SASSerial Attached SCSI)は、ハードドライブやテープドライブなどのコンピューターの記憶装置とホスト(サーバーやストレージコントローラ)間でデータを送受信するためのシリアル技術です。従来の並列接続であるパラレルSCSIに代わる、ポイントツー・ポイントのシリアルプロトコル(プロトコル)であり、標準的なSCSIコマンドセットを使用します。SASは高信頼性・高可用性を重視した設計で、データセンターや企業向けのストレージ環境で広く使われています。

主な特徴と仕組み

  • ポイントツーポイント接続:各デバイスは専用のシリアルリンク(PHY)で接続され、競合の少ない安定した通信が可能です。
  • デュアルポート(冗長性):多くのSASドライブはデュアルポートを持ち、コントローラを二重化して経路冗長やフェイルオーバを実現できます。
  • エキスパンダ(拡張):SASエキスパンダを使うことで、多数のドライブを1つのコントローラに接続でき、スイッチのような構成が取れます。
  • レーン速度(世代による向上):SASは世代ごとに転送速度が上がっており、初期は3Gbit/s、その後6Gbit/s(SAS-2)、12Gbit/s(SAS-3)、さらに22.5Gbit/s(SAS-4)などへと進化しています。
  • コマンドセット:SCSIコマンドを用いるため、テープ装置やエンタープライズHDDなど既存のSCSIデバイス資産を活かせます。

SATAとの互換性(下位互換性)の仕組み

SASは物理層とプロトコル層の設計により、SATA(消費者向けのシリアルATA)デバイスとの互換性を持ちます。具体的には、SATAドライブはSASコントローラ/バックプレーンに接続して動作しますが、逆にSASドライブをSATAコントローラに接続することはできません。これは以下の理由によります:

  • プロトコルの違い:SASコントローラはSATAデバイスと通信するためのトンネリングや互換モードをサポートしますが、SATAコントローラはSASの拡張機能(デュアルポートやエキスパンダ接続など)を理解しません。
  • 物理コネクタと電気特性:SASドライブはSAS専用のコネクタ(たとえばSFF-8482など)や多ポート設計を持つことがあり、これをSATAバックプレーンに直接つなぐことは想定されていません。
  • 機能差:SASはエンタープライズ向けに冗長経路、高度なエラー回復、継続的な運用を前提にしているため、SATA接続ではそれらの機能が利用できません。

利点と用途

  • 高信頼性・高可用性:デュアルポートやマルチパス、エキスパンダによる冗長構成が可能で、ミッションクリティカルなシステムに適します。
  • 性能の柔軟性:複数世代の高速リンクやワイドポート(複数レーンの束)によって高スループットを確保できます。
  • 管理機能:エンタープライズ向けの監視やエラー報告機能が充実しています。
  • 用途:サーバーのブートディスク、RAIDアレイ、ストレージアレイ、テープライブラリやバックアップ装置など、データセンターや企業ストレージで広く使われます。

注意点

  • SASはSATAよりもコストが高く、一般的なデスクトップ用途では過剰になることが多いです。
  • SATAドライブをSASコントローラに混在させることは可能ですが、性能や冗長性の差を理解した上で設計する必要があります(SATAはシングルポートで冗長化できないなど)。
  • 実際の性能はドライブの種類(SSD/HDD)、コントローラ、ケーブル、エキスパンダなどシステム全体で決まります。

SASプロトコルは、国際情報技術標準化委員会(INCITS)のT10技術委員会によって開発・維持され、SCSI Trade Association(SCSITA)によって普及と採用が推進されています。設計・運用時には、使用するSAS世代・バックプレーン仕様・OSのマルチパス対応などを確認して最適な構成を選ぶことが重要です。