RR Lyraeは、りゅうおう座にある脈動する変星である。この星が代表となって命名された「RR Lyrae 変数」は、短周期で規則的に明るさを変える典型的な種族を形成しており、個々の典型的な周期は約13時間36分(約0.57日)である。脈動に伴って半径は変動し、観測では半径が太陽の半径のおよそ5.1倍から5.6倍の範囲で変化することが示されている。
物理的性質と進化
RR Lyrae型星はスペクトル型で言えば主にA型(まれにF型)に相当する温度域にあり、質量は一般に太陽の約半分程度(おおむね0.5–0.8太陽質量)と推定される。これらは進化的には赤色巨星段階で大きく質量を失い、その後水平分枝の不安定帯(instability strip)を横切る段階にある古い恒星である。脈動の駆動は主にヘリウム不連続層でのκ(カッパ)機構によると考えられ、これが周期的な膨張・収縮(光度とスペクトルの変化)を引き起こす。
分類と周期・振幅の特徴
RR Lyrae型は観測的には主に以下のサブタイプに分類される:
- RRab:基礎振動(fundamental mode)で脈動、周期はおおむね0.4–0.8日、光度曲線は非対称で振幅が大きい。
- RRc:第1高調波(first overtone)で脈動、周期は短めでおよそ0.2–0.5日、光度変化は比較的正弦波に近い。
- RRd:基礎振動と高調波の二重周期を示す二重振動星。
振幅はバンドにもよるが数十分の一から約2等級に及ぶことがある。
天体物理学的・天文学的意義
RR Lyrae型の星は、特に古い恒星集団が多い球状星団や、近傍の銀河(大マゼラン雲、小マゼラン雲、矮小楕円・矮小球状銀河など)で多く見られる。これらは年齢が10ギガ年を超えるような古い「母集団II(Population II)」の恒星であり、金属量(重元素量)が低いという特徴を持つ。
距離測定での役割(標準ロウソクとしての利用)
RR Lyrae星はその比較的一様な絶対明るさと脈動周期に基づく関係性により、銀河系内および近傍銀河への距離指標として重要である。可視光帯では金属量に依存するため補正が必要だが、赤外線帯では周期-光度(P–L)関係がより狭く、距離決定に非常に有用である。球状星団の距離測定や、銀河ハロー中の距離・年齢・化学進化の研究に広く用いられている。
距離の較正と歴史的測定
局所的なRR Lyrae型変光星の周期–光度関係を正確に決めることで、より遠方にあるRR Lyrae型星の距離を推定できる。2002年にはハッブル宇宙望遠鏡を用いた高精度パララックス測定により、典型的なRR Lyrae星の距離が約5%程度の誤差で決定された例があり、その個別の測定値は約854光年(約262パーセク)と報告された。これ以前のヒッパルコス衛星や地上測定は精度が劣ることが多かったが、これらの測定と合わせて校正が進められてきた。近年はGaia衛星による高精度パララックスが得られ、RR Lyraeの絶対等級やP–L関係の精度はさらに向上している。
研究上の応用
RR Lyrae星は次のような研究に欠かせない:
- 球状星団や銀河ハローの距離・空間分布の決定
- 古い恒星集団の年齢や金属量分布の推定
- 局所宇宙における銀河形成史・降着履歴の解明(例:矮小銀河の合併痕跡の探索)
まとめ
RR Lyrae型変光星は、短周期で比較的一様な絶対明るさを持つ古い低金属量恒星であり、天文学において標準ロウソクの一つとして重要な役割を果たしている。スペクトルは主にA〜F型、質量は低め、脈動はκ機構によって駆動される。観測・理論の双方で研究が進み、特に近年のパララックス精度向上により距離尺度としての信頼性はさらに高まっている。


