シンガー・ビルディングとは ニューヨーク旧世界一の超高層ビル 1908年竣工 1968年解体
シンガー・ビルディングは、アメリカ・ニューヨークの超高層ビルで、1908年に竣工し、1968年に取り壊されました。建物はシンガー社(ミシン製造で知られるSinger Manufacturing Company)の本社として建てられ、ロウワー・マンハッタンのブロードウェイとリバティ通りの角に立っていました。解体はU.S.スチール・ビルディング(現ワンリバティ・プラザ)を建設するためであり、企業によって取り壊されたビルとしては当時最も高いものになりました。
基本データ(要約)
- 竣工:1908年(1908)
- 解体:1968年(1968)
- 所在地:ロウワー・マンハッタン(ブロードウェイとリバティ通り付近)
- 階数:地上約47階(塔屋を含め50階相当と表記されることもある)
- 高さ:約187m(約612ft)と記録されるのが一般的(史料により異なる表記あり)
- 用途:企業本社、事務所、販売フロアなど
設計と建築的特徴
設計はエルネスト・フラッグ(Ernest Flagg)らにより進められ、外観はボザール様式(Beaux-Arts)の装飾を取り入れた意匠で知られました。建物は鉄骨構造を用い、重厚な低層部(基部)とそれを支える高い塔屋から成る構成で、塔屋の先端はランタン状の装飾を備えていました。外装には彫刻的な装飾やテラコッタが用いられ、当時の技術と意匠の両面で注目されました。
歴史的意義
シンガー・ビルディングは竣工直後の1908年から1909年にかけて世界で最も高い建物とされ、これ以前はフィラデルフィア市庁舎が世界一でした。だが1年後、メトロポリタン生命保険会社のタワー(メトロポリタン生命本社)はさらに高くなり、世界一の座を奪いました。
解体とその影響
1968年に行われたシンガー・ビルディングの解体は、ニューヨークの都市開発と企業による再開発の象徴的な事例となりました。その撤去は建築史家や保存活動家の間で大きな議論を呼び、歴史的建造物の保存に関する意識を高める一因となりました。解体後、敷地にはU.S.スチール・ビルディング(現在のワンリバティ・プラザ)が建設されました。
評価と遺産
シンガー・ビルディングは短い寿命ながらも、初期の超高層ビル技術と装飾性を示す代表例として評価されています。現存しない建築物であるため、写真・図面・模型等が当時の姿を伝える重要な資料になっています。また、その解体は後の保存運動や都市計画の考え方に影響を与え、ニューヨークの建築保存の議論の一里塚ともなりました。
(注)高さや階数の表記は史料によって異なる場合があります。本稿では一般的に参照される記述を採用しています。
フォトギャラリー
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