Protect Intellectual Property Act (Preventing Real Online Threats to Economic Creativity and Theft of Intellectual Property Act)、通称PIPAは、インターネット上の著作権侵害を阻止するための米国の法律案である。この法律は、著作権者が著作権を侵害するウェブサイトに対処するための新しい方法を提供するものである。

批評家たちは、この法律案は隠れたリスクと意図しない結果をもたらすと指摘した。

背景と提出経緯

PIPAは2011年に米上院に提出され、オンライン上の海賊版サイトや「悪質な海賊版者」に対して権利者がより強い対抗手段を持つことを目的としていた。提案者らは、海外にホスティングされたサイトやドメインを通じた違法配信が米国の文化産業や雇用に大きな損害を与えていると主張した。

主な内容(要点)

  • ドメイン名の遮断:著作権を侵害すると判断された外国のサイトのドメインを、米国内のDNSプロバイダなどによりアクセス不能にする手続き。
  • 決済・広告の停止:対象サイトに対してクレジットカード会社や決済処理業者、広告ネットワークが取引や広告配信を停止するよう求める規定。
  • 捜査・差止命令の強化:権利者が裁判で勝訴した場合、サイト運営者以外の第三者(プロバイダや決済事業者など)にも措置を命じ得る仕組み。

支持側の主張

支持者は、従来の手段(通知と削除を求めるDMCAなど)が十分でない場合に迅速に違法サイトの収益源を断つことができ、著作権者の権利を保護し雇用を守る効果があると述べた。特に、海外に所在する「悪質サイト」は現行法だけでは対処が難しいとの主張が強かった。

反対側の懸念点

  • 表現の自由と検閲のリスク:広範であいまいな基準により、合法的なコンテンツや小規模サイトが誤ってブロックされる可能性。
  • 手続きと司法の独立性:権利者の主張だけで広範なブロッキングや支払停止が可能になると、十分な審査・異議申立ての機会が損なわれる恐れ。
  • インターネット基盤への影響:DNSレベルでのブロックは技術的に脆弱性を生み、DNSSECなどのセキュリティ対策と相容れない場合があるという指摘。これによりインターネット全体の信頼性やセキュリティが低下する懸念が示された。
  • 経済的影響:プラットフォーム事業者や小規模サイトが複雑な法的リスクを抱えることで、イノベーションやスタートアップの活動が萎縮する可能性。

世論と抗議、立法の結末

2012年1月、PIPAと下院の姉妹法であるSOPA(Stop Online Piracy Act)に対して大規模なオンライン抗議運動(いわゆる「ブラックアウト」)が起き、多くの主要サイトや団体が反対を表明した。抗議以降、議会での支持は急速に後退し、法案は最終的に採決が保留され、事実上廃案となった。

その後と現状

PIPA自体は成立しなかったが、著作権侵害対策の必要性は引き続き議論されている。法案の失敗は、強権的なオンライン規制が技術的・表現の自由上の問題を引き起こすことを国民・立法者に示した一方で、権利者は別の手段(国際協力、ターゲットを絞った執行、プラットフォームとの連携強化など)を模索している。

まとめ(ポイント)

  • PIPAは著作権保護を強化することを目的とした米国の提案法案だが、ドメイン遮断や支払停止などの強力な手段が論争を招いた。
  • 反対派は表現の自由、手続きの公正性、インターネットの技術的健全性への影響を懸念した。
  • 2012年の広範な抗議活動を受け、法案は成立せず事実上棚上げとなったが、オンライン著作権保護の議論は現在も続いている。