シュレンケラは、ドイツのバイエルン州バンベルグにある歴史ある醸造所兼居酒屋で、地元はもちろん観光客にも非常に人気があります。特に有名なのが「Aecht Schlenkerla Rauchbier(本物のシュレンケラーの燻製ビール)」で、濃厚でベーコンのようなややスモーキーな香りと風味が特徴です。定番のラオホ(燻製)ビールのアルコール度はおよそ5.1%。もう一つの名物が「ウルボック(Ur-Bock)」で、名前の由来や季節供給に関しては後述します。醸造所のタヴェルンでは一部のビールを伝統的にオーク樽から注いで提供するなど、古い様式を今に伝えています。

歴史と名前の由来

シュレンケラは数百年続く老舗で、バンベルグの伝統的なビール文化を色濃く残す場所です。店名「シュレンケラー(Schlenkerla)」は、ドイツ語の「シュレンケン(schlenkern)」=「ぶら下がる、ゆらゆら動く」に由来するという説が伝わっています。昔、この酒場のオーナーだった人物が馬車に轢かれて足を痛め、腕や体の一部をぶら下げるような歩き方をしたため、人々が彼を「シュレンケラー」と呼ぶようになった、といった語り草があります。語尾に「-la」が付く呼び方はオランダベルギー、西ドイツ、フランス北部などの方言でも見られる形です。現在でも酒場の入り口には、このエピソードを思わせる像や装飾が残っており、訪れる人の目を引きます。

燻製ビール(ラオホ)の特徴と製法

ラオホ(Rauchbier)は、麦芽(モルト)を燻煙して乾燥させる工程によってスモーキーな香味を持たせたビールです。シュレンケラでは伝統的にブナ(beech)などの硬木で麦芽を燻しており、その香りが「ベーコンのよう」と形容される独特の風味を生み出します。燻煙の強さや焙煎度合いにより、同じラオホでも味わいの幅が広く、シュレンケラの定番ラオホはしっかりとした燻香がありつつ、モルトの甘みとしっかり調和しています。

提供方法も特徴的で、タヴェルンでは木製の樽から注がれることが多く、これが香りや飲み口に微妙な影響を与えることもあります。ラオホは常温寄りの「セラー風」温度(やや冷たいがキンキンではない)で飲むのが一般的で、温度が低すぎると香りが閉じてしまうので注意してください。

ウルボック(Ur-Bock)について

「ウルボック(Ur-Bock)」は、よりアルコール度が高く、濃厚な味わいの強ビール(ボック系)の一種として供されます。語の構成として Ur は「原始的・本来の」を意味し、Bock は文字通り「雄ヤギ(ゴート)」を象徴することが多いですが、ビールの名称としては歴史的・地域的な由来が複雑に絡んでいます(「ボック=山岳部のビール」「アインベック由来」など諸説あり)。シュレンケラのウルボックはアルコール度が高め(約6.5%前後)で、濃いモルト感と燻香がしっかり感じられるため、短時間でじっくり味わうタイプのビールです。

季節的には強ビールを楽しむ時期(いわゆる「Starkbierzeit」、強ビールの季節)に合わせて限定的に提供されることが多く、伝統的な行事や季節に応じて販売期間が変わります(例として 10月 から 1月6日 までといった期間に出される年もありますが、年によって異なるため訪問前に最新の提供情報を確認してください)。

飲み方・料理との相性・訪問のコツ

  • 味わいの特徴:ラオホはパワフルな燻香としっかりしたモルトの甘みが同居します。最初は香りを楽しみ、ゆっくりと温度が上がるにつれて隠れていた香味が開いてきます。
  • 料理との相性:燻製肉、ソーセージ、ローストビーフ、濃厚なチーズ、燻製魚などスモーキーまたは脂のある料理と相性が良いです。甘みのあるドイツ料理(シチューやロースト)とも合います。
  • 注文・提供:地元では半リットル弱の「Seidla」などで供されることが多く、タヴェルンは混雑するので時間に余裕を持って訪れると良いでしょう。店内は長年の燻煙の香りが染みついているため、衣類にも匂いがつくことを覚悟してください。
  • 購入:ボトル詰めされたラオホは国内外の専門店やオンラインで入手可能です。限定のウルボックは売り切れや販売期間が短いことが多いので早めの購入をおすすめします。

伝説と実際

ラオホ誕生の起源については諸説あります。伝承の一つに「醸造所で火事が起き、消火後に偶然スモーキーな香りの残った麦芽で仕込んだところ好評だった」という話がありますが、確証はなく伝説の域を出ません。実際には寒冷地で麦芽を乾燥させるために屋内で煙を使っていたことが自然に燻製香のある麦芽生産につながり、それが地域の味として定着した、というのがより現実的な説明とされています。

最後に、シュレンケラは単なる観光名所ではなく、バンベルグのビール文化を今に伝える生きた場です。初めてなら定番のラオホと、機会があれば季節のウルボックを試してみてください。燻製の強い風味は好みが分かれますが、合えば忘れがたい体験になります。