レチタティーヴォ(recitativo)とは|オペラの語り歌:定義・種類・歴史
レチタティーヴォの定義・種類・歴史をわかりやすく解説。オペラで物語を紡ぐ語り歌の魅力と変遷を初心者にも理解できるよう紹介。
レチタティーヴォ(イタリア語:recitativo)とは、話すような抑揚で物語や台詞を素早く伝える音楽の表現様式です。語源的には「朗読する」「語る」を意味し、メロディよりも言葉の明瞭な伝達(台詞的な抑揚= declamation)を重視します。
用いられる場面
レチタティーヴォは、オペラ、オラトリオ、カンタータなど、物語やドラマを展開する場面で頻繁に使われます。初期のオペラ(17世紀初頭)では、アリアなどの歌唱的な場面と場外の説明・台詞をつなぐ役割を果たしました。
種類と特徴
- レチタティーヴォ・セッコ(recitativo secco):通奏低音(バッソ・コンティヌオ)だけの伴奏で、通常チェンバロ(またはオルガン)とチェロやヴィオローネなど低音楽器が和音(通奏低音の数字記譜=フィギュアード・バス)を支えます。リズムは自由で拍節感が弱く、小節線が省かれたり自由な拍取りで記譜されることが多いです。
- レチタティーヴォ・アコンパニャート(recitativo accompagnato)(伴奏付きレチタティーヴォ):オーケストラや弦楽合奏などが伴奏して、感情や劇的場面を強調します。短いオーケストラの和音や動機で緊張感を高めることが多いです。場合によっては「レチタティーヴォ・ストロメンタート」「obbligato を伴うレチタティーヴォ」と呼ばれることもあります。
- アリオーソ(arioso):レチタティーヴォとアリアの中間に位置する表現で、メロディ性が増しながらも言葉の連続性・語りかけを保つものです。
伴奏・即興
初期バロックでは、チェンバロやリュートなどの鍵盤・撥弦楽器が和音を支え、チェロやコントラバスが最低音を担当する通奏低音編成が一般的でした。奏者はしばしば即興的に和音や装飾を書き加え、歌に応じた伴奏を作り上げます。演奏実践として、チェンバロ奏者が即興で演奏することもあります。
歴史的背景と主要作曲家
レチタティーヴォの誕生は17世紀初頭のイタリアにさかのぼります。フロレンティン・カメラータ(フィロソフィーと音楽を論じたグループ)とその周辺で、台詞的な音楽表現を目指す試みが行われました。代表的な初期の作曲家にはジャコポ・ペーリ(Jacopo Peri)やジュリオ・カッチーニ(Giulio Caccini)、そしてクラウディオ・モンテヴェルディ(Claudio Monteverdi)がおり、モンテヴェルディの《オルフェオ》などに発展が見られます。
バロック期を通じてヘンデル(ヘンデル/オラトリオやオペラ)や後のモーツァルト(モーツァルト/オペラの台詞回し)もレチタティーヴォを巧みに用いました。19世紀に入ると、ロッシーニ、ヴェルディらは劇的効果を強めるために伴奏付きレチタティーヴォを多用し、やがてワーグナーは全曲を通して音楽が流れる「音楽劇」を志向して、伝統的なアリアとレチタティーヴォの区別を曖昧にしていきます(ワーグナーの影響)。
機能と表現
レチタティーヴォの主な機能は物語の進行と台詞の伝達です。感情の移り変わりや状況説明を素早く行い、必要に応じてアリアや合唱へと橋渡しします。音楽的にはシンプルに見えても、言葉のアクセントや意味を音で具体化するために高度な表現技術が求められます。
19世紀以降の変化と現代
19世紀後半からは、作曲家たちがより連続的で統合された音楽構成を志向したため、レチタティーヴォとアリアの境界が曖昧になっていきます。ワーグナー以降の音楽劇、さらに20世紀以降の作曲家たちは、語り歌の要素をさまざまに再解釈し、現代オペラや声楽作品においてもレチタティーヴォ的な要素は残り続けています。
演奏上の注意点
- 言葉の明瞭さを最優先にすること(母音や子音の発音、アクセント)。
- リズムは「言葉に従う」自由さを持つが、共演者(伴奏者)との呼吸と合図が重要。
- 通奏低音奏者の即興的な和音実現(フィギュアード・バスの解釈)や装飾の判断は、演奏スタイルにより異なる(史的演奏習慣の研究が役立つ)。
まとめると、レチタティーヴォは「語る歌」としてドラマを進めるための重要な手法であり、伴奏形態や作曲家の時代性によって多様な表情を持ちます。作品を理解する際には、その時代の上演慣習や作曲家の書法を踏まえることが大切です。
質問と回答
Q: 音楽におけるレチタティーヴォとは何ですか?
A: レチタティーヴォとは、音楽の一種で、あたかも話しているかのように素早く会話的に物語を伝えることです。
Q:「レチタティーヴォ」とはどういう意味ですか?
A:「レチタティーヴォ」とは、イタリア語で「朗読する」という意味です。
Q:レチタティーヴォはどのような音楽で使われるのですか?
A:レチタティーヴォは、オペラ、オラトリオ、カンタータに使われます。
Q: オペラはいつ生まれたのですか?
A:オペラは1600年頃に発明されました。
Q:鍵盤楽器が1つしかない場合、レチタティーヴォはどのように伴奏されるのが一般的ですか?
A:レチタティーヴォが鍵盤楽器の伴奏だけの場合は、「レチタティーヴォ・セッコ」または「ドライ・レチタティーヴォ」と呼ばれています。
Q: 「レチタティーヴォ・セッコ」と「レチタティーヴォ・アパッチャート」はどう違うのですか?
A: 「レチタティーヴォ・セッコ」は鍵盤楽器のみの伴奏で、「レチタティーヴォ・アコンパニャート」はオーケストラの伴奏です。
Q:レチタティーヴォに小節線はありますか?
A: いいえ、レチタティーヴォには規則的な拍子がないため、小節線はありません。
百科事典を検索する