堆積物(土砂)とは:定義・形成過程・種類・堆積岩への移行
堆積物(土砂)の定義から形成過程、種類、堆積岩への移行まで図解と事例でわかりやすく解説。地質学入門に最適な完全ガイド。
堆積物(土砂)とは、風や水、氷などによって運ばれ、地表や水底に累積した砂や礫、泥などの小さな粒子の総称です。たとえば、堆積した後、長期間その場に留まって他の堆積物に覆われることがあり、時間とともに圧力で固くなって堆積岩に変化する場合もあります。
形成過程(風化・侵食・運搬・堆積)
- 風化:岩石が物理的(凍結・膨張など)や化学的(酸化・溶解など)に分解されて粒子になります。
- 侵食と運搬:粒子は雨・川・海流・風・氷河などによって削られ、下流や海へと運ばれます。運搬距離や流速により粒子の角が丸くなったり、サイズが選別されたりします。堆積物はしばしば再び侵食され、新しい場所に再堆積することがあります。
- 堆積:運搬力が落ちる場所(河川の伏流域、三角州、海底、湖底、砂丘の裾など)で粒子が沈殿し、層を成して積み重なります。
粒径分類と堆積物の種類
- 粒径による分類:粘土(clay)・シルト(silt)・砂(sand)・礫(gravel)など。粒径は堆積環境や運搬力を反映します。
- 起源による分類:
- 砕屑(沖積)堆積物:元の岩石の破片からなるもの(例:砂、シルト、粘土)。これらが固結して砂岩や頁岩になることが多い。
- 化学堆積物:水中での沈殿や化学的沈殿で生じるもの(例:石灰岩、蒸発岩)。
- 有機堆積物:生物由来の有機物が蓄積したもの(例:石炭、チャートの一部)。
堆積環境の例
- 河川(河床・氾濫原):礫~粘土幅広く堆積し、流速変化により層理や流向が記録される。
- 三角州:細粒化した堆積物が広く堆積する。
- 沿岸・浅海:砂泥互層や彼ら特有の構造(リップル、交差層理など)が見られる。
- 深海:非常に細かい堆積物や有機物がゆっくり堆積する。
- 風成(砂丘):風で運ばれた砂が斜面を形成する。
- 氷河堆積物:未選別なモレーンや氷碓堆積物など。
- 湖沼:通常は細粒の堆積物が静かに沈殿する。
堆積構造と化石の保存
- 層理(堆積層):時代毎の堆積を記録し、地層として観察できる。
- 交差層理・波状・リップルマーク:流れや波の方向、速度の情報を示す重要な手がかり。
- 化石の保存:生物遺骸が堆積物に埋もれることで化石として保存され、古環境や古生物学の研究に利用される。
堆積物が堆積岩に移行する過程(成岩作用)
- 圧密:上部からの荷重で間隙が減り、水分が押し出される。
- セメント化:地下水中の溶解物(炭酸カルシウム、ケイ素など)が沈殿して粒子間を結びつけることで岩石化する(例:砂岩、頁岩、石灰岩)。
- 再結晶・熱変成:温度や圧力の影響で鉱物が変化し、岩相が変わることがあるが、これは主に変成作用に近いプロセス。
人間社会との関わり・利用
- 堆積物は地下水を保持する多孔質層になり、井戸や水資源として重要です。
- 石油・天然ガスは堆積岩の孔隙に蓄えられることが多く、資源探査の対象になります。
- 建築材料(砂、砂利、石灰岩など)や、農地の土壌としての利用。
- 一方で、河川堆積や沿岸堆積の変化は洪水や土砂災害、河床高低の変動に影響を与えます。
学問的には、これらの過程や記録を研究する分野を堆積学といい、地球環境の変遷や資源探査、環境復元に重要な知見を与えます。
より一般的には、日常的な言い方でビールなどの液体の底に沈殿する粒子や沈殿物も「堆積物」と呼ばれます(例:ビールの澱など)。
百科事典を検索する