、伝える内容(雪が白い)は同じで、同じ命題を表す。
- 「雪は白い」と「雪は白色である」:日本語内でも形式が異なるが、通常は同一の命題を表すとされる。
命題の種類:原子命題と複合命題
論理学では命題を構造的に区別します。最も単純なものは原子命題(predicate と個別項からなる基本的な陳述)で、これに論理結合子(かつ、または、ならば、否定など)や量化子(すべての〜、ある〜が)を用いて結合したものが複合命題です。例えば:
- 原子命題の例:「ソクラテスは人間である」
- 複合命題の例:「すべての人間は死すべきものである」や「もし雨が降れば道は濡れる」
複合命題の真偽は、その部分命題の真偽と結合の論理的性質によって決まります(真理値表に基づく評価など)。
アリストテレスの考え方
アリストテレスのの論理学(伝統的なシラリスティック論理)では、命題は主語と述語を結びつけてある性質や関係を主張・否定する種類の文を指します。例として「すべての人間は死すべき存在である」「ソクラテスは人間である」などがあり、それぞれの文で主語(例:ソクラテス)に対して述語(例:人間である、死すべきである)という属性が付与され、その付与が真であるか偽であるかが判断されます。アリストテレスにおけるこれらの命題は、カテゴリーや量(全称・存在)を含む形式で論理的に扱われました。
論理実証主義の立場と批判
論理実証主義(論理実証主義者)は、命題の意味や有意味性を「経験による検証可能性」や「論理的帰結可能性」に求めました。したがって、観察や実験で検証できないとされる命題は無意味(意味を持たない、または認知的価値がない)と見なす傾向があります。例えば、神の存在に関する命題(「神は存在する」「神は存在しない」)は、論理実証主義の基準では検証不能とされ、理論的意味を欠くと評価されることがありました。これには哲学的に大きな反論があり、検証主義自体の検証可能性が問題になるなどの批判が寄せられています。
現代論理学・言語哲学での取り扱い
現代の形式論理や言語哲学では、命題はより細かく分析されます。命題と文(sentence)、発話(utterance)、命題態度(belief, desire など)を区別し、指示対象(指示語、時制、文脈依存性)によって命題の真理条件が変わることを認めます。例えば「私は今ここにいる」という文は発話者や発話時点に依存するため、そのままでは抽象的な一意の命題を表さない場合があります(これを指示表現・文脈依存性と呼ぶ)。
また、命題は形式化して論理的推論の対象とされます。命題論理(命題を原子として論理結合子で扱う)や述語論理(個体と述語を扱い量化子を導入する)により、論理的妥当性や充足可能性、証明可能性などが精密に研究されています。さらに、直観主義論理や様相論理、時相論理など、真理や証明の取り扱いを変える論理体系も存在します。
まとめと注意点
要約すると、命題は「真または偽と評価できる意味内容を持つ表現(文)」であり、同じ命題は異なる言語表現でも共有され得ます。論理学では命題の構造(原子・複合)、論理結合子、量化子、文脈依存性などを考慮して厳密に扱います。一方で、どの表現が「同じ命題」を表しているかは、語用論的・意味論的な議論の余地があり、哲学的見解によって取り扱いが異なる点に注意が必要です。
質問と回答
Q:命題とは何ですか?
A: 命題とは、真偽を証明できる真理値を持っている文のことです。命題が有効であるためには、その命題が真であるか偽であるかを証明することが可能でなければなりません。
Q: 命題はどのように表現されるのですか?
A: 命題は、P、Q、Rのような大文字で表されることが多いです。
Q: 2つの異なる命題が同じことを意味することはありますか?
A: はい、2つの異なる命題が同じことを意味する場合、それらは同義であると言われます。例えば、「雪は白い」(英語)と「Schnee ist weiß」(ドイツ語)は、言語が違っても同じ意味である。
Q:アリストテレス論理学では、命題はどのような文になるのでしょうか?
A:アリストテレス論理学では、命題とは、ある行為や述語が主語を通して行われたことを確認したり否定したりする、特定の種類の文章を指します。例としては、「すべての人間は死ぬ」「ソクラテスは人間である」などがあります。
Q:論理実証主義は、真理値を決めることができない命題について、どのように言っているのか?
A:論理実証主義は、真理値を決めることができない命題は無意味であるとする。例えば、神々の存在に関する記述は、論理実証主義の下では証明できないので、この理論によれば、これらの記述は論理的意味を持たないことになる。
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