ケナは、英語では "kena" とも書かれ、ペルーやアンデス地方の伝統的な笛です。一般的には縦に構えて吹く縦笛(エッジ・フルート)で、竹や木から作られることが多く、6つの指穴と1つの親指穴(合計7つの穴)を持ち、両端が開いた形状が特徴です。音を出す際は上端の切り欠き(ノッチ)に下唇とあごをあて、切り欠きの上に向かって息を下向きに吹き付けることで、エッジに空気を当てて振動させます(原理は横笛やオカリナと異なります)。音を出すテクニックは息の角度や口の形、あごの位置で大きく変わり、豊かな表現が可能です。伝統的なクエナは一般にト長調(G)に調律され、すべての穴をふさぐと最低音が出るようになっていますが、現代ではさまざまな調(キー)で作られています。
構造と素材
ケナの胴はほぼ円筒形のボア(管内径)を持つことが多く、上端の切り欠きと下端の開口が音程と音色に影響します。伝統材料のほか、現代では木材、プラスチック(PVC)や金属のものもあり、用途や耐久性に応じて選ばれます。内部は滑らかに仕上げられ、穴の大きさや間隔は音程に直接関係します。長さや内径の違いで音高が変わり、種類ごとに得られる最低音や音域が異なります。
音色と奏法
ケナは息が混ざったような、やや「のどを絞った」ような柔らかく空気感のある音色が特徴です。口の形(アンブシュア)、息のスピード、角度を細かく変えることで、ビブラートやスラー、装飾音(トリルやグリッサンド)など多彩な表現ができます。基本的な音域は1オクターブ前後ですが、オーバーブロー(倍音を利用した上の音を出す奏法)によってさらに上の音域を得ることも可能です。アンデス音楽では、ケナ独特の息づかいを活かした長いフレーズや呼びかけのような旋律がよく用いられます。
種類
ケナチョ(英語では「quenacho」や「kenacho」と表記されることもあります)は、ケナより大きく低音域を担当するタイプで、同じ構造を拡大したものです。多くの場合、キーはニ長調(D)などケナより下の調に調律され、クエナよりおよそ4度低い音程になります。ケナ系の楽器にはほかにもサイズや調が異なる複数のバリエーションがあり、アンサンブルで複数のクエナを組み合わせてハーモニーを作ることもあります。
歴史・用途・現代の利用
ケナはアンデスの先住民文化に根差した楽器で、祭礼や労働歌、民俗舞踊の伴奏などに古くから使われてきました。20世紀中頃以降、民謡の復興運動や民族音楽の国際的な注目により、ヌエバ・カンシオン(Nueva Canción)などの運動を通じてポピュラー音楽にも取り入れられました。1960〜1970年代にはヌエバ・カンシオンのミュージシャンがクエナを使用し、現在もイラプ(Illapu)などのグループをはじめ、アンデスのバンドで定期的に用いられています。1980〜1990年代以降のロックやフォーク系のグループでも、曲の色付けとしてクエナが使われることがあります。また、ケナは映画音楽や世界各地のワールド・ミュージックの録音でも広く採用されており、ワールドミュージックの一要素として知られています。
手入れと入門
天然素材のケナは湿気や乾燥で割れが生じることがあるため、使用後は湿気を取り、直射日光や極端な温度変化を避けて保管します。木製・竹製のものは時々オイルを薄く塗って乾燥を防ぐと長持ちします。初心者はまず正しいリッププレースメント(口の当て方)と息づかいを練習し、ゆっくりとした音階練習から始めると習得が早くなります。
ケナは単純な構造ながら表現力に富み、アンデス音楽だけでなく現代の多様な音楽ジャンルでも魅力的な音色を提供します。興味がある場合は、地域の民族楽器店やワークショップで実際に触れてみることをおすすめします。

